心の風景 認知的体験

癌闘病記
認知的体験
わかりやすい表現
ヒューマンエラー、安全
ポジティブマインド
大学教育
老人心理

政治ショウの次は、野球ショウ

2018-03-30 | 社会
政治にはショウの部分がたぶんにある。
それが健全な政治というもの。
それにも限度はあるが、森友問題は、しばらく検察まちでお休み。

代わって、野球シーズン。
今日は、高校野球「智弁対創成館」の9回、10回の劇的サヨナラを見た。
そして、夕食にTVスイッチいれたら、巨人対阪神。
ニュースショウから、しばらくは、野球にしようかなー

それにしても、こんなに観客が集まるなんてねー
これも健全な社会の一端なのかも。でもちょっぴり不安もある。



四川料理

2018-03-30 | 心の体験的日記
お昼にショッピングセンターにある
中華料理店へ。
いつもは、ネギみそラーメンに餃子なのだが、
机の上に、「マーボ豆腐キャンペーン」とある。
麻婆どんは、コンビニで時折買う。おいしい。
ならば、というわけで、注文した。

辛さと熱さでまったく味がわからない。
なんとか半分くらい食してダウン。

この先1000食として、1食分、マイナスになってしまった。

新しいお店、料理には、要注意ということだなー
でも、デパートの屋上レストランは、はずれはなかったなー


生活用具の開発・評価に当たっての認知工学的視点 

2018-03-30 | わかりやすい表現
2010年09月09日
J-GLOBAL ID
200902172466488884

整理番号
02A0864919

タイトル(和文)
生活用具の開発・評価に当たっての認知工学的視点 (2)  使用性をめぐって
タイトル(英文)


タイトル(原文)


著者(所属機関) (1件)
海保博之
所属:筑波大

発表資料 (1件)
人間生活工学


JST資料番号 (1件)
L4154A


発行年
20021015

巻、号、頁、特殊号
巻:3 号:4 頁:61-63


2010年09月09日
J-GLOBAL ID
200902172466488884

整理番号
02A0864919

タイトル(和文)
生活用具の開発・評価に当たっての認知工学的視点 (2)  使用性をめぐって
タイトル(英文)


タイトル(原文)


著者(所属機関) (1件)
海保博之
所属:筑波大

発表資料 (1件)
人間生活工学


JST資料番号 (1件)
L4154A


発行年
20021015

巻、号、頁、特殊号
巻:3 号:4 頁:61-63


生活用品の認知工学序説
海保博之

1.「デザイン性」をめぐって

●本論のねらいと構図

 デザイン性と使用性はもっぱらマーケティングで、機能性と安全性はもっぱら開発技術者での関心になるが、一つの用具で、軽重はあっても、この4つの視点は一体で考えることも必要である。
 4つの視点間には、機能性を中心に、3つの視点が、ときには連携し、ときにはトレードオフ(あちらたてればこちらがたたず)するような関係が想定される。

図1-1 4つの視点間の関係
 取り上げる生活用具は特には限定しないが、近年家庭生活への普及の著しい電子生活機器について取り上げるときはその旨を宣言することにする。
 4章全体を通して、「使い手にとってこうだから、用具の開発、評価にあたっては、こうしてほしい」というスタンスでの言説になる。
 さらに、使い手の認知特性を、用具開発と評価のための工学技術として活かしてほしいとの気持ちを「認知工学」という言葉に込めてみた。
 ところで、今なぜ生活用具が問題なのであろうか。
 アフガニスタンからの悲惨な映像がTVで繰り返し流される。戦争や地震による建物や道路の見るも無残な破壊の映像に加えて、生活場面に見られる生活用具の貧弱さにも驚かされる。
 ひるがえって、我が日本の家庭の中にある生活用具。その質量の豊穣さには、アフガニスタンでのそれとの比較をせずとも、あらためて驚かされる。ノーマンによると、その数は2万個くらいになるという。しかし、その豊穣さの中にも、というより、豊穣だからこその問題もある。
 それも踏まえながら、生活用具と人との関わりについて、上記4つの視点から1章ずつ取り上げてみたい。
 本章は、デザイン性である。
 なお、その前に「生活」の中での認知・行動の特徴を摘記しておく。以下の話で陰に陽に、これらの特徴が引き合いに出されるからである。

