メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

アンドレ・プレヴィンのマーラー第4

2011-07-25 15:55:48 | 音楽

マーラー 交響曲第4番ト長調
アンドレ・プレヴィン指揮 ピッツバーグ交響楽団 エリー・アメリング(ソプラノ)

録音:1978年
 
アンドレ・プレヴィン唯一の正規録音によるマーラーで、日本で初の発売だそうである。多分そうだろう、私も記憶がない。
タワーレコードが数年前から、未発売やなかなか再発売されないが評価すべきと考えたものを、大手レコード会社とタイアップして、しかも平均1000円(1枚)で出しているものの一つである(これはEMIから)。
 
この1枚などは企画としてまさにコロンブスの卵だろう。マーラーというとロマン主義、表現主義、時代思潮など、とにかくその音楽のいわゆる「中身」に関心が向きがちで(乱暴ないいかただけれど)、そういう音楽と達者な指揮者プレヴィンというのは何かミスマッチという感じがしないでもないのだろう。それだから出されなかったか?
 
でも、聴いてみれば、これまでのあらゆる演奏とは異なって、明るいといえば明るい、明解、わかりやすいといえばそう。しかしだからといって、暗い情念がないからこの演奏は、、、ということは言えない。それは第4だからというのでもない。
 
聴いていくうちに、この音楽は元来このように書かれ、こうはっきりと演奏されるべきだったのではないのか。この演奏にじゅうぶん身をゆだねていいるのに気がつく。特に主旋律はもちろん低音部分がどの演奏よりもはっきり聴こえるのだが、これが音楽全体をむしろ明るくしている。
 
それまでマーラーを指揮するとはと思われていなくて、録音してみると評判になったケースに、随分昔ではジョン・バルビローリ、もう少し後ではオペラ専門という感じだったジェームズ・レヴァインがいる。この二人、そしてプレヴィン、皆ちがうけれども、細部を高い密度で弾く、マニエーレンとでもいうのだろうか、それは共通しているようだ。
 
とにかく、このプレヴィンが演奏していい結果を出しているということは、マーラーにとってむしろ名誉なことではないか。


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炎上する君(西 加奈子)

2011-07-25 15:19:02 | 本と雑誌

「炎上する君」(西 加奈子 角川書店 2011年)
 
西 加奈子は気になる作家だったので、たまたまこの本を見つけて読んでみた。
平均20ページの短編を集めたものである。どれも現実とは離れたことろがある不思議な世界、そういう設定のなかで、現実の人間に通じる何かを、明らかに意図的ではない書き進め方で読者に届けようというものだろうか。
 
そう、SFそれもショートショート的なものを少し膨らませたものと言えるかもしれない。

特に2番目の「空を待つ」は、読んでいるうちの「もしや」とそのさわやかなとでもいいいたい結末が見事である。
 
ただ、あまりにSFの色彩が強くなっていくと、この人の才能はあまりいかされないで終わるのではないだろうか。そこのバランスが難しいが、これからも注目していこう。
 
以前、NHK教育TV「こだわり人物伝 太宰治」で、4回のうち1回、この人がコメンテーターであった。確か「皮膚と心」と「富嶽百景」をとりあげたと記憶している。この短編集も太宰を意識しているのかもしれない。「私のお尻」」には太宰そのものが出てくる。もっとも山崎ナオコーラそのものが出てくるものもあって、何故ナオコーラ?


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