メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

「昨日の世界」と「グランド・ブダペスト・ホテル」

2015-07-14 10:34:29 | 映画
映画「グランド・ブダペスト・ホテル」について書いた時に触れたが、クレジットにシュテファン・ツヴァイクの著作にインスパイアされたとあった。これについては、いろいろ言及されているようで、公開前に映画評論家の町山智浩氏がラジオで話しているのを聴き、興味を持っていた。氏は自身のブログにも書いている。
 
先週アップしたようにツヴァイクの自伝にあたる「昨日の世界」を再読したところで、さてとこの映画を再度見た。画面の変化が多くて追いかけるのに苦労したと思っていたが、やはり2回目、だいぶ余裕を持ってみることができた。
 
回想する元ロビー・ボーイで動乱の世界を生き抜いた主人公、そしてその師匠のホテル・コンシェルジュ、彼らが夢見た世界、人と人との国をまたぐネットワーク、それがおそらく甘ったるいと言われることを承知で、疾走するように描かれている。この描きかたがこの映画の真骨頂である。
 
ツヴァイク特にその「昨日の世界」がこれを創らせたとすれば、ツヴァイクも本望だろう(ちょっと大げさ?)。あの印象的な有名ホテル・コンシェルジュのネットワーク、このアイデアはやはり秀逸。そして菓子作りを随所に配したところ、香水パナシェのエピソードなど、とげとげしくならない工夫もいい。
 
そしてこのストーリーの作者と思われる登場人物が、ホテルで話をきいたのち南米を訪ねたとのナレーションがあり、ツヴァイク最後の地ブラジルへの着地としたのも気がきいている。

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