メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

いいなづけ (マンゾーニ)

2011-02-23 18:48:08 | 本と雑誌

「いいなづけ」 上中下(アレッサンドロ・マンゾーニ、平川祐弘訳、河出文庫)

アレッサンドロ・マンゾーニ(1785-1873)は19世紀イタリア最大の国民作家だそうで、この「いいなづけ」 (I PROMESSI SPOSI)は、ダンテ「神曲」とならびどの家庭にも必ずあるといっていいらしい。マンゾーニも「いいなづけ」も、須賀敦子の本を読むまでは全く知らなかった。
 
どの家にもあるという話は、訳者の解説にも書いてあり、さらに「神曲」と「いいなづけ」は、名作アンソロジーには入ってないそうだ。つまりその必要がないということらしい。
 
神曲を通読というのはいまさらしんどいけれども、どうやらこっちはなんとか読めそう、という予想で読んでみた。 
 
村の若い二人が結婚しようとして、もよりの教会司祭に頼むのだが、娘に横恋慕する領主がこの気の小さい司祭をおどしたためうまくいかず、二人は別々に逃避行、その間にミラーノをめぐる政治情勢、ペストの蔓延と、いろいろな苦難が待ち受けるが、最後はめでたしめでたし、となる。
 
近代の小説のようには、登場人物の性格が際立っているわけではない。しかし現実にいる人間はむしろこうであろうと、悪い奴も含め、そのふるまいの描写は見事でほほえましい。
 
集団の動き、とかく弱い人間たち、この話を親から子へみんなで読んでいって、イタリア人がなんとか前向きに生きていくことを後押ししているのかもしれない。
 
最初の歴史背景などは、日本人としてはよくわからないが読み飛ばしてもその後の理解に差支えないし、ペストについての多面的で詳細な記述もそこそこのつきあいでいいだろう。
 
これほどの位置付けがあるものであれば、あの「ペスト」を書いたカミュはこれを読んでいるかもしれない、と勝手に想像してしまった。


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