のたりずむ♪ぷれ ~門耳(カドミミ)~

門耳=聞。小耳に挟んだ歌舞伎関連情報や見たお芝居の感想メモです。

2006年6月:国立劇場「国性爺合戦」

2006-06-19 01:38:30 | 書いたぞ: 感想書きました~
今年の国立の歌舞伎鑑賞教室、第一弾は栄えある第一回鑑賞教室と同じ演目
「国性爺合戦」です。

1階席は女子学生が大半を占める学生さんご一行様。
2・3階席が一般のお客さん といった感じでした。
筋書きは入り口で配布。ビバ無料♪

◆構成
歌舞伎の見方 30分
 休憩20分

国性爺合戦 第一幕
 休憩10分
国性爺合戦 第二幕

◆観劇位置
3階9列目上手

■歌舞伎の見方
解説:亀三郎さん

始まりは真っ暗。1階の女子高生のどよめきがすごかった~(^_^;)
で、幕が開くと舞台は奥までガラガラ状態。大小のセリが上下しながら盆が
ぐるーっと回って、最後はもとの平面に戻っておしまい。

1階席からは「なんだよ、これでおしまい?」みたいなざわめきが。(^_^;)

そこに七三のすっぽんから仁木弾正みたいに印をむすんで亀三郎さん登場。
いや~ 相変わらず、ものすごくいい声ですね~♪

まずナマの歌舞伎の舞台をみたことがある人、ない人それぞれに拍手~
とやったんですが、1階はもちろんのこと、初めて見る人が2・3階にも
結構いらっしゃったみたいです。

解説は 歌舞伎の「歌」の部分ということで、上手の床や簾内、ツケなどの説明を
ひととおり。

最後に「国性爺合戦」の人物紹介と、虎狩の部分を再現しての導入。
亀三郎さんの和藤内、素でもかっこよかったです♪
ここで、こんなかっこよく細かくやっちゃうと、この後、松緑さん
同じことの繰り返しになっちゃうんでは?
とか思ったんです。この時点では。虎狩の場面から始まると信じてたんで(T_T)

虎はやっぱりとっても愛嬌あり。
亀三郎さんとのコミュニケーションがまたナイスでした♪


しかし・・・亀三郎さん、色々と例えをだしてわかりやすいように 説明してくださいます。
ナレーション(義太夫)とかオーケストラピット(黒御簾)とかBGMとか。
これ、確かにわかりやすいんです。

でも、日本の伝統芸能の歌舞伎を、日本人に説明するのに、わかりやすいように
引き合いにだされるものが 横文字 というこの現実。
なんだかさみしいような、複雑な思いも胸をよぎったりしました。

ちなみに、近松のことは「日本のシェークスピア」。これは私もどこかで聞いたことが
ある例えです。
でも、シェークスピアのことを「イギリスの近松」とは説明されないんだろうな~(^_^;)


■国性爺合戦
◆演目について
近松門左衛門さんの浄瑠璃。
と聞くと「エッ、こんな洋モノが?」
と思ってしまいますが、近松さんにとっちゃぁ、
主人公:和藤内のモデルになったという鄭成功の話題は、
心中と並ぶ「ネタになる世間の話題」で ひとくくりにされてしまうこと
だったのかもしれません。
しかし、言われなければ、この中国を舞台にした作品が、
心中モノで大当たりの近松さんの作品と気がつかないかも(^_^;)

ちなみに初演(1715年)の翌年に歌舞伎になってるそうです。

なお、「こくせんや」は「国姓爺」と書くのが正解で、
国の姓をもらった人 というような感じの意味らしいです。
これを近松はワザと「国【性】爺」と書いたそうです。

もひとつついでに「和藤内」という名も「和」でも「唐(藤)」でも
「ない(内)」という意味がこめられているとか。


当時、衣装とか、どうやって考証したのかな~とちょっと不思議。


全5段の構成で、今回の上演は三段目の部分の省略形だそうです。
文楽の本などによると
初段:大明御殿
二段目:平戸浦・千里が竹(←これが虎狩)
というとこまでわかりましたが、四段目・五段目はわかりませんでした。

今回、見たかった虎狩の場面がカットされてたのは残念(T_T)

◆人物関係:
日本に亡命してきたパパ:老一官(秀調さん)
老一官の日本人の後妻:渚(右之助さん)
二人の間の一粒種:和藤内(松緑さん)
和藤内の腹違いの姉さんで、今は韃靼の将軍の奥方:錦祥女(芝雀さん)
錦祥女のダンナ(=韃靼の将軍)で元は明の人:甘輝(信二郎さん)


