ほなさんの汗かき日記

かくれ肥満の解消に50歳を超えてはじめた健康徒歩ゴルフ。登場する個人名、会社名、内容はフィクションである。

再録「汗かき日記」第四部(おまけ2)

2010年12月07日 | 日記
   「ふぁぁ」カルテット

もともとゴルフを始めた理由が、体内脂肪とコレステ
ロール値を下げる健康ゴルフ。
それがいよいよはじまる。

台風一過の翌々日の早朝、息子に付き合ってもらって
朝6時スタート。
1番ホールは山の傾斜面を登って、右にドッグレッグ
している240mの長さのコース。抜ける青空の下、一
発目はいきなりのOB。高いネットを越えて、右隣の
練習場へ飛んでいった。体が回らない、いやいや腰だ
け廻って、体の“ねじれ”なんてものはまったくなく
、ほどけたままだ。息子は息子で、勢い込んで振り遅
れ、同じ右へOB。

でもひどいもんだ。起きたばかりの体で、準備運動もな
しに、トイレと車の運転以外のはじめての動きがティシ
ョットなんだから、なんともはやお粗末な話。こう書く
とOBになったのは、準備運動のなさだと誤解してくだ
さるかもしれないことを期待している自分が情けない。
まぁ所詮、こんな奴なんです。

息子ともども打ち直して、1番ホールの最後に「さっきの
(OB)はなかったことにしよう?」と提案したら、「
そういうのは良くない。」と正論を言われてしまった。
いったい誰がこの早朝料金のフィー代、ご一名様1360円也
(消費税を含む)を払うと思っているのか、父親の権威を
なけなしにする親不孝息子だと意気込もうと思ったが、そ
ういうことを言うと次から付き合ってくれそうにないので
、黙って「9」と書き込んだ。(ちなみにここはPAR4)
それにしても二桁にならずに済んでよかった、危ないとこ
ろだった。

1番から2番にかけ登る道沿いのネットが、台風の大風にま
ともにあたったのだろう支柱ごと倒れていた。電信柱にす
るコンクリートの柱が数本なぎ倒され、無残な姿をさらし
ている。ここは土建屋さんが親会社なので、さっそくブル
トーザーなどの重機が出て、修復に余念がない。風の当た
り方によっては、植えてある木などもひとたまりもないと
いうのがよくわかった。コースを保っていくために手入れ
をするのも、たいへんな努力がいるのだろう。カートを2番
ホールへ引っ張っていきながら、快く遊ばせてもらえるこ
とに感謝しなければなぁ、と息子と話した。

2番ホールへ行くと、前が混んでいた。
ゴルフでは左利きのことを「レフティ」と呼ぶのだそうだ。
ゴルフショップであなたはレフティとか言われて、何のこ
と言ってんの?と知らん顔してたら、私のことだった。レ
フティというぐらいだから、バームクーヘンとかの西洋の
食い物ぐらいにしか思ってなかったのだ。(わからない言
葉は、私の中では、まず西洋の食い物に分類する癖がある。)
でも自分が「レフティ」とか呼ばれると妙に嬉しくなって
、にこにこしてしまいますね。たぶん、アラビヤ語かなん
かで「お前はバカ者だ」と言われても、私はニコニコ顔に
なると思います。
さて、2番ホールで待っていたのが、レフティさんだったの
です。

肩掛け式のハーフバックをもった40代と思われるクロずく
めの男性は、ひとりで回っているらしく、カートを引かな
い「いでたち」がいかにも軽やかに感じられた。前の組が
ホールアウトする間、自己紹介のあと、しばらくゴルフ談
義に花を咲かせる。私らは初心者だから、聴く話、聞く話
が新鮮で、何を聞いても「なるほど」と相槌を打った。そ
ういう親子に好感を抱いてくれたのか、「レフティが二人
揃うなんてはじめてだ。」ということで、私たちも一緒に
回らせてもらうことになった。

私の番になって「ドライバーを打つ自信がないから」と言
うと、「こういうコースは練習のためにきているのだから
、ドンドン打て」と答えてくれた。ありがたく打たせても
らったら、やっぱり左のネットを越えて飛んでいった。
三人思わず、左の1番ホールに向かって
「ふぁぁぁー」
の大合唱。

