メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

大人は判ってくれない

2011-10-16 10:24:38 | 映画
「大人は判ってくれない」(1959、仏、97分、Les Quatre Cents Coups)
監督:フランソワ・トリュフォー、脚本:フランソワ・トリュフォー、マルセル・ムーシー、撮影:アンリ・ドカエ、音楽:ジャン・コンスタンタン
ジャン=ピエール・レオ(少年)、アルベール・レミー(父親)、クレール・モーリエ(母親)、ギィ・ドゥコンブル(フランス語教師)
 
見ることが出来てよかった(WOWOW)。もっとも「判ってくれない、判ってくれ」という強い主張かと思ったら、またそういう若者が「切れた」表現かと思ったらちがっていて、どちらかといえば「大人には判らない、判ってやれない」ということを、大人を抜け出したトリュフォー(1932-1984)が思いのほか丁寧に描いた、今から見ればやはり傑作というほかないものである。
 
警察にやっかいになる後半にくらべ、特に前半はこの子がどういう家庭生活、学校生活、友達付き合いをしているか、じっくりと描きながら飽きのこない進行だ。
また、画面をうまく使って、明確にわかる前にそれとなく前触れを出しているところなど、しかけもにくい。例えば、少年が夕方に学校から帰ってきて誰もいない、すぐに食器を三人分テーブルの上にセットする。ここでおそらく一人っ子で両親は共働きだろうということがわかる。
また、扉近くの壁に「モンテカルロ・ラリー」のペナントが貼ってあり、この歳にしては?と思っていたら、父親がかなりラリーに熱心で日曜はほとんどそれにかまけ少年の相手をあまりしてないことがわかってくる。
 
この映画を見たのは2回目、公開された時そしてそれから話題になっていたのは知っていたが、今とちがってTVやビデオで公開されることもなく、名画上映もたしかあまりなかったと思う。多分大学生のとき、映画好きな友人が教え誘ってくれ、今の東京国立近代美術館フィルムセンターで上映された時に初めて見た(おそらく美術館部門とまだ京橋で一緒だったと思う)。とはいえ、内容はもうほとんど覚えておらず、唯一警察から載せられた車の柵の中の顔をカメラにとらえたところくらいである。それもこれがラストと勘違いしていたのだから、記憶はあてにならない。
 
ラストの少年が走るシーンの延々とした長回し、この時の彼の走る姿が見事で、その背筋で彼が僅かながら大人になってきていることがわかる。そしてそれはFINとなる彼のアップにつながる。 
 
見ていてなかなかわからなかったのは、彼が何歳?ということ。学校でクラスは男だけ、公立?私立?、おそらく中学1年、13歳くらいだろう。
 
それにしても、国語の授業、かなり厳しいが、その内容は高度で、さすがフランス、今はどうなのか。
 
原題は400の殴打? 英語のタイトルはそのままThe 400 Blows だが、400というのは何か意味があるのか、わからない。

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