メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

高間筆子の絵

2006-11-04 12:06:25 | 美術
高間筆子館というとても小さい美術館が井の頭線明大前のKID AILACK ART HALLというビルの5階にある。
「気まぐれ美術館」(洲之内徹)を再読していて、最初に読んだときには気に留めていなかったが、ネットで調べてこの館を知り、行ってみた。
 
高間筆子(たかまふでこ)(1900-1922)が絵を描いたのは死の前2年間であるが、その翌年、関東大震災で全ての絵は消失してしまった。従って、この館で見られるものは、死後出版され「高間筆子誌画集」にある色刷りから作ったスライドの繰り返し上映と、詩歌、当時の新聞などの資料のみである。
 
描かれているのは、自画像、静物、都内の風景などで、鮮やかな色と大胆な筆使いは、確かに言われているようにフォーブ風であり、ドイツ表現派を思わせる。影響を受けたものの真似はあるかも知れないが、自分の描きたいという衝動に正直であろうことはわかる。
 
詩も、もう少し磨き上げる時間がほしいと思わせるが、どうしても出てきてしまうという人がこの世にはいるのだ、と思わざるを得ない。 
 
彼女は、最後の年、スペイン風邪にかかり、精神に異常を来たしたのか自宅の二階から飛び降りて死んだ、と伝えられる。
 
ところで、彼女がかくも語り継がれるているのは、まず詩画集が残っていること、そして詩人の草野新平が絶賛したこと、「気まぐれ美術館」に書かれたことである。
そして1979年6月17日、NHK教育TV「日曜美術館」において草野新平の解説で取り上げられた。この時のガリ版による放送台本もここに展示されている。
 
さらに最近では2004年4月24日、テレビ東京「美の巨人たち」で取り上げられた。ネット上で、その概要と絵のいくつかを見ることが出来る。
 
両方とも見ていないが、一度見てみたいものである。NHKの方は1981年以前だから、録画が残っているかどうかはわからない。
 
ところでこの「美の巨人たち」が放送される前、彼女の出身校である東京女学館はそのホームページでこれを卒業生・在校生に伝えたようだ。こうして記憶を残していくのは意味あることである。

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