のたりずむ♪ぷれ ~門耳(カドミミ)~

門耳=聞。小耳に挟んだ歌舞伎関連情報や見たお芝居の感想メモです。

2009年3月:国立劇場 3月花形歌舞伎公演

2009-03-23 00:30:17 | 書いたぞ: 感想書きました~
通し狂言 新皿屋舗月雨暈 四幕六場
-お蔦殺しと魚屋宗五郎-


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公演日程 2009/3/5(木)~3/27(金)
:河竹黙阿弥
監修:尾上菊五郎
劇場:国立劇場
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◆観劇概要
観劇日:2009/03/21(土)
観劇位置:3階最後列


◆演目・構成・タイムテーブル
四幕六場
序幕  磯部邸弁天堂の場
     同   お蔦部屋の場
二幕目 磯部邸井戸館詮議の場
三幕目 片門前魚屋宗五郎内の場
四幕目 磯部邸玄関先の場
      同 庭先の場

序幕・二幕目:65分
 幕間   30分
三・四幕目:80分


◆配役
愛妾お蔦/宗五郎女房おはま  孝太郎さん
        魚屋宗五郎  松緑さん
   浦戸紋三郎/小奴三吉  亀寿さん
       召使:おなぎ  梅枝さん
        鳶:吉五郎  萬太郎さん
         岩上典蔵  亀蔵さん
       磯部主計之介  友右衛門さん
     家老浦戸十左衛門  彦三郎さん


◆演目について
明治14年:68歳で引退宣言した黙阿弥先生が、菊五郎丈のたっての頼みで
もう一度筆をとったのがこの作品。


◆のたりの眼
【余談】
・チラシ・ポスター
黒地に、お芝居のセリフが背景になっています。
そのセリフってのが酔った宗五郎が磯部屋敷でご家老様に訴えるところの最初の方の
一部なんですが、これがまたいいところをとってます。
ここを言うときの宗五郎の気持ちを考えると、私、泣けてきそうになります。

あ、そうか、これ、兄弟ツーショットなんですね。考えてみれば。

・猫
差し金の三毛猫です。コマちゃん。
この子が典蔵にまとわりつかなきゃ、茶碗は割れなかったし、
お蔦ちゃんが夜の庭に探しにくることもなかったわけで。
考えて見れば、罪なヤツです。

・ビバ国立
3階の1番後ろ、まさに天井桟敷?の席だったんですが、ここでもよく見えるんですよね
花道が。七三もばっちり。これはかなりうれしい♪
あたらしい歌舞伎座もこのくらいになってくれるとうれしいんですが、
まぁ、これやるには、奥行きが大分必要になりそうだから、あの土地では
ムリなんだろうなぁ。

・客の入り
土曜の昼なんですが・・・うーん、空席が大分ありますねぇ。
まぁスペースミニマムな3階席で観る身としては、隣の席も荷物置き場に
つかえたりして、ゆったりとできてありがたいといえばありがたいんですが、

うーん、がんばってるんだけどなぁ、役者さん。
それに「お蔦殺し」の場面が上演されるってだけでも、歌舞伎好きな人には
かなりポイント高いと思うんですが。うーむ。

・イヤホンガイド
お初が2つ。
ひとつは貸し出し時のフォーク並び
混雑緩和にはいいかも。ただ、歌舞伎座でやるとものすごい長蛇の列にも
なりかねないですけど(^_^;)

もうひとつは前半の解説者。今回は初めてなのかな。白鳥さんという女性でしたが、
うーん、正直、なんか違和感が。特に最初の方。

なんだろうな~と考えてみましたが、うーん、聞いてる人に語りかけてくる感じが
ないのかな。と
なんとなく、無機的というか。

芝居をみながら、解説員さんが これはこうでああで、と話しかけてくれるのを聞く
のではなくて、
決められたところで、あらかじめ用意した原稿を間違えないように読んでるのを
聞かされてる感じ、かな。

解説の後半の方は、なんとなく解説員さんの話も少しは聞けた感じがしますが、
お金払って解説聞く身としては、ちょっと残念でした。

三・四幕目、いつもの聞きなれた解説員さんになってからは、安心して聞いてられましたが、
いつもの解説員さんたちが、どれだけ、話し慣れてるか、話がうまいか。
ということを感じた思いです。

白鳥さんも、がんばれ~

【序幕・二幕目】
今回の公演の個人的には最大の見所。
いつもはおなぎちゃんの話の中で語られることから想像するしかなかった
「宗五郎」の前の場面。
楽しみにしてたんですが・・・おかしい、かなり記憶が飛んでる・・・<(-_-;)

