ひよひよ日和、書き日和

並がいい……けど大盛でっ。
リボ話中心……だったけど今はうたプリかもっっ。

イーピンとヒバリさんと沢田さん

2009年09月24日 |   小話-初恋?
 小学生一年生イーピン(もうすごい喋れるよ)とヒバリさん





   いつか勝ちます! ……たぶん、きっと!


 もう今のが何度目なのか、攻撃された数、かわした数、避け切れなかった数、最初から数えていたのに、数え切れなくなってきた。
 ほんの数分のことなのに、息があがる。
 ダメだ、まだまだ修行が足りない。
 そんな、ことを、考えたのを見抜かれたように、耳元で風を切る音がした。トンファーがすれすれのところをかすめていった右。視線を右に流した瞬間、とん、とトンファーの先で喉元を叩かれた。触れるように、軽く、突かれた。
「……え?」
 と思ったときには、すぐ、目の前に、横殴りのトンファーが見えた。見えただけで、かわすことはできない。
 そこでやっと、あの右は囮だったのだと、気が付いた。
 ほんとに、まだまだ修行が足りない。
 目の前のトンファーがどこを狙ってくるのか想像もつかない。頭、首、胸。どこに来るのかわかったところで、防御は追いつかない。ひゅ、と息を飲んで、
 諦めて目を閉じた。
 すぐに来るはずの衝撃を覚悟する。
 衝撃は、頬に、来た。
 むに、とつままれた。
 つままれ……。
「え?」
 目を、開ければ、頬をつままれていた。
 ヒバリさんの、指先、に。
「ええええ!?」
 反射的に、ぱし、とその手を払って飛び退いた。
 ほっぺ、を。
 つままれた、つままれた、つままれた。
 つままれた頬を撫でる。
 一戦交えている最中だったのに、つままれた。
 ……そっか、ヒバリさんはぜんぜん……。
 本気じゃない。
 その現実に、奥歯を噛み締める。うつむきたくなんかなかったのに、うつむこうとしたとき、ランボが、今の今まで隠れていたスベリ台の影から飛び出してきて、イーピンいじめるなーって叫びながら手榴弾を、ぽい、と投げた。
 放物線を描いた手榴弾はヒバリさんめがけて飛んでいく。ヒバリさんはそれを一瞥しただけで、トンファーで、こん、と打ち返し、た。
 手榴弾はまたきれいな放物線を描いて、ランボのところまで戻る。
 ……ぐぴゃ! ってランボが声をあげたのと、手榴弾がランボの頭上で爆発したのが同時だった。
「ランボ!!」
 駆け寄って、ちょっと面倒くさいなあと思いながら泣き喚くランボをなだめる。
「もー、手榴弾とか投げちゃダメって沢田さんにも言われてるじゃない。ランボ以外にあたったらどうするの」
 イーピンその言い方ひどい! ってまた泣くから、ハンカチで涙を拭けば、ハンカチは爆破の煤で真っ黒になった。
 真っ黒になったハンカチを、真っ黒になったなあ、と眺めていたら、
「ねえ」
 かけられた声にあわてて振り向いた。
 そうだ、ヒバリさんと……。
 ……ヒバリさんにまた負けちゃったところ、だった。
 僕もう帰るよ、とおもしろくなさそうに言うヒバリさんは、足元にランドセルを見つけて拾い上げる。
「それ、わたしの」
 ぴかぴかの、沢田さんのお母さんに買ってもらったばかりの赤いランドセル。
 ヒバリさんはそれを投げて寄こそうとしたのをやめて、わざわざ手渡して、くれた。
 ありがとう、ございます。おず、と見上げれば、
「君、遅いよ」
 端的な言葉、は。
 きっと、さっきの、あの攻撃が囮だと気付くのが遅すぎる、と。
「はい」
 それから、
「早すぎる」
 諦める、のが。
「……はい」
 自分の未熟さと一緒に、ランドセルを抱き締める。
「次はもうちょっと楽しませてよね」
「が、がんばります」
「うん」
 じゃあまたね、と並盛公園を後にするヒバリさんは、ブランコのところで今度はランボのランドセルを拾った。一緒に買ってもらったのに、もう傷らだけの黒いランドセル、を。これ誰の? と聞くので、ランボのです、と言ったら、ヒバリさんは今度はその場所から力任せにランドセルをランボに投げ付けた。
 ランボはすごい勢いで飛んできたランドセルを受け止め切れなくて砂場に転がり込んでまた泣く。
 ランボにかまってるうちに、ヒバリさんはいなくなってた。
 ランドセルを背負い直して、ランボの手を引っ張った。
「ほらランボ、帰って一緒におやつにしよう」



