yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

山 短編3 スピンオフ

2013-10-01 18:48:49 | 短編
[山です~]




「智、好きだよ」


「俺もニノの事、だ~い好き」


「……」



2年生になり同じクラスなったその人の事を
ずっと前から知っていた。
今まで他人には興味がなかったはずなのに
その人だけは特別だった。


その人はとても綺麗な顔立ちをしていて人目を惹いた。
決して身体が大きいとか、声が大きいとか
目立つタイプではなかったけどなぜか存在感があって目立つ。
だから入学してすぐその存在を知った。


近づきたい。
話がしたい。
友達になりたい。


だけどいつも同級生に囲まれているその人に
学年の違う自分が入っていく隙間なんてとてもなくて
ただ指をくわえて見ているだけだった。
それが無性にもどかしかった。


でも、ある日から突然その姿が見えなくなった。
噂で病気で休学しているという事を知った。
何の病気かは知らないけどそのうち回復すれば
またその姿が見られるだろう。
そう楽観的に捉えていたら結局そのまま一度もその姿を
見せる事はなかった。


そして春になり2年生になった。
そこにその人がいた。
しかも同じクラス。
以前は指をくわえて眺めているだけの存在だったのに
自分がその位置に立てる。
そう思うと嬉しくてたまらなかった。


他のクラスメートなんて目に入らない。
その人に声をかけまくり何とか仲良くなる。
その人は見かけの美しさとは違ってかなりおっとりとした
そしてとても優しい人だった。
最初はその美しさに惹かれたけどその存在を知るたびに
その人自身に惹かれていく。


そしてその人にふれるたびに大好きになっていく。
その人は何をしても、されるがままで決して怒らない。
だから嬉しくなって人目も気にせず手を繋いだり抱きついたり。
好きで好きでたまらなかった。


「智、好きだよ」
いつも言ってるけどやっぱり伝えたくてそう言う。
「俺もニノの事、だ~い好き」
智は無邪気な可愛らしい顔で大好きだと答えてくれる。


「……」


智はきっと冗談で言っていると思っているだろうけど
結構本気で言っているんだけどね。
そう思いつつその綺麗な顔を眺めた。


自分の言っている好きと智の言っている好きは多分、違う。




1年の時からつるんでいた相葉ちゃんと翔ちゃんと
2年でも一緒のクラスになった。
そしてその中に智も加わった。
智は温和な性格だからかこの学校ではあまり前例のない
留年という特殊な状況にも関わらずクラスメートともうまくやっていた。


ただ、翔ちゃんと智が二人きりになると
微妙な空気になるのは気付いていた。
それが自分のせいだという事も分かっていた。


翔ちゃんは智とくっついていると途端に嫌そうな顔になる。
はっきりと「(くっつきすぎて)気持ち悪ィ」とも言われた事もある。
だけど全くと言っていいほど気にならない。


智の事が大好きだったし何よりも智自身が
くっつきたくなるような存在だったから。
これはどう説明したらいのか分からないけど
ただ大好きで、触れたくなる人、ただ単純にそれだけだった。


でもそれが翔ちゃんにはどうにも理解できないようで
二人くっついているととたんに不機嫌になる。
それが分かっている智は翔ちゃんに変に気を遣う。
そのせいか二人の間には微妙な空気が流れていた。




ある日、いつものように翔ちゃんの家で
4人で宿題を始めようとしたら呼び出しがかかる。
そんな状態の二人を置いていくのは不安だったけど
智は多分このまま帰るから大丈夫だろう、そう思った。


次の日から二人の雰囲気が微妙に違う事に気づく。
翔ちゃんが二人くっついていると不機嫌になるのは同じだけどどこか違う。
どこがどう違うと聞かれれば答えようがないのだけど
やっぱりどこかが違う。


そして決定的だったのは相葉ちゃんと二人呼び出しがかかった時。


「じゃ、帰ろっか」


その翔ちゃんの言葉に智はうん、と頷いた。
いつもだったら二人きりにならないように
お互い図書室によるだの何だの言って
決して二人きりにならないようにしていたのに。
不安を感じながらその姿を見送った。