 ・圧倒的に習慣的な認知・行動が多い
 ・多彩な認知・行動が発生している
 ・多彩な人々がかかわっている
 ・通時的な変化がある
 ・世代間遺伝がある

●デザインの3つのねらい
 一般に、デザインには、3つのねらいがある。
 一つは、ファッション製品などのように、それを持っていることを人に誇ったり、自己満足したりすることをねらうものである(所有のデザイン)。感性に訴えたり、さらに大げさに言うなら、それを所有することの意味にまで配慮したデザインをすることになる。
 2つは、消火器などのように、それがそこにあることを示すことをねらうものである(存在のデザイン)。目を引く(誘目性)、違いがわかる(弁別性)、それがそれであることがわかる(識別性)の3つが大事になる。たくさんある食器の中から自分の食器が選べるのも、存在のデザインのおかげである。
 3つは、包丁などのように、どんな機能を果たすか、どのように操作するかをわからせることをねらうものである(機能のデザイン)。
 適切な行為を自然に導くアフォーダンス、できることの制約、目標と操作の自然な対応づけ(ノーマン、1988)が組み込まれることになる。ほとんどの台所用具はこれらを備えているが、近年家庭に急速に普及した、電子生活機器にはまだうまく組み込めていない。
 生活用具は、機能のデザインが主である/あるべきだが、豊穣の中では、所有と存在のデザインもときには強く求められるし、それが売れ行きに直結することもある。さらに、後述するように、それが所有者の生活の中で単なる道具を越えて一つの物語性を持つこともある。

●色と形がデザイン性の中心
 いずれのねらいを持ったデザインでも、その中心は色と形である。
 話はやや脇道にそれるが、色形問題と呼ばれる古典的な実験がある(図1-2)。この実験のおもしろいところは、年齢7、8歳あたりを境に、色分類から形分類へと移行する発達的な変化である。


 元来は、事物の分類という抽象能力の発達をみるための実験であるが、事物の分類の基本属性として色と形があるらしいことをうかがわせること、さらに、多彩な分類を可能にする形のほうに基本属性をシフトさせることで分類効率を高めようとする適応的な発達が起こっていることが示唆されて興味深い。
 ところで、色属性については、その感性的な機能が、とりわけ存在のデザインでは重視される。図1-3のような、SD(意味微分法)尺度で計測できるような特性である。

● 評価次元
健康な −−−− 不健康な
美しい −−−− みにくい
良い −−−−− 悪い
● 活動次元
不安定な −−− 安定した
近い −−−−− 遠い
活動的な −−− 静かな
● 力量次元
硬い −−−−− 柔らかい
強い −−−−− 弱い
深い −−−−− 浅い

図1-3 SD尺度の基本3次元ごとの尺度の例

 しかし、色属性は、存在のデザインでも、誘目性、弁別性、識別性の点で極めて効果的なので、これらの目的のためにもよく使われる。消火器が赤色なのは、この3つをねらったものに他ならない。
 ただし、所有のデザイン目的だけを考慮した、過度でセンスなき色彩使用は、所有のデザインとしてはネガティブ効果をもたらすことがあるので要注意である。
 一方、形属性には、感性的な機能よりも認知・行動的な機能がより期待される。色形問題のように、事物の分類といった機能や、用具の操作を見せて適切な操作に誘導する(アフォードする)といった機能(図1-4参照)である。前者は、存在のデザインに、後者は、機能のデザインにつながる。
 このような観点からあらためて台所の用具を観察してみると、見事なまでに、多彩な形が自然に多彩な行為を導くように設計されているのに気づかされる。

図1-4 形で機能を見せる(形コーディング)例
(横溝・小松原、1987より)


