メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

わが谷は緑なりき

2020-02-01 14:58:48 | 映画
わが谷は緑なりき(How Green Was My Valley、1941米、118分)
監督:ジョン・フォード、製作:ダリル・F・ザナック、音楽:アルフレッド・ニューマン
ウォルター・ピジョン(グリュフィード牧師)、モーリン・オハラ(アンバート)、ドナルド・クリスプ(モーガン)、ロディ・マクドウォール(ヒュー)
 
タイトルはなんとなく知っていたが、どうも地味で良心的そうな古い映画ということで、特に手は伸びなかったけれど、WOWOWがおそらくアカデミー賞が近いということから放送したらしいのを録画してみた。
 
おそらくヴィクトリア朝(話の中に女王が出てくるから)の時代、ウェールズの炭鉱町、モーガン一家は父と息子4人が炭鉱で働いている。家族ほかには妻と長女(アンバート)、年の離れたまだ小さい息子(ヒュー)。
 
物語は成長したヒューの回想という形でできている。こういう街だから、生活は豊かではないが、それでもそんなに悪くない一軒家で、父親は大事にされている。このあたり、アメリカの感覚が反映しているのかもしれない。
 
炭鉱だから、雇い主との抗争、ストライキ、落盤事故等があり、その中で頭の出来がよく一家でただ一人学校にいくことになったヒュー、しかし隣街の学校で、同級生や教師にいじめられる。だが街の大人たちがヒューにボクシングを教え、ヒューは仕返しをする。このあたり、ザナック、フォードのサービス精神が生きているのかもしれない。
 
正義感あふれ、アンバートと互いに憎からず思っているが、炭鉱主の息子の彼女に対する求愛をどうにも出来なかった牧師、そして落盤事故で父モーガンが取り残されたとき、ヒューと牧師は助けに入る。姉は結婚が破綻し戻ってくる。そしてなんとか一家はまた再生する。
 
そう、まとも過ぎていて、どこまで見ていく気がするかと思ったのだが、そこはザナックとフォード、やはり映画作りにたけていて、特に画面の展開がうまい。ちょっとつらいシーンでも長撮りはせず、シーンがうまく変わっていく。そうでなければ全体で2時間近くは(特に当時はこれでもかなり長い方だ)持たない。
 
思いついたのだが、これ西部劇などの画面構成、展開と共通するのではないか。このところ主にジョン・ウェインものをNHK BSでよくやるのでそれで気がついているのだけれど。
 
さてジョン・フォードのルーツはアイルランドらしい。アメリカ移民、特に西部にいる人たちとしては、ウェールズ出身者と共通するところがあるかもしれない。
 
街のシーン、モノクロとはいえ背景が今一つか、と思ったら、これロケではなく、ハリウッドのセットらしい。そりゃ1940年あたり、イギリス本国で大きなロケは出来なかっただろう。
 
ところで、この映画を見たあと、はてこれとちょっと似ている話の映画があったな、と思った。
そう「リトル・ダンサー」(2000)である。やはりイギリスの炭鉱町、こっちはボクシングが得意な少年がバレエダンサーとしてトップに上り詰める話である。

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