ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~親の顔に、泥を塗るでない~

2013-05-14 | 散華の如く~天下出世の蝶~
信長の嫡男失踪で、篝火が松明に変わり、
優雅、幽玄を楽しむ…処ではなくなった。
帰蝶「丸、丸ッ」
長良の川は深い。闇に足を滑らせ、
急流に呑まれでもしたら二歳など、
一たまりもなく、連れて逝かれる。
「私が、私が…」
あの時、
丸から手を離さなければ…、
“母、ははッ”
丸の訴えを聞いていれば…、
狼狽えて使えぬ、この母を、
小堀「帰蝶様、落ち着かれませ」
御客人の小堀が、宥め賺す。
「大事ありませぬ、大事ありませぬ」
祈りが呪文のように心裂く。
丸に、もしもの事があれば、
屋敷屋形内外を探す家臣ら、
それに付き添う侍女女中ら、
船から川を捜索する鵜匠ら、
どのような処遇を受けるか、
帰蝶「申し訳ありません、申し訳…」
折角の幽玄伝統に泥が付く。
ちらりと、殿の心中伺うと、
「殿…?」
ただ黙し、腕組みして、
この騒然の中心に座し、
深く瞑想しておられた。
すると、
“帰命丸様が…”

幸福の使者に、幸福の音

2013-05-14 | アクセサリー
新居に、ツバメの偵察隊が入りました。
ツバメは幸福の使者…と言われているので、

ほっかとく事にしました。

さて、我が家のツバメは、
増築をあきらめ、古巣を叩き壊し、
一から築き上げ、完成させました。

ツバメの環境適応能力に感服です。


さて、幸福の使者の新居が出来上がった頃、

聞こえてきました。
幸福の鈴の音。

浄化の音色が、

しゃんしゃんしゃん…

聞こえてくるようです。

さて、
出来ました。


これ、
おまけのお守りです。




散華の如く~母、ハハッ…~

2013-05-13 | 散華の如く~天下出世の蝶~
その声を辿り、
くるり、
殿に向き直り、
帰蝶「もちろんに、ございます」
口を一に、キュッと結び、
不安をギュッと押し殺し、
殿を一つ、キッと睨んだ。
母としての覚悟に、
信長「惜しいものよ、濃…」
父が漏らした本音。
そんな殿の弱気を、
くる…と、
帰蝶「…」
私は背中で聞いた。
寧々の案内で城内外を、猿の手引きで手の内を、
隈なく明かしたその夜、パチパチ、弾ける松明。
暗黒水上に舞う火の粉。丸を連れて、長良川へ。
小堀「懐かしゅうございます、帰蝶様」
小堀は昔の癖で、私を本名で呼ぶ。
私もついつい、濃から帰蝶に帰る。
帰蝶「十で初めて、鵜を見て…震えたわ」
青い目が、ギロリ、睨むようで怖かった。
小堀「ほ…安心致しました、帰蝶様にも怖いものがあると知って」
帰蝶「まぁ、無礼な」
小堀は弟のような存在であった。遠慮気兼ね、不要のやり取りに、
帰命丸「母、ハハッ」
手をぐいぐい、こっちこっちと引っ張る。
帰蝶「これ、丸。母をそう急かしては…」
注意しようとした矢先、する…と、私の手を外し、
「丸…?」闇に消えた。

散華の如く~長良鵜飼、開幕~

2013-05-12 | 散華の如く~天下出世の蝶~
子供によって持て成された大人は、
小堀「ではでは、お願い致します」
寧々「承知仕りましてございます」
幼いとはいえ、寧々、
大人をよう観ておる。
“行ってはいけない”
武庫には近寄るまい。
それに、小堀も大人。
寧々に、素直に従う。
大きな背と可愛い背、
ゆっくり遠く離れて、
帰蝶「ふくよ、夕餉は長良。鵜飼で持て成しじゃ」
ふく「鵜匠も腕の見せ所、さぞ力が入りましょう」
侍女、女中が支度に追われる中、
帰蝶「…」
丸を留守に、大人は幽玄、夜の世界へ。
“ハハ。丸と、寝るの”
丸との約束…無常、破る後ろめたさで、
ぼんや…と杜若写る池を眺めていたら、
信長「丸にも支度させよ」
帰蝶「…え?」
信長「舟に乗せる」
帰蝶「しかし、二歳で屋形…まだ早いのでは?」
信長「早いか遅いか…乗せてみよ」
帰蝶「…はぁ、すぐ支度させます」
不安…半分、大人の世界に驚き、騒ぎ立て、迷惑が掛かっては…、
と思う反面、嬉しさも込み上げ、ついつい、足取りが軽くなった。
そんな私の背に、殿は呟いた。
信長「いずれ戦は船の上。慣らすが良い」
全ては、訓練のためであった。