●情報デザインという新たな領域の出現
 色と形によるデザインをハード・デザインと呼ぶなら、これに加えて最近は、ソフト・デザイン、あるいは情報デザインと呼ぶにふさわしい領域が出現している。
 所有のデザインなら、たとえば、包丁一つにしても、色形に加えて、誰がどこでそれを作り、それを使うことでどんな料理ができるのか、といった情報が用具に付加されることで、所有することの満足感が高まり、さらに、用具に物語性、すなわち、用具に自分なりの意味を付与するのに役立つ。
 存在のデザインなら、色形そのものが存在を示す情報デザインとなっているし、さらに、触覚や嗅覚に訴える情報なども付加することで、デザインのねらいをより効果的に実現できる。
 機能のデザインをねらった情報のデザインは、普通の生活用具ではほとんど必要がない。ただ、電子生活機器にとっては、情報のデザインは機能を見せるために極めて重要になってきている。これについては、第4章でまとめて考えてみることにしたい。

●引用/参考文献
・ 横溝克己・小松原明哲 1987 「エンジニアのための人間工学」 
日本出版サービス
・ D.A.ノーマン(野島久雄訳) 1988 「誰のためのデザイン?」 
新曜社

2.「使用性」をめぐって

●使用性を構成するもの
 使用性という用語は、usabilityの訳語として使われている。それは、図2-1に示すようにソフトウエアの品質評価の一つの観点となっている(黒須ら、1999)。

_ 使用性
   信頼性  効率  操作性
_ 保守性
   テスト容易性 理解性 更新性
_ 移植性

図2-1 ソフトウエアの品質評価の視点

 日常用具の使用性の意味は、当然、ソフトウエアのそれとは異なる部分が多いが、仕事を支援する道具という点では共通したところもある。
 そこで、本稿では、ソフトウエアの使用性の一つである操作性を一部含みながらも、やや広めの意味合いで使う。
 一つは、使いたい人が使えるかどうか(操作性に対応)、2つは、使いやすいかどうか(使い勝手)、3つは、気持ちよく使えるかどうか(使い心地)である。
 なお、図2-1の使用性の中にある、信頼性は、第3章の安全性のところで、また、効率は、第4章の機能性のところで取り上げることになる。
 これらの間には、図2-2のような階層構造を想定する。
図2-2 使用性の階層構造
●使えるか
 一般に人と物とのかかわりには、多彩な動作が関与している。たとえば、手の動作だけでも、

 「さわる 握る つかむ ひねる 取る
  つまむ はがす ちぎる 押す/引く 回す」

 いずれも、一定以上の力が必要である。
 高齢者の入口にきている筆者にとって、今一番の悩みは、ちぎったりはがしたりすることができない商品が多いことである。明らかにそうした力が低下しているためである。
 生活用具の使用には、こうした身体的な力のほかに、一定の習熟や器用さが要求されるものがかなりある。それが、使えない/使えるを分けることがある。
 生活用具は、子供から老人まで、あるいは、健常者から障害者まで、幅広い層が使う。普通の成人の力や習熟・器用さを想定した設計では、高齢者や子供や障害者では使えないことがある。力や習熟・器用さに関するバリアーフリーが求められが、安全性とのトレードオフもあり、難しいところもある。幼児が簡単にはがせるナイフのパッケージでは事故が起こってしまう。
 さらに、近年では、生活用具の電子化が顕著である。まさに、使えないという状況が頻発している。これについては、第4章の「機能性」のところで、包括的に取り上げるが、ここでは、ユーザ側の問題として、電子生活機器の使用意図の形成にかかわる問題だけを指摘しておく。
 一般の生活用具の習慣的な使用の特徴は、「--をしよう」という意図はあるが、「そのためには、あれこれをどの順でやろう」という手順計画なしにある。
 「洗髪しよう」(意図)ははっきりと意識するが、では、「容器からどのように液体を取り出して頭につけて洗うか」の計画は、ほとんど行き当たりばったりに、しかも自動的に実行される。それでさしつかえがないように、用具がデザインされている。
 こうした生活習慣の中に、手順計画の詳細をはっきりと意識化して行なわなければならない電子機器が生活用具として入り込んできたのであるから、使えないという苦情が発生するのも当然である。
 電子生活機器の使用に当たっては、まずは根本的なところで、用具使用にかかわる生活習慣に関する違いを認識してもらう必要がある。それも第1章で述べた情報デザインのいわば社会的な責任になっている。
 その上で、手順計画の意味や大切さをマニュアル(取扱説明書)などで訴えることになる。
 なお、関連して、電子機器が使えないのは、課題分割ができないためであるとする鈴木(2000)の所説を紹介しておく。
 鈴木によると、ユーザが電子機器を使用できないのは、図2-3に示すような形に、自分のすべき課題を分解できないためであるとする。というより、電子機器が、こうした課題分割を前提にその操作シナリオが作られているのである。そのシナリオに従えない/覚えられないがゆえの操作不能であると言う。
 こうしたかなり高度な知的作業を、たかが生活用具の使用にあたり要求することが好ましいことではないことは自明である。かくして、インタフェース問題が浮上してくることになる。これも第4章でまとめて取り上げてみる。