あの時以来、二人きりになるのは始めてだった。
二人きりで並んで歩く道のり。
何だか無性に照れくさい。
何を話したらいいのかと妙に緊張する。


「……」

「……」

「……緊張してる?」


智が顔を覗き込んできたかと思ったら
そう言ってクスクス笑った。


「……」
ハイ、緊張しています、なんて言えなくて
黙ったままその姿を見つめる。


「俺は何か変に緊張してる。おかしいね?」
そう言って可愛らしい顔で笑った。


“完敗だ”


「俺も、緊張してる」
この人にはとてもかなわない、そう思いながら
何とかそう答えるだけで精一杯だった。
だけどめったにない二人きりの時間、
このままバイバイしてしまうのはもったいないとも思った。


“もっと一緒にいたい”


「俺んちで宿題して く?」
もしかして断られるかもしれない。
そう思いながらも勇気を振り絞ってそう言った。
その言葉に智は一瞬考える顔をしたが素直にうん、と頷く。


まだ一緒にいられるという嬉しい気持ちと、
そして何だか分からないけど襲ってくる変な緊張感と。


家に着き部屋に入る。
そして宿題を広げた。
智は時々シャープペンを口もとにやりながらうーんと考えている。
こないだみたいな変な沈黙や緊張はない。


考えている姿が何ともいえずかわいい。
そして下を向いている姿は鼻筋が通っていてとても綺麗だ。
じっとその姿を見つめていたらその気配に気づいたのか
智が何?って表情で顔を上にあげた。


目と目が合う。
そのまま顔を近づけていってちゅっと
その唇に触れるだけのキスをする。
唇が離れると智がまっすぐな目で見つめる。
そのまっすぐな視線に何だか気恥ずかしくなってしまって目をそらした。


あの時から2週間たっていた。
その間は今まで通りの関係で4人で仲良く遊んだりはしていたけど
二人きりになる事はなかった。
そしてお互いにその事については触れなかったし
まるで何事もなかったかのように過ごしていた。
だから今回が2度目のキス。


そのままその身体を優しく押し倒す。
智の瞳が不安そうに揺れる。


「……こわい?」

「こわくない よ」


智の瞳が不安げに揺れていたから怖いかと聞くと、
ふっと笑って怖くないと答える。


「……俺の事、好き」

「好き だ」


上から智の顔を無言のまま見つめていたら智が好きかと聞いてくる。
好きだと答えると智の頬が赤く染まった。
ゆっくり顔を近づけていくと瞼がゆっくりと閉じられる。
そのままそっと唇に唇を重ねる。


そしてゆっくり唇を離すとお互いに見つめあう。
「好きだ」
もう一度そう言って角度を変えてまた唇を近づけていって
ちゅっとキスをすると
智の腕がゆっくりと背中に回ってきた。







「ね、智となんかあったでしょ?」

「へ? 別に 何もねーよ」


この人は嘘をつくのがヘタクソだ。
しかも表情で丸わかりなんだよね。
悔しいから、さーとしって言って抱きつくと
翔ちゃんの顔が真っ赤になる。


「もう、離しなよ。智くんだって嫌がってんじゃん」

「そんな事ないですよね~」


そう言って抱きついたまま頬にチュッとすると
益々翔ちゃんの顔が真っ赤になる。
俺だって智の事がずっと好きだったんだから
これ位いいでしょ。


「ほら、誰が見てるかわかんないから」


そう言って今度は青い顔をしながら
引きはがそうとしてくる。
智はそんな翔ちゃんを笑いながらみている。


もう、この男は。
おっとりというか何というか。
智の事本気で好きだったけど、もういいや。
智が幸せそうに笑ってるから諦める事にした。
最初からお互い意識し過ぎてぎくしゃくしていたのも分かっていたしね。


「智の事泣かしたりしたら俺が今度こそ奪いますからね」


翔ちゃんに近づくとそう耳元でささやいた。

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして、きらりさん (haniwan)
2013-10-01 20:49:03
偶然たどり着いたきらりさんのブログが、大好きな山コンビでコッソリ何度もお邪魔していました。心の中が、甘酸っぱい感じで、忘れたくらい前の学生時代に想いを馳せる感じ…かな。ひっそり読み逃げしていましたが、大好きなキモチだけ伝えたくて、ありがとうございます。きらりさんのペースで続けてくださると嬉しいです。
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haniwanさんへ (きらり)
2013-10-01 21:52:30
haniwanさん、初めまして。コメントありがとうございます。

