先生は,こんな本を読んでいます

読み聞かせを15年間毎日続けているちばちゃん(先生)が
読んできた本の紹介をします

7.永井洋一著『スポーツは「良い子」を育てるか』 生活人新書2004年

2006年02月04日 | Weblog
▼ この本の次の部分に同調します。

    スポーツ少年自身とその親の多くが、スポーツ推
    薦に象徴されるような、スポーツ能力によって人
    生の階段を上がっていく道を安易に選ぼうとしま
    す。また、そうしたルートに乗りたいがために、
    少年時代から強いチームに所属し、試合を勝ち進
    む生活を選択しようとしているケースもあります。
    しかし、そのようにしてスポーツしか知らない生  
    活を少年時代から続けることは、悲劇的なことだ
    と思います。私は、成長期には勉学は勉学として
    きちんと自分の能力に見合う環境で全力を尽くし
    スポーツはスポーツとして、別途、できる限り高
    レベルの環境でプレーすることを考えるべきだと
    思います。

▼ 著者は、スポーツジャーナリストで自ら少年団の指導にも関わ
 ってきた方です。
  実は、私も9年間、少年団活動に関わってきました。バレー少
 年団を4年間、野球少年団を5年間です。監督になったり、コー
 チになったりしましたが、新卒から9年間、3校の少年団活動に
 関わってきました。
  それぞれの少年団には、違った方針があります。保護者・子ど
 もたちの考え方も、その方針に反映されていました。
  最も大切なのは、次の点についてです。
    ●なんのためにスポーツをするのか。

▼ スポーツを行うメリットは大きいと思います。私の小学1年生
 の愚息は、スイミングスクールに通っていますが、「楽しい!」
 と言いながら通っています。
  私もその活動様子を見せていただきましたが、「さすがプロ!」
  子どもたちが上手くなっていく様子が目に見えてわかるのです。
  私も学校での水泳指導の参考にしました。

▼ また水泳の話題ですが、市内にかつて「学校の水泳大会」とい
 うものがありまして、60校ぐらいの学校から選手が出てきて記
 録を競いあいました。
  6年生が担当ですので、私が6年担任になった時に、もちろん
 担当になりました。途方に暮れましたが、退職した先生にお手伝
 いを願うことになりました。
  この方は、市内で唯一、水泳で男女の各リレーでアベック優勝
 をさせている方です。この方にメインとなっていただき、6年担
 任はサポートという形をとりました。

▼ 子どもたち、全員の泳ぎを見たあとに、この方は尋ねました。
  「どのぐらいのレベルを目指しているんだい。優勝かい?入賞
 かい?それとも、みんなで楽しく泳げればいいというレベルかい
 ?今のみんなの泳ぎなら、優勝をめざすなら1日5時間、夏休み
 中、1日も休まずに練習しなければならない。入賞なら・・・」
 と、状況を見極め、子どもたちに問いかけました。
  
▼ 子どもたちは、集まって相談を始めました。そして、「入賞を
 めざします。」と言いました。
  私は、「この子たちを入賞させるの?どうやって?」と思いま
 した。人数は最小限です。おぼれそうなフォームでクロールを泳
 いでいる子どももリレーに出なければなりません。
  正直、「リレーでは真ん中ぐらいの順位になれば、御の字」だ
 と思っていました。

▼ しかし、結果は・・・何と2位。驚きでした。ここまでやるとは。
  長くなってきたので、その方の指導をかいつまんでお話すると
    ●指導法がユニーク(オリンピックに出場する選手の手法
     を用いたり)
    ●1日のメニューが明確でわかりやすい(次に何をするの
     かがわかる)
    ●大会までのドラマを作っている(子どもの意欲が大会で
     ピークに達するように)
    ●子どもに自己決定させている(指導者が決めない)
    ●子どもへの愛情が見ている側(子どもにも)伝わってく
     る

▼ 5点目をいってしまえば、それまでですが、結局は「指導者の
 子どもへの愛情」が大切なのでしょう。
  著者が、相撲の元横綱隆の里から話をうかがったそうです。

    ●何のために相撲を取るのか

  元横綱は、こう答えたそうです。

    ●それは、愛だったね。

  自分が横綱になれたのは、育ててくれた両親をはじめ、いろい
 ろな人の支援があってのことだという思いを強く抱いたのだそう
 です。そして、その人たちに対する感謝の念と、失望させてはい
 けないという責任感を「愛」という言葉で表したのです。

▼ 愛情があれば、「勝利」だけにこだわる指導を行わないと思い
 ます。指導者の指示通りに動かせるのではなく、自己決定できる
 子どもを育てることができると思います。
  最後に、ぜひ子どもに聞かせたいエピソードとして、本書の2 
 つの話をのせます。

    1995年6月にあったエピソードです。秋田県で剣
    道の高校選手権があり、決勝戦で秋田高校と秋田
    商業高校が対戦しました。試合中、秋田商高の選
    手の竹刀が、対戦相手の秋田高・白根選手の防具
    にひっかかり、床に落ちてしまいました。ルー  
    ルでは、竹刀を落としても試合はストップされま
    せん。当然、白根選手は竹刀を失った相手に打ち
    込むことが許されます。難なく一本が取れる状況
    です。しかしこのとき、白根選手は打ち込むどこ
    ろか、自ら相手が落とした竹刀を拾い上げ、手渡
    してから試合を続けたのです。試合は結局、白根
    選手が負け、秋田高も優勝を逃してしまいました。
    この白根選手の行為は、後に第8回ユネスコ・日
    本フェアプレー賞を受賞しました。


    1964年に行われた東京五輪のときにエピソードで
    す。サッカーの日本代表はドイツからプロコーチ
    ディトマール・クラマー氏を招いて強化を進めま
    した。クラマー氏の指導によりチームは飛躍的に
    力をつけ、本番では強豪アルゼンチンを破るとい
    う殊勲を達成しました。喜びに沸く選手たちを集
    めて、クラマー氏はこう言ったそうです。「今日
    君たちはすばらしい結果を出した。今日も明日も
    君たちの周りには多くの人が祝福に集まるだろう。
    しかし、今、最も友人が必要なのは、敗れたアル
    ゼンチンの選手たちなのだ。そのことを忘れては
    けない。」

  スポーツは「心を育てる」ものであってほしいもので
 す。
私のHP「すぐできる読み聞かせ・ゲーム・心の話」もご覧に
 なって下さい。