My Mothers

2013-05-12 | 日記
母の日に、例の印伝を買いました。
ちなみに、義母様のためです。

そしたら、

実母「私のは?」

来た、女の醜い、
嫉妬、やきもち。

私「…あぁ、エプロン作ったげるわ」
布と布と端切れを合わせて、
ちくちく、ちくちく、
リバーシブルタイプ。

出来た。

すると、

実母「私のが、安い」

いえね、
お母様。

めっさ手と暇、
掛かってんよ。





散華の如く~デモンストレーション~

2013-05-11 | 散華の如く~天下出世の蝶~
初めての大役に躊躇する寧々、
しかし、殿の命であれば当然、
寧々「はい、畏まりましてございます」
出来ません、嫌ですとは、言えまい。
それに、寧々はよう躾されておる故、
粗相も無かろう、という判断である。
小堀「これは、これは可愛い御案内人にございますね」
くすりと笑った。
帰蝶「小堀殿?」
小堀「いえ、何でもござません」
可愛い案内人に、満更でもない様子。
信長「猛者が付くより良かろう」
もちろん、殿御自ら案内される場合もあるが、
躾行き届いた家臣の子にさせる事も多かった。
子供にお運びさせ、日頃の訓練をさせていた。
さらに、
「猿よ。鉄砲隊を招集し、小堀に見せよ」
藤吉郎「ハッ」
即対応、即行動、
ササッと消えた。
小堀「噂に高い鉄砲隊…それは、楽しみにございます」
客人が異国宣教師であれ、隣国使者であれ、
お越しの際は、ドンパン派手に打ち鳴らし、
大歓迎。それが信長流の持て成しであった。
国力がどれほどのものか、魅せる。
それを見た客人は赤く青く忙しい。
その変化で、優劣を見図っていた。
模擬訓練は、実戦の備えに見せて、
“戦わずして、勝つ”
実の所、戦を避けるためであった。

散華の如く~千成瓢箪と、立身結実~

2013-05-10 | 散華の如く~天下出世の蝶~
我ら武士の子にはない発想、
農民の智慧とでも言おうか、
猿の機転には実驚かされる。
殿は猿を甚くお気に召したようで、
よくよく、お説教をなさっていた。
農民と武士とでは道理が異なる故、
“なんじゃ、そのナリは、”
殿に仕えて数年経った年賀、事もあろうに、
猿はボロをまとって、手ぶらで参上仕った。
武家の道理を知らぬ猿に、家臣らは引いた。
クスクス、くすくす、腹の底で笑うだけで、
年賀の新調、殿に祝賀。通例、当然の理を、
教えてやろうという者が、誰もいなかった。
これ猿よ、着替え参れと言うと、
藤吉郎「こん歳で独り…縫うてくれる、嫁がおりませぬ」
この時代、武家男子十五、六…元服の頃には結婚。
猿が草履取りになったは、丁度そこの頃桶狭間前。
「二十三、来年前厄。来てくれる嫁子がおりませぬぅ~」
殿は前厄…と聞いて、
“一世代、財を成せ”
殿が若かりし頃持っていた厄除け七瓢箪を与えた。
藤吉郎「有難き、幸せにございます」
その後猿は千の実、千成瓢箪を己の象徴、馬印に替え、
出世街道まっしぐら。天下取り参戦の大出世を遂げる。
天下取り偉業の陰に寧々がいたのは、言うまでもなく、
“しかし、勿体ない。独りとは…”
この頃から、武家の道理を教え諭す妻を猿にと、考えておられた。
信長「寧々よ。この者小堀に、城を案内してやれ」
寧々「え…?私が…で、ございますか?」
信長「然様」

散華の如く~INDEN~

2013-05-09 | 散華の如く~天下出世の蝶~
異例の出世に驚きを隠せない様子の小堀、
寧々の草履、細工施された踵を見ていた。
小堀「これ…」
帰蝶「殿を待つ間、外で、それを付け、懐で温めておりました」
寧々に、草履の裏を見せておくれ、と頼み、
寧々「はい」草履の片方脱いで裏を見せた。
小堀「INDEN…」
オランダ製、印度伝来のインデン。
帰蝶「然様、印伝の端切れを細工しておりました」
印伝とは、皮に漆で小紋を装飾施した革製品で、
平安時代から馬具、具足、羽織に使われていた。
その多くは鹿皮、柔らかく水に強いことが特徴。

