hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

海堂尊『ブレイズメス1990』を読む

2018年05月20日 | 読書2

 

海堂尊著『ブレイズメス1990』(講談社文庫か115-5、2012年5月発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

この世でただ一人しかできない心臓手術のために、モナコには世界中から患者が集ってくる。天才外科医の名前は天城雪彦(あまぎゆきひこ)。カジノの賭け金を治療費として取り立てる放埒な天城を日本に連れ帰るよう、佐伯教授は世良に極秘のミッションを言い渡す。『ブラックペアン1988』の興奮とスケールを凌ぐ超大作、文庫化。

 

研修医・世良の物語を描いた『ブラックペアン1988』の2年後を描いた続編。1990年の東城大学医学部付属病院に、画期的心臓外科手術法を持って乗り込んだ天才心臓外科医・天城雪彦と、彼に引きずり込まれた世良が、閉鎖的で将来が危うい日本医学界にメスを入れようとする。



フランスのニースでの国際学会に出席する垣谷に、院長の佐伯から心臓外科医・天城に手紙を届けるよう命ぜられた世良が同伴した。

世良は、学会をドタキャンし、カジノで大活躍する天城を見つけ、手紙を渡す。中身は心臓手術専門の病院建設のため天城を招聘するものだった。しかし、天城は患者から法外な金を要求い、一見金に汚い男だった。しかし、手術の見事さに圧倒された世良は、賭けに勝ち、招聘に成功する。

東城大学医学部に招聘された天城は、病院の外科とは別に心臓手術専門の病院「スリジエ・ハートセンター」着手を表明し、医師達と険悪となる(スリジエはフランス語でさくら)。世良は病院長・佐伯の命で天城の世話役となる。さらに天城は画期的心臓外科手術法 “ダイレクト・アナストモーシス” を反対の嵐の中で、公開手術で披露することを宣言する。



本書は、『小説現代』2009年9月号~2010年4月号にタイトル『ブレイズメス1991』で連載。2010年7月に単行本化。本作は、執筆中に1990年結末としたのが最善として、1990年までとして、加筆訂正した。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

スイスイと面白く読める。手術の専門的記述が多いが、ざっと読む分には雰囲気が感じられて心地よい。天城のスーパーマンぶりにはしらけ気味。



巻末の解説で、西尾維新氏は、「好きな作家が多作である。はっきり言って、本読みにとってはこんなに嬉しいことはないです。」と書いている。
私はとくに多作な作家が好きなわけではない。東野圭吾の作品をある程度、読みだして、東野圭吾の履歴&既読本リストを作るうちに、読んでない本が気になりだして、ついつい未読本を探して読むようになってしまった。もちろん、東野作品が面白く、読みやすいことが前提ではある。


海堂 尊(かいどう たける)
1961年千葉県生まれ。千葉大学医学部卒業、同大学院医学博士号取得。
外科医を経て病理専門医。
2009年より独立行政法人・放射線医学総合研究所・重粒子医科学センター・Ai 情報研究推進室室長。剣道3段。
2006年『チーム・バチスタの栄光』で、「このミステリーがすごい!」大賞受賞。
その他、『ナイチンゲールの沈黙』『ジェネラル・ルージュの伝説』『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』『トリセツ・カラダ』『死因不明社会』『ジーン・ワルツ

 

 

登場人物

世良:東城大学医学部付属病院総合外科学教室(通称・佐伯外科)の外科医3年目の研修医。高階の腹部外科グループだが、天城の身の回りの世話役を命じられる。天城からはジュノ(青二才)と呼ばれる。

天城雪彦:モナコ公国のモンテカルロ・ハートセンターの外科部長。大金持ちの患者の全財産の半分をギャンブルに賭けさせ、運の良い患者を選ぶ。ダイレクト・アナストモーシスを確立している。

佐伯:東城大学医学部付属病院院長で総合外科学教室教授。

高階:佐伯外科の腹部外科グループ講師。金を物差しに語る天城に反発。

垣谷:佐伯外科の心臓血管外科グループ講師。固い考えで天城に反感を持ち、感情を露にする。

黒崎:佐伯外科助教授で心臓血管外科グループのトップ。

駒井:佐伯外科の研修医。旅行と国際学会見学で訪れたニースで世良、垣谷と出会う。

江尻:東城大学医学部付属病院副院長。第二内科教授。反佐伯派の急先鋒。

 

