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すべての虎党と野球ファンに呼びかける「星野とムラカミ、どちらがタイガースに必要なのか」

2006年05月24日 | Baseball/MLB

(なぜ税金逃れの「拝金主義者」のために、星野仙一が阪神球団SDをやめなければならないのか?)

いまさらこんなことを問いかけるのもどうかと思うが、しかし阪神電鉄の株式買収問題をめぐって、下記のような報道が伝わってくれば、当Blogで何も言わずにいるわけにはいかないだろう。

阪神星野SDが電鉄株問題で辞意示唆

 村上世彰氏(46)率いる投資ファンド(村上ファンド)による阪神電鉄株大量保有問題で24日、阪神球団の星野仙一SD(シニア・ディレクター=59)は村上氏が電鉄の経営権を握った場合に、同職を辞任する意向を示した。兵庫県内で記者団に対し「阪神のことは好きだが村上に経営権を握られ、ああでもない、こうでもないと言われるのであれば辞めざるを得ない」などと語った。

[2006年5月24日 朝日新聞]

あまりにも個性的過ぎるゆえに、星野仙一という人の生き方や言動については、常に賛否両論が付きまとう。しかし、一昨年のいわゆる「球界再編騒動」にあたって、球団フロントに属する立場でありながら、ファンや選手の立場に立って論陣を張ったこの人の功績はやはり大きかった。阪神タイガースでの功績を考えても、監督就任から短期間で、現場とフロント、親会社にまではびこっていた「負け犬(負け虎?)」根性を一掃し、チームを優勝コンテンダーにのし上げ、日本プロ野球ではトップ、そしてメジャーリーグのヤンキースなど超人気球団にも匹敵する観客動員能力をタイガースが誇るようになったのも、やはりこの人の功績が大きい。まあ、読売ジャイアンツが一時監督招聘に動いたのも(とは言っても、とてもあの会社と親玉の体質では阪神で成し遂げたような業績を再現するのは難しかっただろうが=笑)判るような気がする。

一方の村上世彰なる人物、そもそも野球界どころか、日本の社会にいったいどんな貢献をしていると言うのだ? やっているのは要するに土地ならぬ「株転がし」。阪神の株式買収も「資産価値を上げて株主に還元するため」などと称しているが、この20年ほど、バブル経済に浮かれて、鉄道会社本来の役割である公益企業としての役割を忘れて本業以外の事業に多額の投資をして大やけどをした阪急や近鉄の例を見ればわかるように、村上氏の言に乗って阪神電鉄が土地ディベロッパー業などに本腰を入れれば、健全経営を続けている電鉄本体、百貨店、そしてタイガース球団にも最後には大いなる悪影響が及ぶことは目に見えている。結局、梅田の一等地などを開発して巨大ビルなどを建設しても、とてもそれを短期間で利益に転換させるだけの体力が、現在の関西マーケットにはないのである。

しかも村上氏は「株転がし」で多大な収入を得ながら、何とシンガポールに経営拠点どころか居住地まで移そうとしている。これは間違いなく「税金逃れ」であると断じてかまわないだろう。1988年に消費税が導入されて以来、その課税総額を上回る減税が大企業・大資本を中心とした法人税に対して行なわれてきた。しかもその間に政官界と財界が一体となった経済運営の失敗により、日本経済は「第二の敗戦」と言われるほどのダメージを受け、そのツケは「大型増税」という形でまた庶民に回されようとしている。村上氏は間違いなく、法人減税の恩恵を受けてきて、また今後も受けるであろう人間の一人である。それが「税金逃れ」のためにシンガポールに事業と生活の拠点を移そうとしているのだ。

すべてのタイガースと野球のファンに問いたい。こんな男のために、なぜ星野仙一が阪神タイガースのシニアディレクターを辞めなければならないのか?

