hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

『美しい恋の物語』を読む

2011年05月01日 | 読書2
安野光雅、森毅、井上ひさし、池内紀編『美しい恋の物語<ちくま文学の森1>』1998年2月筑摩書房発行、を読んだ。

初恋(島崎藤村):序文がわりの詩。「いまあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき」。
(最後まで覚えていました。若い頃覚えたことは忘れませんね。今朝の朝食は何だったか思い出せませんが。でもまだ、食べたこと自体は覚えていますよ。)

燃ゆる頬(堀辰雄):男同士の愛。微妙で透明感はあるが、現代では衝撃はない。

初恋(尾崎翠):一部で熱狂的支持のある「第七官界彷徨」の作家の30歳頃の作品。祭りの夜に、踊りの輪の中の男装の麗人に惹かれる。後姿を追って着いた家は何と・・・。2時間で終わった初恋。

柳の木の下で(アンデルセン):職人は多くの親方の元で修行して育っていく。その間一途な愛は結局・・・。

ラテン語学校生(ヘッセ):学生が美しい他家の女中に惚れ、あの残酷な言葉「友達でいましょうよ」と言われ、やがて育って行く話。

隣の嫁(伊藤左千夫):隣りの農家の嫁との恋。
(農村でしかもはるか昔の話なのでついていくのが難しい。)

未亡人(モーパッサン):女のために死ぬ家系の少年。老嬢は言う「結局、婚約を解消し、13歳の少年のために後家を通したのです」

エミリーの薔薇(フォークナー):数ある青年を追い払った父親が死に、孤独な老嬢は・・・。アメリカ南部の濃い雰囲気が一杯。

ポルトガル文(リルケ):ポルトガルの修道院の尼僧が愛する男に出した5通の手紙。本物の手紙をリルケが訳したものらしい。

肖像画(ハックスリー):客に絵にまつわる物語を語るために成金男が家に飾る絵を求める。画商は画家とモデルの伯爵夫人との恋愛のもつれを語る。抜け目なく専門用語を交えて相手の弱みにつけこむ画商、えげつなくしかし単純な成金。仮面とマントのヴェネチアの謝肉祭の夜、画家と夫人の恋は・・・。
(ハックスリーの皮肉な語り口が冴える)

藤十郎の恋(菊池寛):江戸で色事師を演じては当第一とうたわれる坂田藤十郎が、近松の不義の恋を描いた新作を演ずるため、人妻に言い寄り、人妻が長年守った貞淑さを脱がされてしまう様を見て、そのまま去る。そして、彼女は縊死し、彼は、彼女の葛藤と彼の罪の深さにおののきながら演技に開眼する。
(前に読んだことあるはずですが、あらためて菊池寛、かっこ良いですね。いかにも頭で考えた筋だが、手練手管、彼女の反応を描く文章はさすが)

ほれぐすり(スタンダール):駐屯中の中尉が、亭主を捨てサーカスの曲馬師のもとに走ったが、結局騙されて逃げてきた女を助ける。
(ドラマチックだが、短編ではあわただしすぎる)

ことづけ(バルザック):馬車に敷かれて死ぬ間際の男が不倫相手の人妻への手紙を託す。

なよたけ(加藤道夫):「竹取物語」はこうして生まれたという現実と空想が交錯する戯曲。110ページと長い。加藤道夫は26歳で完成させたこの「なよたけ」で演劇界に新風を吹き込んだが、34歳で自殺。妻は俳優の加藤治子。

ホテル・ヴェリエール 解説にかえて(安野光雅)



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

東西の名作家の作品を比較しながら読める。ただ、時代が古すぎて乗りきれない。



コメント
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