(※私の草履、鼻緒が印伝です。巷大和アピタに印鑑ケース、財布、巾着などなど販売しておりました)

小堀「…私は、どこを見ていたのだろう」
寧々に草履を返して、
「庭を、土を替える事ばかり考えていた」
帰蝶「小堀殿…」
小堀「お恥ずかしい…私、彼のように草履を直す事、出来ませぬ」
庭を変えれば、それに見合った草履を履く。
大規模造園なら尚、手を加えた履物が要る。
単純な道理が矛盾。当然の理を忘れていた。
「厚かましい願いと存じまするが…」
やはり猿、興味深い男であった。
小堀は瞬時、名を記憶していた。
「その、木下 藤吉郎殿と、お引き合わせ下さい」
この時、猿の位は小堀の下。
しかし、小堀は猿を敬った。
信長「猿を、これへ」
呼ばれた猿は、ハハッと殿の御前に座り、
藤吉郎「猿めが、ここに」頭を下げる猿。
信長「どこまでも、小賢しい猿よ、のう」

散華の如く~猿の細工と、昇進と~

2013-05-08 | 散華の如く~天下出世の蝶~
さて、誰に城を案内させるか?
信輝は美濃から戻っていない。
他、城内外に詳しい者は、と?
帰蝶「あら、あれ。お寧々…」
ふくに手を引かれて、泣きっ面から笑顔、
シャンシャン歩いて、こちら戻ってきた。
「大事なかった?」
しゃがんで、寧々の隅々、
嫁入り前を隈なく調べる。
「怪我は?痛みはあるか?」
傷跡を残しては…と、寧々の天辺から、
ずずっと下、足元に視線を移して見る。
すると、寧々の草履、真っ赤な鼻緒が、
寧々「御屋形様、御方様、ご心配おかけ致しました」
帰蝶「直っている…それに、」
ふく「はい。木下殿が、まぁ見事。ちゃちゃちゃっと、」
帰蝶「藤吉郎殿が、ちゃちゃちゃ…と?」
小堀「木下…藤吉郎」
小堀の父殿も、一、二、三…と、
あっという間に私のお気に修理。
私は、小堀の父様だから直せると、
職人が、草履の鼻緒を直すものだと、思い込んでいた。
しかし、猿が寧々を笑顔に戻した。それだけではなく、
ふく「申し訳ございません。姉のお古、少しばかり大きかったようで…」
寧々の足に合わせて、緒を挿げ直した。
信長「器用な猿で、濃…」
ほれ、あの時の話を皆に聞かせよ、私をせっつく。
帰蝶「はい、元は草履取。殿の御草履にも斯様細工施しまして…」
小堀「細工…」寧々の足元から、ちらり、と覗く細工を見る。
帰蝶「その細工が気に入り、番傘(馬印)を与えましてございます」

散華の如く~明かして、読む手の内~

2013-05-07 | 散華の如く~天下出世の蝶~
口から漏れた言葉、聞き逃さずと、
信長「濃」
帰蝶「はい」
小堀と、ゆっくと話をしたい、と。
「では今宵、長良の若鮎、屋形船を用立てましょう」
小堀「あ、いえ、私はこれにて…」
帰蝶「小堀殿、それは無かろう?」
十五年振りに会うて、なんと淋しい…。
小堀「…しかし、」
帰蝶「あの時の礼がしたい」
小堀「あの時とは、…何の事にございましょう?」
帰蝶「私のお気に、草履の鼻緒を直して下さったのは、小堀の父様…」
むき出しの岩肌、せり出す岩盤の金華山、
このお転婆が走って回り、ずるッと転び、
「挫いた足を手当して下さったのも、小堀の父様である」
小堀「…」
幼き私の、この話を知っているのか、
それともこれで断る理由が失せたか、
「参りましてございます、帰蝶様」
ぺこ、あの時のように頭を下げた。
小堀、私より三つ四つ下の腕白で、
よくよく私にちょっかいだしては、
私の薙刀、その餌食となっていた。
帰蝶「私の、勝ちじゃな」
小堀「相変わらずお強い」
肩をすくめて、
「では、お言葉に甘えて」
帰蝶「支度整うまで…殿、小堀殿に城を、見て、頂いては如何にございましょう?」
信長「それも…、そうじゃな」
小堀「え?」