藤原:総合外科病棟の婦長。

猫田:手術室主任看護婦。4時間以上の手術だと集中力が持たない。

花房:手術室看護婦。2年前から世良とは親密な関係になりそうなままだったが・・・。

 

桐生恭一:天城の公開手術の見学に来た若者。後に「チーム・バチスタ」の執刀医と名を挙げる。

桜宮葵:碧翠院桜宮病院の医師で医院長・桜宮巌雄の娘。後『螺鈿迷宮』に登場する

 

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五木寛之『百歳人生を生きるヒント』を読む

2018年05月20日 | 読書2

 

五木寛之著『百歳人生を生きるヒント』(日経プレミアシリーズ357、2017年12月20日日本経済新聞社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

いま、日本という国は未曾有の長寿時代を迎えている。経済の不安、衰えていく体の問題、介護は誰がしてくれるのか。そこにあるのは、これまでの哲学や思想で語ることのできない、100歳までの長い道をいかに歩むかという重い課題である―ミリオンセラー『生きるヒント』から四半世紀を経て著者が語り下ろす、まったく新しい生き方の提案。

 

五木さんの結論はこうだ。

百年といえども、一日一日の積み重ねである。長いスパンで考えて、思い悩むのはやめて、まず、今日一日を生き抜く覚悟をする。

もうひとつ付け加えて、

 百人百様、みんなそれぞれ異なった人間であり、生き方、考え方一つとして、同じ人間はいない。

 

 

2017年現在、百歳以上の人は全国で6万7824人。

いま日本は二つのことで、世界から注目されています。

ひとつは、使用済み核燃料の最終処理の問題。・・・

もう一つは、超高齢化社会の先駆けとして、百歳人生を幸福に、健全に生きることにできる社会システムや思想や哲学を、どう築き上げることができるかということです。

 

古代インド思想から生まれた「四住期」とは、 

「学生期(がくしょうき)」(0歳~25歳) 

「家住期(かじゅうき)」(25歳~50歳)

「林住期(りんじゅうき)」(50歳~75歳)

 「遊行期(ゆうぎょうき)」(75歳~100歳)

 

五木さんは、これを、日本人の年代感覚に添って10年ごとに区切って以下のように考えてみた。
「五十代の事はじめ」:これからはじまる人生は下り坂であると覚悟する。
「六十代の再起動」:これまでの生き方をリセットし、下山を実行し始める。自分の吐く息、吸う息に集中してそのこと以外に頭を働かせないようにするマインドフルネス瞑想する。
「七十代の黄金期」:何もない一日は、退屈を楽しむ黄金の一日。
「八十代の自分ファースト」:嫌老社会の中で自分の思いに忠実に生きる。何があってもその日その日を味わい丁寧に生きる。
「九十代の妄想期」:郷愁を楽しむ。

 

 

本書は2017年夏から秋にかけて行われた著者へのインタヴューをもとに構成・編集。

  

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)

 

裏表紙にある「まったく新しい生き方の提案」は誇大宣伝。従来から言われていることを脈絡なく並べている。文章は平易でわかりやすいのだが、インタビュー結果を本にしているので、話があっちこちする。

 

例えば、いつも相方に言われている言葉、「だだでさえ年寄はきたないものだから、身の周りぐらいはきれいにしておかなければ」。

 

無理に前向きにならなくてもよい、あるがままにという趣旨はその通りと納得する。川柳の「前向きに 駐車場にも 励まされ」と思い出した。

 

深沢七郎の『楢山節考』で息子に背負われて山に行く母親の年齢は69歳、というのは、ショック。

 

 

五木寛之(いつき・ひろゆき)
1932年9月30日(石原慎太郎と同じ)福岡県生まれ、旧姓松延。生後まもなく朝鮮に渡り、1947年に終戦で日本へ引揚げる。1952年早稲田大学第一文学部露文学科入学。1957年中退し、PR誌編集者、放送作家、作詞家、ルポライターなど。
1965年の岡玲子と結婚して親戚の五木姓を名乗る。ソ連・北欧へ新婚旅行に行く。
1966年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞
1967年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞
1976年「青春の門・筑豊編」で吉川英治賞
その他、小説『親鸞上・下』、『生きるヒント』『大河の一滴』『林住期』『人間の関係』『ふりむかせる女たち』『人間の運命』『下山の思想』『選ぶ力』『百歳人生を生きるヒント

 

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