hiyamizu's blog

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若桜木虔『 ミステリー小説を書くコツと裏ワザ』を読む

2016年10月18日 | 読書2

 

若桜木虔(わかさき・けん)著『 ミステリー小説を書くコツと裏ワザ』(2016年6月5日青春出版社発行)を読んだ。

 

本書はまともなミステリー小説を書くための指南書ではなく、一次審査を通る新人賞応募作を書くためのポイントを示す本だ。

 

応募には膨大な数の作品が集まるので、特長が際立つ作品でないと選ばれない。しかも、選考者は、大部分は駄作の多くの作品を読まねばならないので、ともかく落とそうと、読み始めから欠点探しを始める。「予選落ちさせるために読む」のだ。

平凡な内容が続くと、早々に没にする。たとえ特長があっても、ありがちな欠点があると一時選考ではねられてしまい、まともに読んでもらえない。

 

印象的な冒頭で、読み手の期待をポジティブに裏切る。選考委員の駄作との先入観を根底から覆すための、印象的な冒頭を工夫することは必須。

 

選考委員が、魅力的だと思うように(キャラが立つ)人物造形する。このためには一人につき最低でも150枚が必要。

 

文体に凝るよりも、台詞に凝る。

地の文を全く読まないで台詞だけを読んでも、誰が、そういう心情で喋っているのか、が明確にわかるように書くことである。

黒川博行氏の作品の会話をよく読んで、サイドラインを引いたり、書き写して、勉強すること。

 

地の文(風景描写)が上手い志水辰夫氏の作品を勉強すること。

 

斬新なトリックを生みだすに、まず考えなくてはいけないのが、“前代未聞の奇想天外な舞台(殺人事件の現場など)だ。

 

主人公は常にノーミスで行動しなければならない。・・・陥るピンチは、ノーミスでも免れられない不可抗力によるもので、犯人が逮捕されるのも、やはりノーミスで行動したにも拘わらず刑事にトリックを見抜かれ・・・というように構成したい。

 

新人賞受賞作家の9割は、受賞から5作目を出すまでに文壇から消える・・・。

 

初版印税はせいぜい50万円。しかし、映像化されれば、原作本はそこそこの小ヒットになる。TV脚本家は、主婦のアルバイト程度の収入で、満足な取材もできず、安かろう悪かろうとなり、低視聴率に陥った。TV業界はヒット作になりそうなミステリーの原作本(時代劇は製作費が高い)を必死に探している。

 

ドラマ化を想定して「ヒット作を書きたければ、美女・美少女を活躍させよ」

 

古書に関する蘊蓄、珈琲の蘊蓄などあまり一般人には知られていない“趣味的な知識”を掘り下げて突っ込む手法は、新人賞狙いには有利に働く。

 

弱い女(男を頼る女)は書きやすいので応募作には多くなる。したがって、選考委員には“強い女”が好まれる。

 

現在、SFは壊滅的に売れておらず、『このミステリーがすごい!』大賞以外の新人賞はSFでは無理。

 

警察内部の情報を知るには、濱嘉之(はま・よしゆき)氏の小説を読んで勉強するのがよい。

 

身代金誘拐事件ミステリーの傑作は、『大誘拐』、岡嶋二人『99%の誘拐』・『明日天気にしておくれ』、連城三紀彦『造花の蜜』、柳原慧『パーフェクト・プラン』、黒川博行『二度のお別れ』、若桜木虔『修善寺・紅葉の誘拐ライン』

 

 

若桜木虔(わかさき・けん)

1947年、静岡県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。

読売文化センター町田教室、NHK文化センター町田教室にて小説家養成講座の講師を25年以上務め、40名以上の生徒をプロ作家としてデビューさせている。

大学在学中より執筆活動を開始し、作家としても活躍。ミステリー、時代小説、漫画原作、SF、アニメなどのノベライゼーション、ゲームブック、実用書など、筆名を使い分けて800冊以上の著作がある。

『修善寺・紅葉の誘拐ライン』

 


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

題名から見ても、ミステリー小説を書くつもりのない人には全く関係ない本だ。また、一次審査を通るコツに絞っているので、その前段のミステリー小説をいかに書くかには直接触れておらず、他の本を勧めている。