「あのね、雲雀さんと戦うとかやめて危ないから、イーピン女の子なんだから、ほんとやめて」
 家に帰っておやつを食べて居間で宿題をやっていたら、帰ってきた沢田さんに手の甲の打撲跡や、額のかすり傷を目ざとく見つけられて、おこられ、た。
「怒ってないよ」
「はい、ごめんなさい」
 沢田さんは怒ってるんじゃなくて、心配、してくれる。
 鉛筆をひざの上で握り締めてうつむくと、頭を撫でてくれる。
「あ、そこの足し算違ってる」
 宿題を教えてくれる。
「ダメツナもひとの勉強が見れるようになったか」
「おれにだって小一の算数くらいわかるよ!」
「そりゃ成長したもんだな」
 通りがかりのリボーンにからかわれても、
「ツナー、イーピンばっかいいこいいいこしてないで、次はおれっちと遊べー!」
「おまえは宿題終わったのか」
「なにそれ、そんなのないもんね」
「ないわけないだろ、イーピンと同じクラスだろ」
「ツナだって宿題きらいだもんねー。おれっちもきらいだもんねー」
「そりゃ嫌いだけど、ってそーじゃなくて」
 遊べ遊べとランボにまとわりつかれても、宿題が終わるまで一緒にいてくれる。
「沢田さん、次はいつお師匠さまくるか聞いてますか?」
「え、風さん?」
 以前、沢田さんの試練で来日した師匠は、それからも何度か日本にきた、から。だから。
「んー、どうだろう。リボーン、連絡取ってるんじゃないの?」
「取ってねーぞ」
「……だってさ」
 わかんないや、と沢田さんは肩をすくめる。
 師匠がいたら、新しい技を教えてもらえるのに。しょんぼりすると、いつまでも赤ん坊の姿のリボーンは、身軽にぴょんとテーブルに乗った。
「新技なんか教えてもらわなくても、すげー技があるじゃねえか」
「すげえ、技?」
 小首を傾げると、テーブルの向こう側で沢田さんも、そういえばあったよねえ、と頷いた。
「餃子拳のことですか?」
「じゃなくて、ほら、ぴんず……」
 と言いかけて、沢田さんは、ふと、リボーンと顔を見合わせた。
「あ、そっか」
「そうだぞ」
「そっか、なんかおかしいと思ったら、そうなんだ」
 沢田さんはなにかを納得する。
「たしかまだ封印してないよねえ?」
「もっと先の話だぞ」
 うんうん、だよねそーだよね、とまた沢田さんは納得する。
 リボーンは部屋を出て行った。リボーンの背中を見送っていると、
「イーピンさあ」
「はい?」
 テーブルに頬杖を着いて、沢田さんは、いやおれが口出すことじゃないんだけどでもあのさ、となんだか、なにかを懐かしむような顔をした。
「雲雀さんに勝たなきゃいけないわけじゃないんだよ?」
「え?」
 ちょっとだけ、まばたきを忘れたのはびっくりした、から?
 でも、なににびっくりしたのかわからない。だって、
「あの、わかってます。というか、勝てないし」
「うん、だからさあ」
「だから、勝ってみたいだけ、です」
 一回くらい。
「わたしだって修行してるのに。負けっぱなしはイヤです」
「うん、だから」
 だから……。
「わたし……」
 握り締めていた鉛筆を、テーブルに置いて、その勢いで立ち上がった。
「わたし、ちょっと山に修行に行ってきます!」
 そうだ、修行しよう、もっとしよう! お師匠さまがいなくっても、ひとりでも。
 勢いのまま部屋を飛び出そうとしたら、ものすごい勢いで沢田さんに捕まえられた。
「待って待ってちょっと待って! じゃなくて。そーじゃなくてっ。なんで、どーしてイーピンはそんなに勝ちたいの」
「だって、ヒバリさん強いんです」
「そうだね、それはそうだね。もっともだね。でもあのひとのは趣味だから、マニアなだけだから。ほっとけばいいんだよ。イーピンがムキにならなくても」
「でも、そうしたら……っ」
 言いかけて、はっとした。
 ……ヒバリさんは、わたしと戦いたいわけ、じゃない?
 弱いし、手加減しないといけないくらい、だし?
 でも、だからって、
 ……だからって。
 沢田さんの言うように、ほっといたり、したら。
 ヒバリさん、と、の、
「……接点が……」
「ん?」
 沢田さんは、聞こえなかったのか聞こえない振りをしたのか、なあに? という顔をした。
「あの、だから」
 せ、ってん……。
 ヒバリさんは、戦ってるときは、一緒に戦ってるんだから一緒にいる、し。そのときだけは、なんだかちょっと楽しそう、だし。
 だから……。
「やっぱり、勝たなくちゃ。……いつまでもヒバリさんに勝てないような草食動物じゃ、そのうちに飽きられちゃいます。そんなふうに捨てられるのはイヤです」