一幕目
◆あらすじもどき:
明からわけあって日本に亡命してきた老一官が、
明が韃靼に滅ぼされたと知り、明国再興のために
日本で設けた妻子を連れて、韃靼にやってきます。

しかし、いくら息子の和藤内が人並みはずれた馬力の
暴れ盛りの若者とはいえ、老いた夫婦と息子の3人だけで
韃靼を攻めようってのは、無理無理無理。

ところが、パパ老一官には隠しだまがありました。
明にいたころ、前妻との間に生まれて2歳で生き別れた娘:錦祥女。
この子が元は明の臣下で、今は韃靼の将軍:甘輝の奥さんに
おさまってるというから、これを使わない手はない。

ということで、甘輝に味方を頼むため、甘輝の獅子ヶ城に
親子3人でやってきます。
が、甘輝は留守。

しかし、奥さんの錦祥女には会え、親子の確認もとれたため、
錦祥女も2歳で生き別れたとはいえ実の親。ダンナがかえるまで
城にとどめて置いてあげたいとこですが、この城のおきては
「他国のものは門内にいれない」です。

そこで、女は度胸、奥さんの渚さんが 年老いた女でさらに
縛ってあれば、問題はなかろう と提案。
錦祥女は義理の母を預かり、父と腹違いの弟に
「ダンナへの頼みが上手くいったら白粉を
上手くいかなかったら紅を、城の外に通じる河に流す」
と 約束します。


◆のたりの目
幕が開いて、初めて、「そうか、虎狩ないんだ~っ」とがっかり。

そのがっかりのせいではないんですが、すみません、見せ場を含めて途中、
爆睡してました(T_T)
気がついたら渚ババ様が縛られてまして・・・<(ーー;)

あ、城壁の内にたつ兵士に寿鴻さんを発見。

ところで、これ、ついてはいけないポイントなのかも
しれませんが・・・みなさん、何語で会話してらっしゃるんでしょう(^_^;)
とても気になります・・・

義太夫は清太夫さん。今回は電光掲示板に詞章が出るので、聞いてて
意味のわからないところでも、漢字まじりの言葉を見ると、
わかりやすくて助かりました。

が、私の座ってた3階のように、遠く離れて見る分には、
特にそちらを向かなくても電光掲示板が視界に入るので、
見やすかったのですが、これ、1階席の人とかは、電光見て、
舞台見て、と集中力が大分そがれてしまいそう。

それに、やっぱり、歌う先に 先まで歌詞がわかってしまうのは、
どうしても、耳の集中力をそいでしまうかも。

ちなみに、2幕目で義太夫さんがくるっと回って引っ込んだところが
妙に学生さんに受けてました。他のお芝居とかでは、ではあんまりないかな、
ああいうの(^_^;)


二幕目
◆あらすじもどき
とらわれの身ながら丁重なもてなしをうける渚ババさまは「(お)むすびがほしい」
などと、わりと余裕(^_^;)

城に帰ってきた甘輝。義理の義理?の母にあたる渚の申し出に、
もともとは明の人である甘輝は二つ返事で引き受けたいとこながら ちょっと問題が。

じつは、たった今、和藤内征伐の大将を韃靼王から任命されたばかりだったのに加えて
ここで反旗を翻せば 奥さんの縁のために裏切った としか思われない という状況。

甘輝としては、自分が和藤内に味方するのは、血縁ではなく明への忠義からなんだ
ということをはっきりさせときたいわけです。

というわけで、和藤内との縁をきるべく、奥さんの錦祥女を殺そうとするわけです。
しかし、ニッポンの母:渚ババ様としては、目の前で継子とはいえ
自分の子供がころされるのを みすみす見殺しにはできない!

というわけで、渚ババ様、刃を振りかざす甘輝とダンナの立場を思って覚悟を決めてる
錦祥女の間に割り込みはするは、縛られてて手が使えないもんですから
袂に噛み付いて甘輝を引き止めるは、大奮闘。

結局、和藤内との縁を切れないなら、味方はできない と甘輝は
和藤内への味方を断念。
錦祥女は 交渉不首尾の合図に紅を流しますが、その紅は・・・


一方、橋の上で一心に川面も見つめていた和藤内。
流れてきたのは 不首尾の紅。
とあるからは、敵の館に母親をひとり置いとくわけには!
と 駆けつけた韃靼の兵士を投げ飛ばし、獅子ヶ城へ一目散にかけていきます。

駆けつけた和藤内は 母を間に甘輝と対面。
険悪ムード一色即発な二人の前によろよろと出てきたのは錦祥女。
そのただ事でない様子にかけよった渚ババ様は 錦祥女が自分の胸を
刺していたことと気がつきます。