・お蔦ちゃん
今まで、何度も「宗五郎」の舞台は観ましたが、お蔦ちゃんを観るのは初めて。
魚屋の一般市民が突然、ご愛妾様になって、そこにあぐらかけるタイプならいいですが、
お蔦ちゃんは、まわりと自分との差を気にして、気をつかいしつくしてしまいそうなタイプです。

家族をどん底生活から脱出させることが出来て、お殿様にもかわいがられて、
幸せではあったんですが、結果としては、かわいそうですねぇ、本人は。
孝太郎さんのお蔦ちゃんは、私が「宗五郎」の話から想像するイメージにすんなり当てはまったようで、
違和感みたいなものはまったく感じませんでした。

・おなぎさん
違和感感じたのは、むしろこちら。
宗五郎のうちにやってくるときの格好から、てっきり、磯部家のお女中さんだと
思っていたのですが、じつはお蔦ちゃんを主人とする、お蔦ちゃんの侍女だったんですね。、
「鏡山」で言えばお初ちゃんのようなポジションかと。

となると、お蔦ちゃんが不義モノとして成敗された時点で、おなぎさんもお屋敷を追い出されるのでは
ないかと思うのですが、そのへんはどうなんだろう。

ちなみにおなぎさん役の梅枝さんは、あいかわらず安定感のある演技で、
ほんとに先が楽しみ♪
そういえば、7月の鑑賞教室は梅枝さんの藤娘ですね。これも楽しみです。
どうせなら、物語仕立てにでもしてくれると、セリフもたくさん聞けていいんですが、
定番普及の鑑賞教室ではダメかな(^_^;)


・なるほど、それで「新皿屋敷」
なんでこの話が「皿屋敷」のなのかな~ というのが疑問でした。
お皿でてこないですし。共通するのは「井戸に投げ込まれた」
ってとこだけですから。

が、私の記憶では、おなぎさんの話からでは、「不義もの」の汚名をきせられて斬られた
というイメージが強かったんですが、今回の上演で、ここにさらに
磯部家の重宝「井戸の茶碗」が絡んでくると知りました。

この茶碗、お蔦ちゃんが殿様から信頼されて預かってたものですが、
これを典蔵が盗み出し、さらにお蔦ちゃんの猫:コマに驚いて落として割ってしまいます。

で、後に殿様がお蔦ちゃんを不義の咎で詮議する際、これが出てきます。

お蔦ちゃんは殿様には自分が不義をしてないとわかってもらえると思ったのですが、
殿様の方は、お酒の勢いに加えて、「お蔦ちゃんが自分に茶碗を割ったことを自分に
打ち明けずに隠していた
」という不信感と怒りが決定打になって、
お蔦ちゃんを信じてあげられないわけです。

茶碗を割ったのが本当にお蔦ちゃんだとしたら、自分のいい分を信じてほしいという
お蔦ちゃんの訴えが殿様には空疎に聞こえるのも、もっともです。

私はこの場面の「なぜ自分に茶碗のことを打ち明けなかった」という殿様と、
お蔦ちゃんを斬った後に、チラッと後悔の色を見せる殿様を観ていて、
岡本綺堂の「番町皿屋敷」を思いだしました。

青山播磨の「なぜ、自分を信じられない」という無念の思いと、
今回の殿様の「なぜ自分に打ち明けられない」という無念の思いに
相通じるものを感じて、「そうかそれで「皿屋敷」なのか」と思ったのですが、
考えてみれば、岡本綺堂の方が後なんですよね(^_^;)

ということは・・・

お菊ちゃんが横恋慕してきた男に折檻されたあげくに殺され、
その幽霊お皿を数える「播州皿屋敷

皿ではなく茶碗で、お菊ちゃんではなく、お蔦ちゃんが斬られる
今回の「新皿屋敷

皿を割った罪ではなく、男の心を試したことから斬られるお菊ちゃんの
岡本綺堂「番町皿屋敷

という流れになるのかな。


・お妾さん上限
イヤホンガイドの解説によれば、なんか家康さんが出した条例のようなものに、
大名は8人まで、勘定奉行クラスは5人まで、武士は2人まで。
というお妾さん上限についての一文があったそうです。
ただ、将軍の御妾さんの数には言及してなかったとか(^_^;)。

・あのーお蔦ちゃんの幽霊って・・・
実際、舞台に出てきたんでしょうか?
いや、最後の場面、意識がとんでた というわけではなくて、
井戸の向こうが明るくなったのを観てたんですが、
肝心のお蔦ちゃんの幽霊の姿を見つけることが出来ませんでした。

観てた時は「殿様の気持ちがなんとなくそんな雰囲気を感じてる」
というだけだったのか、と思ってたんですが、筋書き読んだら、
「お蔦の幽霊が」と書いてあったので、

・・・もしかして、私、見逃した<(-_-;)??