そんなことをやっていると、早足でカートを引いてくる太
った男性が、「私も入れてもらえませんか、後のグループ
が大人数なので。」と人懐(ひとなつ)っこい表情で頼ん
できた。ショートコースのまだ1番が終わったばかりだとい
うのに、この男の額からは汗がしたたり落ち、しきりにタ
オルで拭いている。
もちろんリーダーのレフティ氏とわれわれ親子は喜んで迎
えた。久しぶりのゴルフだというこの男のティショットは
、打った瞬間から、ものの見事に右のネットの上を目指し
ている。
今度は4人揃って、右側9番ホールへ
「ふぁぁぁー」。

ゴルフの上達は、うまい人と回ることが近道だといわれる。
K師匠にも感じたのと同じように、この日、レフティ氏の
動きを見ていると、独特のリズムがあるように思えた。グ
リーンに乗ってからも、慎重にカップまでのラインを上か
らも下からも読み、ボールを置きなおす。同じような「し
ぐさ」を真似てやっていると、なんとなくリズム感が伝わ
ってくるような気がするから不思議だ。グリーンが読める
わけでもなく、単に上下左右の傾斜をみるのが精一杯なの
に、何か感じるものがあった。

社会人一年生の時、研修先の事務局長(いちばん偉い責任
者)が、酒の場に一度だけ呼んでくれたことがありました。
ナイトクラブのボックス席で、「どうやって先輩から仕事
を学ぶか」という場違いのノウハウを教えてくれたのが、
① 教えてもらう先輩の歩幅で歩く。
② 背中から先輩の息継ぎが分るようになる。
と、いうようなものでした。
学校出たての頭でっかちに、会社のルールを教えるには、
相手をその気にさせることが重要だと、事務局長は考えら
れたのでしょう。私を指導してくれている課長の歩幅に、
3日間でおなじようになりました。息継ぎは、背中から目
を凝らしてみていてもなかなかわかりません。1週間した
ころ、ふとした拍子に、背広の肩がかすかに動きました。

それがわかれば、それに合わせて自分も息をすることで、
課長の息継ぎができるようになりました。この課長には約
三ヶ月お世話になりました。息あわせができるようになる
と、仕事のリズムができてきました。課長は本当に良い人
で、私のような新人に、懇切丁寧に教えてくれました。自
宅で晩飯もごちそうになりましたし、本気叱ってくれたの
もこの課長でした。三ヵ月後、私の研修が終わって、元の
事業所に帰る「お別れ会」で、課長は男泣きに、ぼろぼろ
涙を流して別れを惜しんでくれました。私の記憶に残る、
恩人のひとりです。

人にはそれぞれリズムがあり、それに支えられて仕事をし
ています。だから結果の仕事だけをみるより、同じ空気を
吸って、同じ歩幅で歩き、同じ息遣いをして、同じリズム
を真似して動いていけば、その仕事が理解しやすいといえ
ます。

話が横道にそれましたが、ゴルフにもそういうリズムがあ
りそうです。かの“K師匠”や“レフティ氏”から、そう
いうリズムを勉強したいと思っても、ティショットは一番
最後に打ち、次に打つのはまた私ですから、とても忙しく
て、まだ余裕がありません。
え!なんですって?
「ティショットが一番最後、そして次に最初に打つものも
私」というのは何故かって?
そりゃ当たり前ですよ。前のホールで成績の良い順にティ
ショットをしますから、一番叩く私は最後になります。そ
して、グリーンから一番遠いところからショットをします
から、ミスショットをした私が、第二打目を最初に打つこ
とになるのです。

いや、忙しいったら、ありゃしない。
自分のリズムで動けるようになるのは、いつのことでしょ
うか?
「アワテナイ、慌てるんじゃないぞ、ほな君。」、一休さ
んのかっこうをした元上司が、どこからか諭してくれてい
る気がします。

この日、台風一過の秋の空は、どこまでも澄んでいました。
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