おそらく、90%以上の阪神タイガースファンは、村上ファンドによる阪神電鉄の買収と、阪神タイガースへの経営関与に絶対反対のはずである。ならば、やるべきことはひとつだ。村上ファンドへ「買収反対」の一大デモをかけ、自分たちが村上なるインチキ・税金逃れ野郎よりも、星野仙一を圧倒的に必要としていることを大いに意思表示すべきではないのか?

Jリーガーからメロンパンの移動販売に転じて成功した山田隆裕氏(元ヴェルディ他)は、先日の東京新聞のインタビューで、「『金で全てが解決する』という考え方は、言ってみれば渋滞の高速道路で路側帯を走行するようなもの」と語っていた。私は同じ成功者でも、村上やホリエモンのような「拝金主義」にまみれた人間より、こうした山田氏のようなまともな感覚を持った人間がより成功する社会であってほしいと思っている。山田氏のインタビューについては、また折を見て紹介したいと思う。

とにかく、野球ファンにとって必要なのは村上などではなく、星野仙一なのである!



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6 コメント

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比較にならないでしょう (節丸裕一)
2006-05-26 22:10:17
阪神のためにも日本球界のためにも、どうやって考えても星野さんですよ。

僕は村上ファンドやホリエモン(同類は他にもいるでしょうが…)のやり方には好感が持てません。

企業理念や社会貢献より金が第一、という考え方。

法律を犯さなければ何をやってもいい、という考え方。

そもそもルールというものは「破らなければいい」と考えた時点で意味をほとんど失うと思います。

その精神を守ろうとしないと意味が無いでしょう。

去年、阪神が日本シリーズを戦う前に株の話題で紙面をさらった村上氏に、阪神への愛情は全く感じられません。

(パ・リーグPOの前に、TBSの株の話題で注目を集めた楽天も然り)

そういうやり方を続ける奴らにはまさに『天罰』が下るはず。

と信じたいです。
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金がなければ球団もないです。 (ベイパーアクション)
2006-06-01 14:25:22
私は逆になんで仙ちゃんが親会社と球団としての阪神を一緒くたにして考えるのかの方が不思議です。むしろ見損ないましたね。

出資する人間が気に入らないという子供じみたアレルギーが理由ならどうぞやめてしまえばいいです。

餅は餅屋。野球の事にまで村上さんが口だしてきたらそれはあかんと思いますが、同じく星野さんは野球人であって経営者じゃないでしょ?親会社の事にまで口出すべきじゃないですよ。

金が第一?そりゃ当たり前ですよ。金がなければ近鉄みたいに潰れるんですから。ライブドア問題から金は全てじゃないとマスコミなども世論誘導するケースが多いですが、企業において金を軽視しすぎでしょ。



仮にね。

村上さんが経営権をとりました、と。

で、その時には私は村上さんが気に入らないからやめる、と。

ファンの中でもタイガースは村上のもんやないからやめる、とか言い出すのもおると。

じゃあね。その後のタイガースはどうするんだと。

村上さんがタイガースの事にまで口出してきたときに抑止力になれるべき人が、そんな安易な理由で辞める?ふざけるんじゃないと言いたい。

結局、そんなんで見捨てられるのならその程度のものなんですよ。むしろそういう時にこそ物が言える人が必要でしょう。
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追記 (ベイパーアクション)
2006-06-01 14:32:36
追記

あと私はそういう彼らより、野球協約と言う自分都合に変えて閉鎖的にしてきた元凶である今の野球界を牛耳ってきた連中の方が遥かに薄汚いとさえ思っている。ドラフトの問題など本当に醜い。なんであんなに歪んでしまったのか。

私は、孫氏のようななあなあと今の権力者にとりいって尻尾振るような人はいりません。ほりえもんや楽天の人(ミキタニさんだっけ?)そういう若い人らに野球界を一度ぶち壊して欲しいとさえ思ってます。
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お気持ちは分かりますが (Ryo Ueda)
2006-06-01 14:43:35
>親会社と球団としての阪神を一緒くたにして考えるのかの方が不思議です。