図2-3 課題分割の例


●使いやすいか
 生活用具の使いやすさは、形状の身体的な特性---物理的特性と生理的特性と運動的特性とからなる---とのマッチングと、用具使用の習熟度とによって決まってくる。
 前者はいわゆる人間工学的な研究の対象として、これまでに膨大な研究の蓄積があるので、たとえば、田村(1998)や各種の人間工学のテキストを参照されたい。
 後者の用具使用の習熟度に関しては、言うまでもなく、習熟度と使いやすさとは比例関係にある。形状が身体的な特性と多少は不適合であっても、習熟はそれをカバーしてしまう。さらには、用具そのものの使用さえ意識させなくなってくる(用具の透明性の獲得)。
 生活用具はほぼ毎日使用するし、使用を支援してくれる人々がいるので、習熟の条件は整っている。それでも、問題は2つある、
 一つは、習熟途中での使いにくさである。この克服に時間がかかったり、エラー、事故が起こるようだと、使用中止という事態になる。習熟のための教示に関する情報デザインの提供が必要となる。
 もう一つは、同じ目的の用具が、新製品になり、これまでとちょっと違う操作を要求するときである。「旧」に習熟しているほど、「新」のほんのわずかな違いが、使いにくさやエラー/事故に直結してしまう。そんなところでは、標準化が求められることになる。

●気持ちよく使えるか
 豊穣さは、人を、ただ所定の機能を果たせればよい(機能志向)から、気持ちよく使える(使い心地志向)へと駆り立てる。
 使い心地を左右するのは、感性である。
 感性とは、生活用具なら、肌触り、色合い、形状といった感覚情報に由来する、楽しい、心地よいといったポジティブ感情である。
 それは、生活用具にとっては、付加価値にすぎないが、明らかにマーケティングの主要な取り組み要素の一つとなってきている。
 しかし、感性の心的メカニズムも不分明だし、何が感性を刺激するのかに関しても、個人差、世代差、時代差もはなはだしいので扱いが難しい。
 さらに面倒なのは、出来上がったものに対する感性判断はありえても、あらかじめ感性を刺激するものを想定することが難しいことである。
 化粧品販売で行なわれているような、選択枝だけを用意して、感性判断は使い手にまかせるようなシステム(感性のカスタマイズ支援システム)の構築もありうるところかもしれない。


●文献
黒須正明・伊東昌子・時津倫子 1999 「ユーザ工学入門」 共立出版
小原二郎 1982 「人間工学からの発想」講談社
鈴木宏昭 2000 「ひらめくコツ」 海保編「瞬間情報処理の心理学」
(福村出版所収)
田村博 1998 「ヒューマンインタフェース」 オーム社