 そう、だから勝たなきゃ。
 と、言うと、沢田さんはばったり床に突っ伏した。
「イーピン、母さんとビアンキが録り溜めしてる昼のドラマ一緒に見るのやめなよ」
 イーピンにはまだ早いよ! なになんなのそのセリフ!! 
 泣き出しそうな声に、沢田さん? と声をかければ、
「イーピンは、雲雀さん怖くないの? おれは実はいまだにちょっと怖いんだけどなあ」
「……怖い?」
 沢田さんがなにを言っているのかわからなくて、小首を傾げると、沢田さんは突っ伏したままもう一度、こわくないの? と聞いてきた。
 こわくないです、と、答えた。
「だって、ヒバリさん、やさしい、です」
「……へ、へえ」
 どこが!? と突っ込みたい顔をしたけれどここはあえて突っ込まず、そ……そうなんだ? とどこか納得いかない様子でなんとなく視線をそらした沢田さんを不思議に思いながら、
「ランドセル……ランボのぼろぼろのランドセルは雑に扱っても、わたしのランドセル、丁寧に返してくれました」
「イーピンはランドセル大事にしてるから、まだぴかぴかだよね」
「はい、沢田さんのお母さんに買ってもらった宝物です」
「うん」
「……それから」
「……うん?」
「それから、またねって、言ってくれまし、た。だから」
 だから……。
「次は勝てるようにがんばりますっ」
「うん」
 よっこいよと起き上がって、沢田さんは、テーブルに転がっていた鉛筆をはいと渡してくれる。宿題やっちゃいなよ、と言うわけではななくて、わたしの鉛筆だから、わたしに返してくれる。
「イーピンがそう言うなら、戦っちゃダメって言いたいけど言わないようにする。あとね」
「はい?」
 沢田さんは、もう一度、さっき言ったことを繰り返した。
「雲雀さんに、勝たなきゃいけないわけじゃないから、ね」
 ってあれ、おれさっきも同じこと言った?
 沢田さんは首を傾げたから、意図して二度言ったわけじゃないみたい、だった。
 でも、二回、言われた。
「おれはさ」
 それから、なんでもないことのように付け加えようとしたから、なんでもないことを聞くつもりでいた、のに。
「ほんとに、いったいいつから戦うことが目的になっちゃってたのかナゾなんだけど。まあそれはいいとして、勝つとか負けるとか関係なくてさ」
「はい?」
「ただ好きなだけでもぜんぜんいいと思うよ?」
 ばっきり、と。
 沢田さんがさっき間違いを教えてくれた算数の問題、直そうと思った鉛筆が、折れた。
「ていうか、そっちの感情のほうが大切だと思……」
「ねえ」
 沢田さんの言葉をさえぎったのは、
「わあ! 雲雀さん!?」
 窓から、ヒバリさ……ん。
 頼みますから玄関から入ってきてください、という沢田さんを無視して、
「これ、あげる」
 と言うから、差し出されたものを差し出されるままに受け取ったら、白いハンカチ、だった。
 キレイなハンカチ。
 ハンカチを、ハンカチだなあと思っている間にヒバリさんはいなくなってて、
「なんでハンカチ?」
 わけがわからなくてぼんやり首をかしげた沢田さんが、どこからか、ボンッ、と爆発するような音がした後、ぎゃあ! と叫んだ。
 なにが、ぎゃあ! なのかわからない、けど。なんだか顔が熱い。ぽやっとする。
「お」
 エスプレッソのカップを手にして部屋に戻ってきたリボーンが、
「なんだ、なんかしらねーが復活したじゃねーか」
 筒子時限超爆。
 と、続けた。
 こちらを見てにやりと笑う。それから、沢田さんを蹴飛ばした。
「のんきにしてねーで、はやくイーピンをぶん投げねーか。もう五筒だぞ」
「のんきになんてしてないよ!」
 いろいろびっくりして腰抜けたんだよ!
 沢田さんが四つん這いで近付いてきて、近付いてきたなあと思ったら、
「イーピンごめん!」
 がしっと頭をつかまれて、そのまま振りかぶって、思い切り、投げられ、た。
 沢田さんの部屋の窓から投げられて空を飛びながら、
「ちょ、なに、あの技って五歳児当時のミニマム姿がデフォなの!? なんで九筒現れるとともにミニマムイーピンになってんの!? びっくりだよ! 最近やっと前髪とか生えてきたのに! 大人イーピンときどんなだったっけ!?」
「投げやすくてちょうどよかったじゃねーか」
「そういう問題じゃないよ。てか、あの技、雲雀さんの前で発動しないんじゃ意味なくない!?」
「ヒバリには、イーピンのおでこに九筒が現われたら抱きしめるとおもしれーことになるぞって言っとけ」
「言えないよ! さすがの雲雀さんでも死んじゃうよ!」



