hiyamizu's blog

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藤田紘一郎「血液型の科学」を読む

2010年03月22日 | 読書2

藤田紘一郎著「血液型の科学 かかる病気、かからない病気」祥伝社新書、2010年2月、祥伝社発行を読んだ。

裏表紙にはこうある。

日本人は「血液型」の話が大好きだ。一方で、学者たちは「血液型診断に科学的根拠はまったくない」という。
 もちろん、血液型によって人の性格や運命がすべて決まるわけはない。けれども、血液型を決めている「血液型物質」は、血液のみならず、腸や骨などの体中の組織に含まれている。
そのことから、血液型ごとの免疫力の差、ひいては、血液型によってかかりやすい病気・かかりにくい病気や、合う食物・合わない食物があることを証明できるのだ。
「血液型」が生まれた歴史から、血液型別の病気対策まで――これまでにない「科学的」な血液型の世界。



血液型が科学的でないと言われる遠因は、1924年ドイツの学者が「知識人にはA型が多く、犯罪者にはB型が多く、猿や羊もB型が多い。B型の少ない白人は多いインド人より優位であると発表し、人種差別の一因となったことにある。(ちなみに、私はB型です)

国、地域によって血液型の分布は異なる。日本ではA型38%、O型31%、B型22%、AB型9%だが、韓国はABが13%、ボリビアはOが93%、インドはBが40%。アメリカ人(白人)の45%がO、41%がAなので、アメリカでは血液型占いは流行らない。

血液型は血液自体の型ではなく、血液に付着する糖鎖と呼ばれる「血液型物質」であり、細胞や、胃、腸などにある物質だそうだ。

植物も、細菌もABO式血液型を持っている。

(ここらあたりまでは、信頼できるのだが、これ以降はだんだん著者の独断が強くなる。)

人類の直接の祖先ホモ・サピエンスは10万年前にアフリカで誕生し、全員がO型だった。農耕民族となりA型が生れ、遊牧民族となりB型が生まれた。AB型はごく最近の1000年前に生まれた。

私達の食べる食べ物にも血液型物質がある。

例えば、A型物質だけであるブタ肉をB型の人が食べたとします。ブタ肉のタンパク質は、十分消化しきれないでおおきなペプチドの固まりのままで体内に侵入してきます。B型の人は血清中に抗A抗体をもっていますから、抗A抗体とブタ肉のペプチド中のA型物質は当然「抗原・抗体反応」を起こすはずです。



このように、著者は、「B型の人は、A型物質を多く含むブタ肉が体に合わない可能性があるのです」と主張する。
(私ももちろん、その可能性はないわけではないと思うが、直接的証拠はない現状で、こんなとんでもない事を本に書くのはいかがなものかと思う。)
さらに、著者は、AB型の人は、梅毒にかかりやすいと、一冊の本を挙げただけで結論し、血液型によりかかりやすい病気をあげていく。



私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)

前半はまともだが、後半は推測の上に推測を重ねていく。もちろん、著者の言うような傾向はあるのかもしれない。しかし、例えば

「A型の人は一般的に免疫力が弱いので、感染症全般にかかりやすく、がんに対しても抵抗力が弱くなります。」


と結論づけるのは、おかしい。その根拠もさることながら、血液型によりどのくらいの差があるのか、など数値を示さないでセンセーショナルに決めつけるのでは、「ドンデモ本」と決めつけられてもしかたない。

根拠についても、著者は、「AOB式血液型を決定する遺伝子は、乳がんになりやすくする遺伝子の近くにあり、不安や覚醒をもたらす酵素の遺伝子もその近くにある」という。このことから、血液型が病気になりやすさや性格に関係すると著者は推定している。乱暴な話だ。



藤田紘一郎は、1939年、中国・旧満州生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
東京大学医学系大学院修了。医学博士。東京医科歯科大学医学部名誉教授。
人間総合科学大学人間科学部教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。
『笑うカイチュウ』(講談社)、『原始人健康学』(新潮社)、
『日本人の清潔がアブナイ!』(小学館)、『免疫力を高める 快腸生活』(中経文庫)
など著書多数。



著者は、かって、体内に回虫を飼っていて、その毒素でアレルギーが防げると主張し、清潔すぎる環境は人類のためにならないと警告していたが、あのときは、確かにそんな可能性もあるなと思い、ユニークで貴重な先生だと思っていた。しかし、今回は論旨がかなり乱暴すぎる。

私も子どもの頃はお腹の中に回虫を飼っていた。今でも、虫下しを飲んだら、トイレに15cmくらいの白い回虫が出てきた光景を思い出す。回虫が懐かしい方、回虫なんて知らないという方は、世界で唯一の寄生虫専門博物館「公益財団法人目黒寄生虫館」をごらんあれ。入館料無料で、最近は隠れたデートスポットになっているという。

財団法人でありながら、設立以来、50年余り、国や自治体などの補助は受けず独立採算制による運営を維持している。私は以前訪れたときは、「褒めてとらす」とばかり、募金箱に大枚を入れてきた。天下り、税金無駄遣いの財団法人が多いなか、立派だと思う方は、ご寄付を!


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