3.「安全性」をめぐって

●エラーから事故まで
 生活用具の使用には、エラーはつきものである。
 包丁を使えば、切り方を間違える。茶わんは落としてわってしまう。洗髪しようとしてリンスを使ってしまう。
 いずれも自分の意図した通りにならないという点ではエラーではある。そして、エラーをおかしてしまった自分へのもどかしさ、くやしさもあるが、事故としては軽い。
 一般に、エラーが事故につながるまでには、かなりの距離がある。この距離が近いのが、高齢者や幼児である。認知・運動能力と用具とのマッチング不良のための事故や、用具の目的外使用による事故が発生するからである。
 そこで、本稿では、生活用具をめぐる高齢者・幼児のエラー、事故をもっぱら想定した話になる。それらは、健常な成人でも発生頻度は低くなるが起こる可能性はあるので、話は一般性のあるものとなる。
 ところで、人がおかすエラーを分類する枠組にはいろいろあるが、ここでは、計画−実行−評価(PDS;Plan-Do-See)のそれぞれの段階で発生するエラーとして知られている、ミステイク(思い込みエラー)、うっかりミス(スリップ)、確認ミスを使う。
 なお、図3-1に示す、目標の取り違えエラーは、生活用具のように意図と目標とがいつもほぼ一致しているところでは発生しない。これが起こるのは、意図を達成するために、作業者の頭の中に作られる計画に自由度があったり、目標達成までにかなりの時間を要するため外乱によって意図とは違った目標が設定されてしまうときである。
図3-1 PDSサイクルとエラー
●思い込みエラーに対処する
 思いこみエラーは、状況の中にある顕著な手がかりによって駆動された既有知識が作る、状況解釈のためのモデル(メンタルモデル)が妥当でないときに発生する。
 状況認識力の低下と、豊富な既有知識を有しその運用が固定している人、たとえば、高齢者などにおいて、思い込みエラーは発生しやすい。人違いや、名刺の肩書きにだまされるなどなど。

図3-2 思いこみエラーの発生メカニズム

 生活用具は、「いつもと同じ」状況と密接に結びついている。包丁は炊事をする台所に、箸は食卓に置かれている。したがって、状況認識を誤って思いこみエラーをおかす恐れは少ない。
 ただ、いつもと違った状況が発生していたり、緊急の対応が求められるようなとき、あるいは、電子機器のようなわけのわからないものが生活の中に入り込んできたときには、妥当でないメンタルモデルが駆動されてしまい、思い込みエラーとなってしまうことがある。
 FAXを手紙の自動配送装置と思い込んで、排出された手紙(用紙)を何度も送ってしまったとの嘘のような話も聞いたことがある。
 思い込みエラーが決定的な失敗に直結するところでは、次のような方策をとれるようにしておく必要がある。

 ・状況全体をわかりやすいものにしておく
   整理整頓や表示を活用するなど
 ・判断や動作が自然に中断されるようにしておく
   引き出しなどに閉まっておく、人の助けがないと出来ない
ようにしておくなど

●うっかりミスに対処する
 日常生活の中では、用具を使った多くの行為は、習慣になっているので、ほとんど無意識的かつ自動的に行なわれる。
 すべてがいつもと同じならうっかりミスも起こらないが、状況と用具と人(認知・行動)の3項関係には、実はごく普通にギャップが発生していて、それが、うっかりミスを引き起こす。
 たとえば、包丁を使っている場面なら、次のようなケースである。いずれも、怪我につながる可能性が高くなる。

 ・状況と用具のギャップの例
   手をまな板代わりにして包丁を使う
 ・状況と人のギャップの例
   包丁を使っているとき子供に注意をとられる
 ・人と用具のギャップの例
   急いでいたのでいつもより切れる包丁を使った

 生活用具の多くは、健常者の成人による使用を想定して作られている。したがって、高齢者や幼児には、ごく普通に使っても状況や用具とのギャップが出来てしまう。
 幼児なら状況や用具からロックアウト(締め出し)してしまえばよいのだが、いつまでもロックアウトばかりでは、用具使用に習熟する機会を逸っしてしまうし、用具使用にかかわるリスク感覚が育たない。保護者と協同の下で少しずつ機会を与えていく必要がある。
 生活しなければならない高齢者では、ロックアウトというわけにはいかない。高齢ゆえの認知・行動の衰えに配慮した状況や用具の設計がどうしても必要となる。
 配慮の一つは、フールプルーフ(馬鹿なことをしないように/できないように)を組み込むことで、状況認識をより確実なものにすることを助けることである。たとえば、

