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あれから13年……野茂英雄とF・トーマスの黄昏時

2008年04月21日 | Baseball/MLB

(球団の台所事情で退団に追い込まれた?フランク・トーマス)

 

 ロイヤルズが野茂英雄に戦力外を通告し、同じ日、ブルージェイズもフランク・トーマスの解雇を発表した。

 

  ご記憶の方も多いと思うが、この両者は1995年、レンジャーズの本拠地アーリントンで開催さえたオールスターゲームで、野茂(当時ドジャース)がナ・リーグの先発投手、トーマス(当時ホワイトソックス)がア・リーグの四番・一塁手として対戦している。当時、打者として全盛期にあったトーマスとの対戦は大いに注目されたが、2回裏に顔を合わせたトーマスに対し、野茂はストレート勝負を挑み、キャッチャーへのファウルフライに打ち取っている。

 

 この日、2イニングスを投げた野茂が対戦したのは、
①CF ケニー・ロフトン(インディアンス)
②2B カルロス・バイエガ(インディアンス)
③DH エドガー・マルティネス(マリナーズ)
④1B フランク・トーマス(ホワイトソックス)
⑤LF アルバート・ベル(インディアンス)
⑥SS カル・リプケンJr.(オリオールズ)

 

 という顔ぶれ。野茂はロフトン、エドガー、ベルから三振を奪い、バイエガにはヒットを許したものの、キャッチャーのマイク・ピアッツァが盗塁を阻止したため、6人で片づけている。

 

 当日の両リーグ登録メンバーを見ても、今季メジャーでプレーしているのは、以下の7人だけだ。


・グレッグ・マダックス(ブレーブス。現パドレス)
・ケン・グリフィーJr.(マリナーズ。現レッズ)
・イヴァン・ロドリゲス(レンジャーズ。現タイガース)
・ジム・エドモンズ(エンゼルス。現パドレス)
・マニー・ラミレス(インディアンス。現レッドソックス)
・ランディー・ジョンソン(マリナーズ。現ダイヤモンドバックス)
・ケニー・ロジャーズ(レンジャーズ。現タイガース)


 リプケンとトニー・グウィン(パドレス)、ウェイド・ボッグス(ヤンキース)、カービー・パケット(ツインズ)はその後殿堂入りを果たしているが、パケットは一昨年、若くして不帰の客となっている。デレク・ジーターやアレックス・ロドリゲスがレギュラーの座をつかんでスターダムにのし上がるのは翌年のことである。

 

 トーマスの解雇は開幕からのスランプよりも、オプション契約とのからみで、若手への移行をフロントが画策したのが真相のようだ(この数字で解雇になるならば、レッズのアダム・ダンやレッドソックスのデイヴィッド・オルティーズもクビになっておかしくない)。実際、先日のレッドソックス戦では大当たりだったし、打率こそ1割台だが、ここまで3本塁打11打点をマークしている。メジャーリーグ、そして最近は日本のプロ野球でも同様の傾向が見られるが、高額のサラリーはプレーヤーにとって「両刃の剣」でもある。

 

 野茂が今後再びメジャーのマウンドに戻るのは、原状では厳しいものがある。しかし、今回の退団がイコール彼の現役引退にはなってほしくない。元読売ジャイアンツの新浦壽夫投手が最近インタビューで語っていたが、「引退はいつでもできる」のである。新浦さんはその言葉通り、読売から韓国・三星ライオンズ、横浜大洋ホエールズ、福岡ダイエーホークス、ヤクルト・スワローズと41歳まで投げ続け、のちに明らかになったが、その間には糖尿病との壮絶な戦いがあった。


 ご存じの通り、野茂は現在、社会人チーム「NOMOベースボールクラブ」を運営している。かつてのプロ・アマ断絶時代と違い、現在は所定の手続きさえ踏めば、社会人球界への復帰も、そのあとのプロ再復帰も可能である。私の願いは捲土重来の舞台にこのNOMOクラブを選び、低迷している社会人野球を盛り上げてほしいということなのである。もちろん、その先にメジャー復帰が待っていればもう言うことはないのだが。

 

 

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5 コメント

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1995年ですよ (中河甲子園)
2008-04-22 07:57:46
上田さん。年度は間違えないようにしましょうね。
報知のヒルマニアに出ていますよ。
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追伸 (中河後楽園)
2008-04-22 08:01:37
それにしても、野茂とトーマスをひっかけるのは
私たちのような熟年ライターだけなんでしょうか。
今日のスポーツ紙を見て感じました。
日刊などはトーマス解雇が0行。いいかげんに
しろ、という感じです。
それではこれからドジャース・レッズ戦がスタートします。
返信する
大変失礼しました。それにしても…… (Ryo Ueda)
2008-04-22 09:51:42
中河後楽園様

 ご指摘ありがとうございました。さっそく訂正いたしました。
 
 それにしても……
>日刊などはトーマス解雇が0行。
 っていうのはショックですね。このオールスターでは当時全盛期にあったトーマス、ベルと野茂のマッチアップが注目され、二人を見事に打ち取ったことで野茂の評価がさらに上がったんですが。日刊も当時、そのことは記事にしているはずなんですけどね。
 まあ、タンパのキャンプでも、手を伸ばせば届くような位置にジーターやAロッドがいるのに、外野で練習中の松井や井川にばかりレンズを向けていた某国メディアの実態を目の当たりにしてますので、さもありなんという感じもしますが。ただ、サッカー報道ではベッカムやロナウジーニョ、カカといった海外のスター(さらに遡ればペレ、マラドーナ、R.バッジォなど)をクローズアップして、日本のファンに紹介しているわけですから、野球メディアでももっと日本人選手以外のスタープレーヤーにスポットを当てれば、MLBへの読者の興味はさらに広がると思うんですけどね。
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Unknown (SPORTS運慶)
2008-04-28 11:21:06
はじめまして、SPORTS運慶のK ROOMと申します。
TBありがとうございました。
上田さんのブログからのTBで大変感激しています。
フランク・トーマスの件は、
当方も先週火曜日、
日本在住のカナダ人(トロントファン)との会話で
大きな話題になりましたが、周辺は野茂一色です。
もちろん俺のブログも「野茂一色/トーマス0行」(笑)
でも、上田さんのようなライターがいるし、
WEBというメディアも浸透してきたし、
これから益々スポーツ・ジャーナリズムは楽しくなる!
と期待しています。今後ともよろしくお願いいたします。
返信する
ありがとうございます (Ryo Ueda)
2008-04-28 13:40:14
SPORTS運慶 K ROOMさま

コメントありがとうございます。
>俺のブログも「野茂一色/トーマス0行」(笑)

いやいや、別に大丈夫ですよ(笑)。中河後楽園さんと私が問題にしたのは「メディア」の姿勢ですから。つまり、記録性のある媒体である以上、「アーカイヴス」の役割も果たしてもらいたいと主張しているわけで、ノスタルジアだけでモノを言っているわけではなりません。

個人的な記憶はもちろんそれぞれ大切にしてほしいですし、私もひとりの観客としてそれは当然持っています。ただ、不特定多数を相手に商売をしているメディアは、「最大公約数」を意識して仕事をしてほしいんですね。

これからもご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。
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