つまり、先ほどの紅は錦祥女の血。
自分がいなければ、和藤内と甘輝は赤の他人。
と ダンナに和藤内に味方してくれと頼みます。

こうまでされては 断る理由もない甘輝。
和藤内への味方を約束し、和藤内をその名も「国性爺鄭成功」と改めさせ
明の大将軍として、敬います。

お召し換えをして 立派な姿になった二人を見届けた渚ババ様は
ニッポンの母として、娘だけを犠牲にはできない 
と 自らも自害。

二人の前で、よくここまでもってたなぁ(^_^;) という錦祥女と
二人仲良く息絶えます。

男二人は 母と妻の遺骸を前に打倒韃靼の決意を新たにするのでした。

というところで、おしまい。

◆のたりの目
信二郎さんの甘輝は この幕でようやく登場。
なんか こう、人形のように端整なお顔になってるなぁ。
とても絵になってます。しかし、問題はお声。

どうにも なんかかすれ気味。
怪しいな~(^_^;)あれは。 お風邪かも。
折り返しも過ぎてはいるけど、最後まで持つかなぁ・・・<(ーー;)

そういえば、甘輝の刀かけ、朱の竜?のデザインで、縦置き型です。
普段の歌舞伎では、横掛けが多いし、あんまり凝ったデザインのは
見かけたことないせいか、なんかかっこよくみえました。

それから最後の場面でお召し換えした衣装が、国性爺の白と対の赤。
チラシやポスターの衣装はこちらですね。
この衣装、かっこよかったです♪

芝雀さんの錦祥女は、甘輝の言葉に反応して、態度まで細かく神経が
いきわたってる感じがします。

ただ、自分の血を紅として流す場面、大分ドバドバ流してたみたいだし、
流す時は元気そうだったなよな~ と思っちゃいましたけど(^_^;)

そして、すでにご覧になった方の話に軒並み「良い」評判の
右之助さんの渚
うん、こりゃぁ 皆さんがお褒めになるのも よくわかります。

情感っていうんでしょうか、そういうものが声にあふれています。
二幕目の錦祥女をかばっての啖呵?なんかは 、
ちょっとグッとくるものがありました。

あの子を思う母の姿に、1階席にいた女子生徒さんが、何か感じてくれると
いいなぁ。何かを感じるココロをもっていてほしいなぁ。と思うところです。
(でも、後ろ姿を上から見ている感じでは、3割は完璧 首が寝てました・・・(^_^;)

そうそう、「ニホン」じゃなくて「ニッポン」なんですね。

和藤内の松緑さんは、後ろまで全開舞台で、大セリから、
橋の上で笠を掲げた形でせりあがってきます。
あがりきると そのまま橋が前進。
この笠を掲げた形が、とても絵になっていました。
「ナムサン!ベニが流れた!」のセリフも はっきりとして
いい感じでした。

亀三郎さんの解説によると、一幕目と二幕目、和藤内の隈の数が違うそうです。
二幕目の方が怒ってるから、筋が多いとか。
うーん、言われてなければ、気がつかなかったとうし、
パッと見た感じも、「そういわれれば、そうかな~」
くらいの違いにしか・・・

う~ん・・・<(ーー;) 一幕目爆睡してたバチだな、こりゃ。

追手を相手に上半身脱皮する和藤内。
下に着込んでたのは、赤地に金の鋲がたくさんついてる衣装。
・・・うーん、これは日本のセンスじゃないなぁ~(^_^;)
なーんて思ってたら、筋書きの衣装の解説によると、これは荒事の典型的な
衣装とか(^_^;)

あと、最後に中国の服にお召し換えした和藤内ですが・・・
うーん・・・<(ーー;) なんか隈とあってない。
中国の衣装は信二郎さんみたいにまっ白か、せめて青隈の方がいいのかも・・・


物語について
甘輝将軍は、本当に明国復興を願うなら、へんな見得はらずに、
「いわせたいやつには言わせとけ」 ぐらいの心意気で
素直に和藤内に味方してやればよかったんですよ。

というわけで、なんといいますか、女子の私から見ると、
なんとも不条理なお話かも・・・。(^_^;)
母が強いのはとても好きなんですけど♪ 

◆花道度:低
一幕目では親子3人の出、父と子のひっこみの退場。
和藤内は幕外で飛び六法。これが一番見モノかな。


二幕目は甘輝将軍のお帰り、兵士を追いかける和藤内のとび六法?の引っ込み、
続く和藤内の出、くらいです。
コメント (4)
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