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カルロス・ペーニャは“未完の大器”と決別した

2008年09月21日 | Baseball/MLB

(ペーニャ、岩村らの活躍で“The Winning Team”へと躍進したタンパベイ・レイズ) 

 

 タンパベイ・レイズが球団創立11年目にして初のプレーオフ進出を果たした。

 

 ここ数年のレイズは、前年勝率下位球団優先指名のドラフトや、FA選手流出選手へのドラフト順位補償制度といったメジャーリーグのシステムを十二分に活用し、B.J.アップトンエバン・ロンゴリアなど、次世代のメジャーを担うプロスペクトを多数獲得し、トレードでもスコット・カズミアーディオナー・ナバーロエドウィン・ジャクソンら他球団の“金の卵”を次々と獲得してきた。

 その一方、若手が投打の主力を占めることでチーム全体が経験不足に陥ることを防ぐ意味で、中堅・ベテランの補強も「身の丈補強」の範囲で進めてきた。ポスティングで岩村明憲を獲得したことは大成功だったし、一度は引退した往年の大クローザー、トロイ・パーシバル、ブルージェイズで新人王を獲得したものの、その後はさっぱりだったエリック・ヒンスキーと契約したのも、フロントにチームづくりのきちんとした青写真があり、その一環だったといえるだろう。

 

 そのなかでも、最大のヒットだったのが、いまや不動の四番打者となったカルロス・ペーニャを、昨年のキャンプでマイナーリーグ契約で獲得したことだ。そう、昨日の試合で、メジャー史上はじめて、ビデオ判定によって二塁打がホームランに訂正されたあの選手だ。

 

 一昨年のちょうどいまごろ、スカパー!MLBライブで担当したレッドソックス対ブルージェイズ戦で、打席に立つペーニャの姿を見たときには、「とうとう彼も“未完の大器”のままで終わるのか」と思ったし、実際コメントで似たようなことを口にしたはずだ。

 一発長打の魅力はあるが、荒っぽさがいつまでたっても抜けないため、レンジャーズ、アスレチックス、タイガースと行く先々で有望株と期待されながらもレギュラーをつかみ切れなかったペーニャは、2006年に就任したジム・リーランド監督に見放される形で、オープン戦の最中にタイガースを解雇されてしまう。

 そのシーズンの大半をヤンキースの3Aで過ごし、ここも8月に解雇されたあと、ようやく9月になってレッドソックスに拾われたが再契約はならず、翌2007年、デビルレイズとマイナー契約を結ぶ。一度は開幕マイナー降格を通告されたものの、同じ一塁手の故障で“補欠入学”を果たすと、以後は148試合に出場し、打率.282、46本塁打、121打点と、いずれもメジャー昇格以来最高の数字をマークして、シルバースラッガー賞にも選ばれた。

 

 ようやくタンパベイで花開いたペーニャを見て、バッティングよりも惹かれたのはその一塁守備だった。ゴールドグラブ受賞こそならなかったが、左右の打球に敏捷に反応する動き、捕球技術はいずれも超一級品で、この守備の安定感があれば、ジョー・マドン監督は多少バッティングが不調でもスタメンから外すことはないと確信したし、実際、去年も今シーズンもその通りとなった。

 

  今季は序盤、2割そこそこの低打率にあえぎ、故障者リスト入りもしたが、ペーニャのレイズにおける存在感は昨年以上に増した。

  相変わらず大振りで三振も多いが、絶好球に対しては抜群の反応を見せ、特大のホームランを放っている。その一方で、相手の野手が右寄りにシフトしていると、その逆をついて、左方向への打球を放ったり、ときにはセーフティーバントも見せるなど、大砲ながらチームバッティングに徹している。

 

 アップトン、ロンゴリアなど才能に満ち溢れているが、その若さゆえのミスも少なくない若手に対しても、ダッグアウトでケアに努めている姿をたびたび目にした。それはヤンキースが強かったころのバーニー・ウィリアムズやデレク・ジーターにもオーバーラップするものだった。

 

 そんな打席やダッグアウト、クラブハウスで果たした役割を考えれば、メディアの候補者リストにはあまり名前が挙がっていないが、私は今季のア・リーグMVPにペーニャをいちばんに推したい。

 

 ポストシーズン進出を決めた今だからいうわけではないが、このペーニャや岩村、そしてマイク・シュミット(元フィリーズ)をも上回る史上最高の三塁手になる予感を秘めたロンゴリアの活躍を見て、私はレイズを心ひそかに応援していた。また、こういうチームがプレーオフに出場しなければ、メジャーリーグの将来における繁栄はないとさえ思っていた。

 

 バド・セリグ・コミッショナー率いるMLB首脳部の「戦力均衡化策」は確実に実を結びつつあり、来シーズンはカンザスシティー・ロイヤルズやボルティモア・オリオールズが旋風を巻き起こす期待を秘めている。

 だが、長年低迷していたチームを立て直す原動力となるのは、やはりオーナーやGMなど各球団の首脳が、きちんとしたチームづくりの青写真や長期展望を持っているか否かにかかっている。レイズには間違いなくそれがあり、だからこそペーニャはレイズのユニフォームを着て、“未完の大器”と永遠に決別することができたのだ。

 現実となったポストシーズンで、ペーニャ、そしてレイズナインが、さらにどんな“サプライズ”を見せてくれるか。エキサイティングな10月はあと10日ほどで幕を開ける。

 

 

The Tampa Bay Rays (Team Spirit)

Norwood House Press

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5 コメント

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Raysおめでとう (ADELANTE)
2008-09-22 02:06:37
Raysのプレーオフ進出はうれしいですね。

スペルは違いますがスペイン語で「レイ(Rey)」は王様ですので、是非とも王様になって欲しいものです。ただし、複数形はReyes(スペイン語での発音はレジェス)つまりニューヨークの遊撃手の名前でもあります。
2004年6月27日 (BRYAN(o^o^o))
2008-09-22 23:50:27
僕はデトロイトにいました。そこでペーニャのサヨナラホームランを生で目撃。あれから4年なんですね。

体、でかくなったなぁ
Rays躍進の理由 (西尾)
2008-09-22 23:52:00
去年まで取りついてた悪魔(Devil)が取れたからではないでしょうか。
球団も (Ryo Ueda)
2008-10-05 00:55:52
西尾さんへ

>去年まで取りついてた悪魔(Devil)が取れたから

これは球団も懸命にアピールしていましたね。ESPNのスポーツセンターでキャスターが間違って「デビルレイズ」といったところ、フロントからかなりの「強い要望」が寄せられたようですから。

日本の某東北球団も、チーム名から「楽天」と「ゴールデン」をとったら……ないだろうな(笑)。
Unknown (長崎くんに)
2012-07-20 09:25:59
こんにちは。
確かに彼はすごいんですが、あまりにもバットに当たる確率が悪いので、ファンは何とも歯がゆい思いしてることでしょう。
でも、当たった時の迫力はさすがメジャーの一級品です。
個人的なことですが、宇梶剛士氏に似てるって感じます

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