 ・順序通りにしないと動かない(インターロック)
    例 電子レンジ 洗濯機の脱水や乾燥
 ・何かをしようと意図を意識したときにしかできないようにする
    例 押してからでないと回らないスイッチ

 ただ、日常生活の中では利便性とのトレードオフも考えなければいけないので、高い確率で事故が想定されるところでしか使えない。
 もう一つ、安全工学上の仕掛けとして、フェールセーフ(失敗しても大丈夫)もある。たとえば、

 ・ころんでも怪我をしないように、角のある家具には覆いをかけ
  ておく
 ・消し忘れても一定時間たつと自動的に消える
 ・見落としても音でわかるようにしておく
 
 こうした配慮は、高齢者の特徴である、わかっていてもできない---認知と行為のギャップ---を考えると、必須である。

●確認ミスに対処する
 思い込みエラーは、目標自体が誤っているので---誤った目標を達成すべく忠実に行為を実行しているので---、自らでそれが誤りと判断することはほとんど不可能である。周囲からの指摘が必要である。
 うっかりミスは、目的ははっきりと意識できているので、一連の行為が終わるまでのどの段階でも、その正しさをチェックできる可能性が高いし、ただちに、やり直し(redo)やご破算で願いましては(undo)を行うこともできる。
 さらに、指さし確認などによる確認支援の仕掛けを教えたり、確認表示を状況の中に作り込んでおくこともあってよい。
 ただし、火災の消火、危険回避など、状況の進行速度に訂正行為が追いついていけないような事態---時間圧が強い事態---ではミスの確認、対応行為の一瞬の遅れが事故に直結してしまうことがある。とりわけ、時間圧への対応能力が低下している高齢者は、確認はできても対処はできないという事態も発生する。こんな事態が想定されるときは、幼児と同じで、ロックアウトするしかない。


●参考文献
海保博之・田辺文也 1996 「ワードマップ ヒューマンエラー---
誤りからみる人と社会の深層」 新曜社
海保博之 1999 「人はなぜ誤るのか---ヒューマンエラーの光と影」
福村出版

4.「機能性」をめぐって

●機能性は用具のかなめ
 用具が用具たる所以は、それがなんらかの機能を果たすからに他ならない。
 用具が開発された初期段階では、機能性は、その目的をどれくらい効率的に果たしたか、つまり用具の性能だけが問題とされる。包丁ならよく切れるかどうか、洗濯機ならよく落ちるかどうかである。しかし、次第に、次のような2つも、機能性として問題となってくるのが常である。
 その一つには、機能が「みえる」かどうかである。時折、存在のデザインや所有のデザイン(第1章参照)が優勢な生活用具もあるが、多くの生活用具は、その機能がどんなものかは推定ができるようデザインされている(機能のデザイン)。
 さらに、一つの用具で、どれくらい多彩なことができるかも問われる。リンゴだけではなく、ときには紐も切れるような包丁かどうかである---その良し悪しは別として---。これは、用具の多機能性ということになる。
 用具の機能性というときは、このように、性能以外にも、機能のデザイン、多機能についても考えてみる必要がある。ここでは、もっぱら、電子レンジなどの電子生活機器を想定して、機能性のこの3つの側面について考えてみる。

●性能を高める
 用具の性能は、用具そのものと、使い手の力量との積で決まる。切れ味が鈍い包丁でも力を込めれば切れる。しかし、用具は、楽ができるように、使い手の力量をできるだけ減らす方向に進化してきた。
 電子生活機器の場合も、基本的には事情は同じである。機器そのものの性能の向上が著しく、使い手側の身体的な力量による性能の向上を期待する余地はほとんどなくなった。使い手の力量に関するバリアーフリーが実現したとも言える。ボタン一つ押すだけで膨大な量の洗濯ができてしまう。
 この点は好ましい状況なのだが、機器の機能がみえない。さらに多機能になったことに伴って、別の形の使い手側の力量、すなわち、知力が求められるようになってきた。
 知力のないユーザは、用具の性能の向上を享受できないのは、用具一般の進化の方向を逆転させるものであるだけに、性能向上への努力にも匹敵するくらいの多大な努力が払われてきた。これが、後述するようなインタフェース技術として実現してきた。