 

ともかく書く気があって、何本かミステリーを書いたが、一次審査にはまだ通っていない人が対象の本だ。私のようにミステリー・ファンではないが、書く側の実状に興味のある人にはカスル本だ。

 

膨大な数の新人賞応募があり、確かに選ばれるのは大変なことらしい。選定する側の出版社の手数も大変だし、選んでも、その多くは儲かるには程遠く、さらに2作目が続かず、本格的作家誕生は稀有なことだとわかった。

 

 

目次

PART1 読みだしたら止まらないストーリーづくりのコツと裏ワザ

・読者を引き込む“予想を裏切る展開”のつくり方

・魅力的なストーリーには、必ず「意外な殺人動機」がある。

・印象的な冒頭で、読み手の期待をポジティブに裏切る

・回想やカットバックを避けたほうが、面白いミステリーになる理由

・ワンランク上のストーリーになる「ドンデン返し+ドンデン返し」

・先が読めないミステリーには“視点の均一化”が欠かせない

・ストーリーを面白くするための「大嘘のつき方」

 

PART2 誰もがハッと驚くトリックづくりのコツと裏ワザ

・斬新なトリックを生み出す“後付け発想法”

・小説全体の完成度はトリックの出来で決まる

・新しい密室トリックを作るコツは、“開かれた密室”にある

・やってはいけないアリバイ・トリック

・「スケジュール表」は、目新しいトリックを考えるときの必需品

・スケールの大きなトリックづくりに役立つ5つのポイント

・複雑なトリックを生み出すコツ①「被害者と犯人を入れ替える」

・複雑なトリックを生み出すコツ②「被害者を犯人に協力させる」

・トリックを主軸にすれば、物語の組み立てもスムーズに

 

PART3 思わず感情移入してしまう魅力的なキャラクターづくりのコツと裏ワザ

・作品の面白さを半減する「やりがちなキャラクター設定」とは

・映像化を考慮したキャラづくりで、他のミステリー小説に差をつける

・ヒット作を書きたければ、美女・美少女を活躍させよ

・“強い女”を書くだけで、作品のオリジナリティが増す

・面白いセリフを言えるキャラクターは作品のかなめとなる

 

PART4 台詞や描写で差をつける  新鮮で的確な文章表現のコツと裏ワザ

・「うまい文章」よりも、「平易な文章」を心がけよ

・巧みな台詞廻しを自分の物にする訓練法

・的確で洗練された風景描写が身につく「本の読み方」

・特定の言い回しを避けるだけで、文章のレベルがワンランク上がる

 

PART5 作品のリアリティが増す取材や情報収集のコツと裏ワザ

・門外漢にはかけそうにない設定こそ、チャンスがある

・いかに“知らない世界”の情報を入れるかで、物語造りに差がつく

・ミステリー小説に欠かせない「警察の仕組み」を知る

・見学するだけで、発想が広がる取材場所とは

・特別な警察情報を手に入れるための裏ワザ取材法

・役に立つテレビドラマの見方 やってはいけないテレビドラマの見方

・よく知っている毒物こそ、事前の情報収集を徹底せよ

・これだけは最低限押さえたい「クロロホルムの使い方」

・読み手に目新しさを感じさせる、生物由来の毒物の話

 

PART6 プロ作家を目指す、ミステリー小説新人賞を受賞するコツと裏ワザ

・受賞できるかどうかは、ジャンル選びの段かいで決まっている

・面白ければ、受賞できるわけではない

・選考は、最初の5ページまでで決まる

・知らない世界を書くだけで、受賞の確立がぐっとあがる

・一次選考で落ち続ける人がやりがちな失敗

・時事ネタを避けるだけで、ライバルに差がつく

・予選突破できれば、プロ作家デビューも夢ではない

・短編、長編、どちらに挑戦すべきか

・新人賞を狙うなら、目標は高く設定せよ

・新人賞対策で、最も注意して読むべき受賞作品と。

・デビュー後、プロ作家としての地位を築きやすい「鮎川哲也賞」

・映像化も夢ではない「『このミステリーがすごい!』大賞」

・おわりに

 

 

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