hiyamizu's blog

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中島真志『アフター・ビットコイン』を読む

2018年05月12日 | 読書2

 

中島真志著『アフター・ビットコイン 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』(2017年10月25日新潮社発行)を読んだ。

 

未来の通貨ともてはやされ、怪しげな雰囲気も持つ仮想通貨。日銀出身の決済システムの第一人者がビットコインなどの危険な将来を予測する。さらに、仮想通貨の将来は暗いが、その中核となる技術「ブロックチェーン」は今後の金融界に大きな変革をもたらすと説く。

 

ビットコインの利用実態からは、幅広い参加者が皆でビットコインを支えていくという当初の理念は実現されていない。上位1%未満の人が、9割のビットコインを保有し、当初からの参加者だけが最近の相場の急激な値上がりの恩恵を受けている。また、ごく一部の業者が巨大な設備を使って取引の承認作業を行い、その報酬を独占している。

国際会議でもいまや仮想通貨は「一部の特殊な人たちが使うマイナーなサービス」と位置づけられ、テーマとして取り上げられることもなくなった。

 

中島真志(なかじま・まさし)
1958年生まれ。1981年一橋大学法学部卒業。同年日本銀行入行。調査統計局、金融研究所、国際局、金融機構局、国際決済銀行(BIS)などを経て、2017年10月現在、麗澤大学経済学部教授。博士(経済学)。

単著に『外為決済とCLS銀行』、『SWIFTのすべて』、『入門 企業金融論』、共著に『決済システムのすべて』、『証券決済システムのすべて』、『金融読本』など。

決済分野を代表する有識者として、金融庁や全銀ネットの審議会等にも数多く参加。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

技術的詳細に踏み込まず、仮想通貨、とくにビットコインの概要を要領よく解説している。しかし、後半に入り、用いられているブロックチェーンの金融業界への将来の応用に進むと、著者の得意分野なのだろう、各国、各機関の実証実験などの多くを列挙するので煩雑になる。その結果、副タイトルに反し、次世代の覇者は結局誰なのかはっきりしない。各国の中央銀行??

 

仮想通貨の実状、概要の仕組み、問題などを知るためなら前半部で十分。

 

 

以下、メモ

 

ビットコインの単位は、BTC(ビーティーシー)。最小単位は小数第8位までで、1サトシと呼ぶ(発明者がサトシ・ナカモト)。

 

ビットコインは、約30桁の英数字からなる「ビットコイン・アドレス」を持つウォレットに入れられる。1つのウォレットは複数のアドレスを持つことができ、アドレスからウォレットの持ち主は特定できず、匿名性がある。

 

ビットコインを入手するには
(1)ビットコイン取引所で円やドルなどの法定通貨と交換する。
(2)商品やサービスの対価としてビットコインを受け取る。
(3)ビットコインの取引を承認するための複雑な計算処理を行い、対価としてビットコインの新規発行を受ける。これをマイニング(採掘)と呼ぶ。

ブロックチェーン(分散型台帳技術)は、取引データの塊(ブロック)を一定期間(10分)ごとに、秘密鍵を使って生成し、時系列でチェーンのようにつなげる仕組み。このブロックを参加メンバーが互いに公開鍵を使って、正しいものと次々に承認しあうことで、偽造や二重使用を防止する。

 

ブロックは「前ブロックのハッシュ値+取引データ+ナンス値」で構成される。ナンス値(nonce)とは一度だけ使う使い捨ての数字で、特別な意味はない。次の新規ブロックを追加するには、そのブロックのハッシュ値の最初に一定以上のゼロが続くようにナンス値を「しらみつぶし探索」で探し出す必要がある。この作業を「プルーフ・オブ・ワーク」と呼び、これにより「取引承認」がなされる。ビットコインではこの計算に約10分必要となるように設定されている。

 

プルーフ・オブ・ワークを競争に勝って最初に行った人(マイナーminer)にリワードとして新しいビットコインが与えられる。解答が正しいかどうかは2番手以降に人たちがチェックし複数人が承認すればそのブロックは認証され、ブロックチェーンの最後尾に追加される。

 

実際に過去のデータを改ざんするには、その時点から遡り最新のデータまで改ざんしなければならず不正の防止に効果的です。将来的には、金融だけでなく医療、流通等の様々な分野に活用可能な技術となります。

 

ビットコイン(シェアー46%)類似の仮想通貨には、イーサリアム(23%)、リップル(5.6%)、ビットコイン・キャッシュ(3.7%)など104種ある。

 

マイナーが得たビットコインを市場で次々と売却し、パッシブ投資家が投資目的で次々と購入していて、両者の保有量は5割以上と偏在している。純粋に価値の交換手段として使っているユーザーはかなり限定的。

 

ビットコインの発行上限は2100万BTCを決められていて、約80%が発行済み。1ブロックの生成に10分のペースでいくと、2140年には上限に達する。

 

「ブロックチェーン」より「分散型台帳技術(DLT)」という言葉が一般的になってきた。この技術は金融分野で実証実験が各国中央銀行などで広く行われており、将来有望な技術である。

 

 

(目次)
序章 生き残る次世代通貨は何か
1.過大評価されている仮想通貨?
2.期待が高まるブロックチェーン
3.中央銀行によるデジタル通貨発行への取組み
4.ブロックチェーンがつくる新たな未来

第1章 謎だらけの仮想通貨
1.すべての始まりはビットコイン
2.ビットコインはどうやって使うのか
3.ビットコインを支える不思議なメカニズム
4.ビットコインの新規発行「マイニング」の仕組み
5.1000種類以上もあるビットコイン類似の仮想通貨:アルトコイン
7.ビットコインは果たして通貨か?

第2章 仮想通貨に未来はあるのか
1.ビットコインのダーティーなイメージにつながった3つの事件
2.一握りの人のためのビットコイン
3.ビットコインの仕組みに問題はないのか?
4.ブロックサイズ問題がもたらしたビットコイン分裂騒動
5.政府の介入によってビットコインは終わる?
6.健全なコミュニティはできているのか?
7.ビットコインはバブルか?

第3章 ブロックチェーンこそ次世代のコア技術
1.これは本物の技術だ! 
2.ブロックチェーンの類型
3.代表的なブロックチェーン
4.金融分野におけるブロックチェーンの実証実験の動き
5.ブロックチェーン導入時に決めるべきこと

第4章 通貨の電子化は歴史の必然
1.貨幣の変遷は技術進歩と共に
2.15年前から始まっていた通貨の電子化
3.実証実験に動き出す世界の中央銀行

第5章 中央銀行がデジタル通貨を発行する日
1.2種類の中央銀行マネー
2.銀行券を電子化する「現金型デジタル通貨」
3.銀行経由で発行する「ハイブリッド型デジタル通貨」
4.当座預金の機能を目指す「決済コイン型デジタル通貨」
5.デジタル通貨は新たな政策ツールとなるか?

第6章 ブロックチェーンによる国際送金革命
1.高くて遅い「国際送金」の現状
2.安くて早い国際送金を目指す「リップル・プロジェクト」
3.国内におけるリップル・プロジェクトの展開

第7章 有望視される証券決済へのブロックチェーンの応用
1.中央集権型で複雑な現行の証券決済
2.相次ぐ実証実験プロジェクト
3.証券決済への適用時に考慮すべき点

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