と悩んでいるのですが。


・兄弟VS兄弟だったんだ。
岩上典蔵が兄弟で、お家のっとりをたくらんでいる。
というのは、「宗五郎」の最後の場面で、家臣の武士が
「岩上兄弟は・・・」と言ってたのをなぜか覚えていたので、
今回のお蔦殺しの場面で、兄ちゃんが出てきたとき、
「おぉ、これが兄ちゃんか」くらいの感想だったんですが、

お蔦ちゃんとの不義の疑いをかけられた紋三郎と、あの
ご家老様が兄弟(親子でも通りそうですが(^_^;)というのは
初めて知ったと思います。

対決構造は兄弟VS兄弟だったんですね。
これはこの場面を観てないと、わかりにくいなぁ。


【三・四幕目】
・若い!
最初の花道で宗五郎の松緑さんと、鳶の萬太郎さんがすれ違う場面を観て。
そう思わずにはいられませんでした。

私が今までみた宗五郎って、菊五郎さんか幸四郎さんか・・・だもんなぁ(^_^;)

萬太郎さんも、がんばってるけど、やっぱりあの鳶は、せめても少し、
年齢上の役者さんの方がよかったかも。

というか、私、萬太郎さんが三吉なのかと思ってました。
が、筋書きの亀寿さんのコメントを読むと、三吉は、そう簡単にこなせる役ではないようで。
となると、紋三郎でもよかったかと。

・お悔やみ客
幕開き、宗五郎の所へお悔やみにきている親子は、お蔦ちゃんが殿様に
見初められた時に働いていた茶やの女将さん親子なんですね。
いつもはこんなことはスルーなんですが、今回みたいにお蔦ちゃんが
出てきた後だと、なんか説得力が出てきますね。


・おはまさん
孝太郎さんがいい味だしてます。 私、孝太郎さんの世話女房、好きだな~♪
このおはまさんという役については、個人的には、宗五郎をおいかけて花道を走って引っ込む際に、
落とさないように とくしをしまうところが好きです♪

・磯部家の足軽さん
宗五郎とおはまさんにあれこれ手を貸してくれる足軽の六蔵さんとと七兵衛さんも
結構好きです♪
(名前があったとは初めてしりました(^_^;)
今回は松太郎さんと橘太郎さんのお二人。今回も「いいなぁ♪」と思わせていただきました♪


・人的資源有効活用・・・しすぎ??
国立劇場の公演は、参加人数の関係なのか、1つのお話の中で1人二役することが
よくあるように思うのですが、今回も前半で悪人兄弟の兄役だった役者さん(嵐橘三郎さん)が、
後半の「宗五郎」では、宗五郎の親父役で出てくるんですが、ちょっとアタマの中でイメージが
混乱してしまうんですよね、これ(^_^;)

うーん、人的資源の無駄遣いも微妙ですが、有効活用されるのも問題かな~

・前回公演時
筋書きに載ってる写真を見ると、国立劇場では、前回にもお蔦殺しの場面付で
上演したことがあるようです。
平成元年の4月とありますから、もう20年も前ですね。・・・そうか20年前なのか、元年は・・・_| ̄|○

いや、それはさておき。
前回は当時八十助さんだった現三津五郎さんがなんとお蔦ちゃんと宗五郎の一人二役でした。
今回はお蔦ちゃんと宗五郎の奥さんのおはまさんを孝太郎さんが二役されてますが、
なるほど、こういう二役もありですね~。
まぁ松緑さんにはお蔦ちゃんは厳しいかと思いますが(^_^;)、
菊五郎さんなら、いけるかな、宗五郎とお蔦ちゃんの二役。

あっ、ちなみに!!
この三津五郎さんがお蔦ちゃんをやったときの磯部の殿様は、なんと團蔵さん
観たかったな~、この公演。
ライブラリでチェックのリストに入れておこうかな。

・彦三郎さん
ちょっとセリフが聞き取りにくいなぁ と思うところが何箇所かありました。
いつもはもっとキレがよいしゃべり方をされてると思ったのですが・・・

・悪役の行方
岩上典蔵は逃げた というのは最後の場面での家臣の報告でした。
殿様は自分がかならず討つから。とおっしゃってますが、はてさて、
どうなったんでしょうねぇ。

・松緑さん
松緑さん初役の宗五郎。
どうなるかな~と興味がありましたが、最初の方は、やっぱりなんか違和感が
ありましたし、ぎこちなさというか、かっちりしすぎな感じも受けましたが、
酔いはじめて、磯部家へ乗り込むあたりは、ぐいぐいひっぱる勢いで観てて楽しく
なりました。
これから菊五郎さんみたいに、何回も上演していくと、こなれてきて、
今はぎこちないような部分も自然体になってくるのでは?と今後に期待です。
コメント (2)
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