 ぼふ!!
 って、耳元ですごい音がしたような、してないような……したような。
 気が付くと見慣れない街並みの真ん中にいた。
「あれ?」
 ぺたんと座り込んだ自分の周りを見ると、地面がえぐれて、まるで爆発の跡みたいだった。
「……あれ?」
 ぷは、と息を吐き出すと黒い煙が出てきて、なんだか頭のてっぺんからも煙が出てる。ランボがまた手榴弾でも投げたのかな?
 ランボ、と、手榴弾。
 はっとしてポケットを探ると、真っ黒なハンカチと、真っ白なハンカチが出てきた。
 ヒバリさんがくれた、ハンカチ。
 握り締めて、えへへ、と笑う。
 帰ると、玄関先で沢田さんが、おかえりー、と出迎えてくれた。
 沢田さんが出迎えてくれる理由も、裸足で外にいた理由も、そもそも突然外にいた理由もよくわからなかったけれど、
「ただいま、です」
「んー、すっきりした顔してるね。よかった」
 よっかた。大切なこと、ちゃんとわかったみたいで、よかった。
「はい」
 目の前には、頭を撫でてくれる沢田さんがいて、ポケットにはヒバリさんがくれたハンカチがある。
 周りには、やさしいひとたちばかり。
 大好きな、ひとたちばかり。
 宿題をやったら、修行をしよう。
 がんばったら、すごくすごくがんばったら、勝てるかもしれない。
 接点、よりも、大切なものが、もっと大切になるように。そこのところは忘れちゃわないように。
 うん……。勝負よりも大切なこと。
 でも、勝負だって、大切。
 大切なものがたくさんになっていく。
「イーピン、ハンカチ、母さんにアイロンかけてもらうといいよ」
「はい!」
 宿題をやって、修行をしよう。
 ヒバリさんに、それからもっといろいろなものにも、勝てるように。




-----------------------------------------------------------------------------


 風さんとイーピンをプッシュしてたのに、アニメ見たら
 師匠→イーピン→雲雀さん(勝手な矢印方向)にもひゃもひゃしました。
 でも書き上がったら、イーピンと雲雀さんてか、イーピンと沢田さん。


コメント   この記事についてブログを書く
« そんなこと言われても…。 | トップ | なかなか。 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

  小話-初恋?」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事