●機能をみせる
 かつては想像することさえできなかった機能を持った電子生活機器が増えてきたこともあって、外形による機能デザインだけでは充分に機能を見せられないという問題が発生してきた。
 仮に、外形からそれが何をするものかは推定はできても、どのようにその機能を使うのかは、少なくとも外形からはまったくわからないということがごく普通に発生してきた。
 電子レンジの外形には、温めることを推定させる手がかりはまったくない。
 ここで、再び、第1章で述べた情報デザインのもう一つの領域が生まれることになった。つまり、機能を言葉や絵でみせるというやり方である。
 その一つは、画面あるいは操作盤のデザインである。コマンド方式からメニュー方式へ、言葉からアイコンへといった進化をとげながら、知力フリーなインタフェース作りの努力がなされてきた。
 もう一つは、マニュアル(取扱説明書)である。機器の外で、どんな機能があるか、さらにどのように操作するかを説明するための情報を提供しようというものである。
 マニュアルは操作を支援する情報の提供が主であったが、生活用具の電子化は、マニュアルに、こうした新たな支援機能を要求するようになってきた。これをマニュアルの理解支援機能と呼んでおく。
 ちなみに、マニュアルには、次の5つの支援機能があることを確認しておく。

・操作支援 操作の仕方を教える
・理解支援 どんな機能をどんな時に使うかを教える
・参照支援 どこにどんな情報があるかを教える
・動機づけ支援 マニュアルを読んでみようという気持ちにさせる
・学習記憶支援 操作や機能を覚えてもらう

 画面/操作盤デザインもマニュアルも、一定の進化をとげてきたが、メタ・インタフェース問題とも言うべき問題、つまり、理解や操作を支援してくれるインタフェースの言葉や絵そのものが理解できないという新たな問題を発生させてしまった。
 これを克服するためのインタフェースの基盤技術として、グラスボックス(透明)化が開発されてきた。
 これは、機能・仕事そのものが「透けてみえる」ようにするものである。文字通り、パイができるのをガラス越しに見えるようにするということもあるが、電子機器の場合は、するべき仕事・機能が画面や操作盤で直接見ることができるようにすることである。「温める」のか「沸かす」のかが表示され、そこを押せば目的が果たせるようになっているのが、グラスボックス化の卑近な例である。

●多機能でも使える
 電子機器には、実にさまざまな機能を組み込むことができる。電子炊飯器でも、時間がないときの高速炊飯、保温、朝起きたてに炊けているように(予約)、などなど。
 このような、なんでも実現できる多機能性が、電子生活機器を使いにくくしているのは周知の通りである。
 その最も大きな理由は、前述したように、機能や使い方が外形としてデザインされていない/できないということにある。
 言葉とアイコンでは、使い手側の知力への負担が大きくなる。自動車の運転免許取得システムのような負担を、たかが生活用具の使い手側に要求するわけにはいかない。
 これを解決するために、ゲーム機のように、徹底した単機能(モジュール)化をはかったり、長い系列的な操作の単純化---ボタン一つをワンタッチで---をはかったりする方向での解決がなされてきている。