これは、広島を除く11球団が親会社の宣伝媒体としての役割を担っている日本のプロ野球界においては、「一緒くたにして考えざるを得ない」のではないでしょうか。阪神とタイガース、読売と巨人軍、中日新聞とドラゴンズなど、現実は「運命共同体」です。阪神本社によからぬ人物が乗り込めば、タイガースだけがその影響を受けないということはありえませんし、むしろ阪神グループにおけるタイガースの存在価値の大きさを考えれば、「一緒くたにして考えない」ことはありえないと思います。



でも、最後に仰っていることはごもっともだと思いますね。確かに星野さんは球団にあって「抑止力」の役割を果たす使命はあると思います。



ただ、税金逃れでシンガポールに経営拠点ばかりか生活の場まで移した村上氏が、鉄道会社やプロ野球の果たす「公共的役割」を最重要視して電鉄や球団の経営に当たるとはとても思えません。もし自分の利益になると判断すれば甲子園球場も売り払いかねませんし、電鉄の経営だって安全よりも利益最優先の企業体質となって、JR福知山線のような大惨事を招きかねないと私は考えています。村上氏のような「濡れ手で粟」の金儲けしか考えていない人物は、JR事故の教訓から学ぶという発想自体が希薄なのです。



もうひとつ、申し上げておきたいのは、なぜ近鉄や阪急は球団を維持する「金」を失ったかということを忘れてはならないということです。本業を傾かせるような「スペイン村」などのリゾート開発その他の「虚業」に巨費を投じ、その結果、それこそ電車が走れなくなるような経営危機まで招いて(関西の方に言わせると、本来、近鉄や阪急の株を持っていて「大損こく」ということは考えられなかったことだそうですが)、企業規模から言えばそれほど大きな負担にならなかったプロ野球経営から身を引かざるを得なかったわけです。



私は阪神電鉄とタイガースに同じ轍を踏ませたくありませんが、村上という人物が実験を握れば、その危険性は大いに高まると考えております。星野さんは直接会談して、よりそういう危惧を抱いたのだと考えています。まあ、いまは「最悪の事態」が回避されることを願うほかありません。
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星野さん良く書きすぎですね。 (amigo)
2006-06-05 17:07:23
村上さんも逮捕されてしまい、あまり実害がないとはおもいますが、村上さんの言っていることには一理ありますよね。

星野さんのことがとても良く書かれていますが、この人は言っていることとやっていることが違いすぎるような気がします。お金については奇麗事を言っていますが、実は違いますね。以前週刊誌にも書かれていますが・・・
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「実害」は大いにありました (Ryo Ueda)
2006-06-05 19:41:35
>村上さんも逮捕されてしまい、あまり実害がないとはおもいますが



私は村上ファンドによるタイガースへの「実害」がなかったとは思っていません。結果的に阪神本社が阪急に統合されることになりそうなのですが、グループ全体が健全経営を続けている阪神が、依然としてバブル期の有利子負債を抱えている阪急の傘下に加わることは、球団経営の面でも大いに不安定要素を抱えることになります。また、阪急がブレーブスをオリックスに売ったという「前歴」も、野球界全体のメリットを考えれば、あまりいい要素とは言えませんね。要するに「やらんでもいいこと」を阪神電鉄と球団がやらされてしまったということだけでも、昨年来の村上ファンドによる一連の騒動は大いに「実害」があったと考えています。



それから、大変申し訳ありませんが、ここ数日、メジャーリーグで、故障者の続出など、当Blogで取り上げたり、皆さまにコメントやTBをお寄せいただきたい状況がかなり出てきており、そちらに労力を割きたいので、この件に関してはとりあえずamigoさんを含め、コメントは一時打ち止めにしていただけないでしょうか。今後、このエントリーのコメント追加はgooIDをお持ちの方以外はしばらく停止いたしますので、ご了承下さい。
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