メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

百万円と苦虫女

2008-08-05 21:41:48 | 映画
「百万円と苦虫女」(2008年、121分)
監督・脚本:タナダユキ
蒼井優、森山未来、ピエール瀧、齋藤隆成、笹野高史、佐々木すみ江
 
わけありということもあり、百万円が貯まると次の土地に移って人間関係をゼロベースにすることを続けている主人公鈴子(蒼井優)の話である。
  
監督・脚本のタナダユキからすると、この話の流れの中で、一つ一つの場面でいかに蒼井優が演じるか、それは楽しみでありスリルがあったであろう。がしかし、それが落とし穴になることもあって、特に前半はそれだけではゆるく退屈してしまう。
   
一つの作品の中で、スタイルというか文法というか、これが見えてきてほしい。暗い場面、雨の場面で照明を使わないというのも、何か意味があるのだろうか、人間の眼はもう少しよく見える。それから昔の日本映画巨匠監督のような蒼井優ショットを時々入れる。これスチール写真にしたら買ってもいいが、映画の中であまり意味はない。
 
蒼井優という女優は、もっと脚本が翻弄しないと、こういう小さいところでは、うまさを発揮するものの使いきれないままに終わってしまいがちである。
そういう意味では、蜷川演出「オセロー」のデズデモーナは見たかった。NHK-BSででもやらないかな。映画監督ではやはり岩井俊二はそこのところがよくわかっていた。
 
後半の展開で、相手役の森山未来はうまくいくかと思ったが、その後のヒモみたいに見えてしまう脚本・演出は、最後につながったかどうか、疑問。
 
とはいえ、見なければよかったとは思わせないのは蒼井優の不思議な力だ。昨年の「クワイエットルームにようこそ」ではたしか最初の台詞がこのタイトルのフレーズで、そのインパクトはしばらく続くのだが、今回は最後の台詞、一瞬、振り返った表情とその一言で決めてしまう。おそらく彼女以外でこうはいかないだろう。
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