メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

カルティエ現代美術財団コレクション展

2006-06-08 23:21:17 | 美術
カルティエ現代美術財団コレクション展(4月22日~7月2日 東京都現代美術館)
 
現代美術はなかなか捉えにくいと言っていると、そのままになってしまう。これはいいかもしれないと直感が働いたセレクションになるべく多く身をゆだねるしかない。
 
さて今回は楽しかった。現代美術になんとなく持っていた表現のどぎつさも、鋭さも、また理解の拒否も、極端ではなく、良かったら見てくださいという開放感、軽さがあった。
 
しかしそれでも、見る前と見た後には確実に違う何かが残る。
印象的なものをすべて挙げることは出来ないほどだがいくつか。
 
ロン・ミュエク「イン・ベッド」:現実の何倍ものサイズの横たわる女、しかも皮膚、眼、毛髪など、異様にそのものであることの驚き。
 
デニス・オッペンハイム「テーブル・ピース」:長いテーブル、両端の白人、黒人、その会話音の妙。
 
トニー・アウスラー「ミラー・メイズ(死んだ目が生きている)」:このようなものがあったか。
 
マーク・ニューソン「ケルヴィン40」:これ作者が作りたかった飛行機の実物大模型みたいなもの。SNECMAという現実にあるエンジン会社の名前も書いてある。
 
アルタヴァスト・ペレジシャン「我々の世紀」:人類の空への、宇宙への憧れが現実の試みになり、その期待の高まり、喜び、苦しみ、悲惨、人間と機械が、断片的な映像のモンタージュ、フラッシュバックなど、ライムライトをはじめとする印象的な音楽もあり、30分大変な迫力である。このようなものがあったこと自体が驚きだ。
描かれているものが何かは、「ライト・スタッフ」、「アポロ13」を見ていればおよそわかるが、作者がいたソ連のフィルムが当然多い。1990年ころにはこのようなものの利用が相当可能だったのだろうか、以前からそうだったのだろうか。
 
他にボクシングの短いシーンを繰り返しながら、現場にいるような感じを出す強い音をともなった映像作品。長く見ていると心臓にこたえそうだが。
 
なお、全体にアフリカをはじめとするエスニックなものの色は確実に多い。ピカソの時代から長く続いているのだろうか。
 
昨日の朝日新聞夕刊に出ていた高階秀爾氏の紹介記事で今日行って見る気になった。こういうものを書くとこの人はうまい。

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