メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

アーカイブズが社会を変える(松岡 資明)

2011-07-01 10:28:03 | 本と雑誌
「アーカイブズが社会を変える 公文書管理法と情報革命」 (松岡資明、平凡社新書、2011年4月)
 
この10年近く、日本経済新聞に他では考えられないほど精力的に公文書関連の記事を書き続けている著者が、「日本の公文書」(ポット出版、2010年1月)に続き、まさに公文書管理法が施行される4月というグッドタイミングで書いたものである。
 
内容は前著と重複も多いが新書という体裁と出版形態からより多くの人に読まれると考えるし、またそうなることを望みたい。
公文書というもの、公文書の意義、我が国における公文書管理法の制定・施行までの動き、関係者の努力等が書かれており、特に関係者の話などは前著にもあったが、記録として貴重である。
 
またいわゆる公文書以外についても、この一年間にあらわれてきた公共図書館や地域活動におけるさまざまなアーカイブについて触れられており、同様なことを考え始めている方々には大いに参考になるだろう。
 
ただ私が最初にかかわったミュージアム関連のアーカイブ、デジタルアーカイブについては、著者の取材範囲からは少し外れており、ほとんど触れられていない。これはやむを得ないことである。 
 
あと一つ、195ページで、牟田昌平氏の講演記録から、デジタルアーカイブ推進協議会を中心とする当初の推進について、「、、、インターネットによる接続で見るという発想はない」としているが、これは間違いである。
デジタルアーカイブの先達の一人として私も尊敬し「デジタルアーカイブ白書2001」でも執筆されている牟田氏が2005年の講演でこのように話したのは、記録ミスでなければ、おそらく文脈の中で少しデフォルメをしたか、うっかりして他のことと混同したか、そう信じたい。故人であり確かめるすべはないのであるが。
 
すでにこの件については、やはりデジタルアーカイブの推進にかかわった方が「本読みな暮らし」でより具体的に書かれている。そのとおりだと考える。

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