大好きだと言って下さってありがとうございます。
そう言っていただけると凄く嬉しいです。
しかも何度も遊びにも来て下さっていたんですね~。

キモチ凄く伝わりました。本当に嬉しかったです。
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胸がキューッ! (ひぽち)
2013-10-01 23:53:47
…となりました。ニノの「好きな人が幸せなら身を引く」気持ちが切なくて…でも最後の言葉がニノらしくて。改めてきらりさんはすごいなって思います!!ホントに好きです!大好きです!!次回も楽しみにしてます♪
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ひぽちさんへ (きらり)
2013-10-02 17:00:15
ひぽちさん、コメントありがとうございます。
いつもすごーく嬉しいです。

そうですね。今回は山に隠れてひそかに(ニノちゃんにとっては)切ない話でしたね。
ニノちゃんらしいとのお言葉、凄く嬉しいです。
結構私の中では重要な役割でキーになっている人物かもしれません(あまり報われませんが)。

いつも大好きって言って下さってありがとうございます♪いや、ほんといつもやる気でるんですよ♪
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はじめまして ()
2013-10-02 22:03:27
きらりさん はじめまして。
ときどきお邪魔させていただいてました。なんどもコメントさせてもらおうと思っては躊躇してしまい、今回はじめてコメントさせていただきました。
山2人の甘酸っぱい感じが背中をツンツンされてるみたいで(笑)妙に恥ずかしかったです。 
きらりさんの小説は やわらかい空気がながれていて大好きです。 次回作も楽しみに待っています。

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蓮さんへ (きらり)
2013-10-03 01:19:52
蓮さん、はじめまして。コメントありがとうございます。

コメント躊躇う気持ち凄くよく分かります。
そうですよね、特にここは承認制にしてしまっているので
余計躊躇いますよね。。勇気もいりますし。
それが分かる分、コメントのありがたさも凄く感じています。
今までもして下さろうとも思っててくれたとのこと。
どの話の時にどんな感想を? とちょっと(いや、凄く)気になります(笑)

大好きって言って下さってありがとうございます。
コメントも内容も凄く嬉しかったです。
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haniwanさんへ (きらり)
2013-10-03 01:54:42
haniwanさん、すみません。
今自分のコメントを読み直していたら最後の部分が
なぜか抜けている事に気付いて書いてます。

haniwanさん最後に優しいお言葉ありがとうございます。
私のペースでって言っていただけて嬉しかったです。
ひっそり読み逃げっていっていましたが(凄くよく分かります笑)
今回コメントいただけて凄く嬉しかったです。
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にの♡ (しーな)
2013-10-05 05:42:42
こんにちは!
スピンオフ、うれしかったです。ありがとうございます。

にのがきゅんとかわいそうで、甘酸っぱくせつなかったです。山が好きだと、にのはちょっとせつないことになっちゃうから、それはそれで実は悲しい私。
でもこのお話ではせつないけどさわやかでよかったです。ますますこちらがにのを好きになってしまう感じ♡

片想いなにのと付き合い始めのぎくしゃくなおーちゃん&しょうちゃん。高校生なかれらって、すごく好きかも!!です。かわいいんだけど、大人びて落ち着いている大ちゃんの感じとあたふたいっぱいいっぱいなしょうちゃん…いいですねぇ
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しーなさんへ (きらり)
2013-10-05 19:09:05
しーなさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

お言葉に甘えて(山にとっては続編を含んだ)にのちゃん主体のスピンオフにつなげてみました。
(本当はもっと相葉ちゃんとラーメン屋とかにも行ったりもしてたんですけどやっぱり収まりきらなくて断念しました。)

そうなんですよね。今回の話はちょっとにのちゃんにとっては切ない話となってしまいました。
山好きなのでホント申し訳ないって感じです。

私は高校生位の年代の二人がほんと好きなのですごく好きと言っていただけると本当に嬉しいです。
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