●生活者に語らせる———終わりに際して
 たかが生活用具ではあるが、その使用頻度の高さやそれが作り出す日常的な生活環境を考えると、「たかが」と言っていてはいけないところもある。
 というわけで、デザイン性、使用性、安全性、機能性の4つのキーワードを設定して、認知工学の視点から、生活用具の開発・評価にかかわる話をしてみた。
 多彩な人々が多彩な認知・行動を行っている生活場面での用具の開発・設計では、きちんとした視点を定めて、生活者(ユーザ)と用具とのかかわりをとらえることが必要だと思ったからである。
 その上で、図4-1に示すような、認知心理学の諸技法を援用したユーザビリティ・テストまで行ってみれば、さらに貴重な知見が得られる。
 この図において、縦軸の「遂行」とは、できるだけ速く間違えないようにという制約で行われるテスト、「過程」とは、自己ペースで所定の課題の解決をするまでの時間過程を見るものである。
 横軸の「行為」と「内省」とは、身体的な行為を観察対象にするか、課題を解決しているとき/終わったとき、自分の心の中で起こったことを語ってもらうものである。
図4-1 ユーザビリティ・テストの類型

 それぞれの例を簡単に紹介しておく。

・プロトコル分析 心の中で起こっていることを実時間で語らせる
・生理計測 眼球運動や心拍などの生理指標を計る
・評定法 SD法のように一定の尺度について主観的に判断させる
・力量検査 限られた時間内にどれだけたくさんできるか

●参考文献
海保・原田・黒須 1991 「ワードマップ 認知的インタフェース」
新曜社
海保・加藤編 1998 「認知研究の技法」福村出版



出てくる、出てくる、食べ物

2018-03-30 | 癌闘病記
食べるものもつきた。
そろそろかと思いきや、
あちこちにまだかなりの食べ物があることを発見。
今朝は、
きんぴらごぼう
ブロッコリー
イワシの味噌煮
みそ汁
のり

もう一食くらいは、なんとかなりそう。
飽食ジャパンだなー

過去1週間の閲覧数・訪問者数とランキング(日別

2018-03-30 | Weblog
過去1週間の閲覧数・訪問者数とランキング(日別)
日付     閲覧数     訪問者数 ランキング
本日 リアルタイム解析
2018.03.29(木) 2359 PV 426 IP 1262 位 / 2815789ブログ
2018.03.28(水) 2303 PV 467 IP 1123 位 / 2815523ブログ
2018.03.27(火) 2072 PV 429 IP 1287 位 / 2815370ブログ
2018.03.26(月) 2259 PV 428 IP 1303 位 / 2815156ブログ
2018.03.25(日) 4472 PV 596 IP 958 位 / 2814949ブログ
2018.03.24(土) 2281 PV 441 IP 1553 位 / 2814784ブログ
2018.03.23(金) 1915 PV 525 IP 934 位 / 2814674ブログ

愛読感謝です


10年前の今日の記事

2018-03-30 | 認知心理学

自著であるが、古本のほうがはるかに高い
売りたいが手元にはもう2冊しかない
持っていればよかったなー

27.
漢字を科学する 海保 博之 (- - 1984/11)
4 点の全新品/中古商品を見る ¥ 4,780より

28.
漢字情報処理の心理学 海保 博之 野村 幸正 (- - 1983/1)
1 点の新品/中古商品を見る ¥ 6,600より

冷蔵庫、冷凍庫の中がからっぽ!

2018-03-30 | 癌闘病記
また来週には投与がはじまのだが、
抗がん剤から解放されて3週間目。
ルンルン気分。
ところがそれがいけなかった。

冷蔵庫を開ければ食べものがあり、
食卓にはお菓子などが常置。

さらに、なくなるだろうと思って、通販注文したのだが、
その到着日来週の土曜。日付を間違えてしまったのだ!!!

当然、底をつく。つきました。!
ただ、お菓子はまだ豊富にある。
でも栄養不足が心配
今日は、盛大に買い物と外食だなー

人間は知識を通して世界を見ている]名言の心理学

2018-03-30 | 名言の心理学
人間は知識を通して世界を見ている。
だがそこに映っているのは真の姿なのだろうか。
(畠山直哉)
@@@@@@@@@@@@@

写真家の言葉だけに重みがある。
「自分がいなくともこの世界は
存在し続けていく」という感覚が風景をみて
「いいな」と思わせるのだとも言う。
知識は世の中を素直にみることを妨げるのだ。
それを解放してくれるのが映像なのだとも言う。