小さな気の乱れで、茶の湯の気泡が乱れる。
心を鎮めるために、
す…と吸気を入れ、香を利いた。
茶頭とは、どれほどの胆の座った人物だったのだろう。
松殿「池田…私も、頼むよ」碗を戻した。
池田「はい」
和田殿の碗も下げて、三人分の茶を入れ直した。
…で、義経さん。何をお考えで?
「ただ、義父と、茶が飲みたくなっただけだ。何も考えてない」
では、その懐剣は?
「あぁ、これか。妻の懐剣…」
松殿の局…葵さんの?
「何かの時は、これを使えって渡したんだが、戻って来ちまった」
その懐剣を、どうなさるおつもりで?
「どうすっかなぁと思ってな」懐剣 吼丸(こんまる)を抜いた。
それ…、
俺の懐刀 袷丸(こうまる)を出して、抜いて見せた。
「(兄弟刀の)片割れ…お前が持っていたのか」
はい。主君 資盛から、平家を頼むと預かりました。
「そうか…」
カチャ…、剣を仕舞って「なら、あの大うつけから、目を放すなよ」
義経さん。あなたは、今、源氏ですか?平家ですか?
「どっちでもない…」
血は源氏でも、心は平家。だから、御方様を守って下さった。
「の、つもりでいただけだ」
そのおつもりのまま、これからも、御方様の兄として…
「危なっかしい。その形見、仕舞え」
…。袷丸(こうまる)を鞘に仕舞って、
義経さん。俺たちと共に、平家の、(清盛)入道様のご意志を継いで下さい。
「悪いが…戦える“俺”は、もういない…分かってるだろ」
心を鎮めるために、
す…と吸気を入れ、香を利いた。
茶頭とは、どれほどの胆の座った人物だったのだろう。
松殿「池田…私も、頼むよ」碗を戻した。
池田「はい」
和田殿の碗も下げて、三人分の茶を入れ直した。
…で、義経さん。何をお考えで?
「ただ、義父と、茶が飲みたくなっただけだ。何も考えてない」
では、その懐剣は?
「あぁ、これか。妻の懐剣…」
松殿の局…葵さんの?
「何かの時は、これを使えって渡したんだが、戻って来ちまった」
その懐剣を、どうなさるおつもりで?
「どうすっかなぁと思ってな」懐剣 吼丸(こんまる)を抜いた。
それ…、
俺の懐刀 袷丸(こうまる)を出して、抜いて見せた。
「(兄弟刀の)片割れ…お前が持っていたのか」
はい。主君 資盛から、平家を頼むと預かりました。
「そうか…」
カチャ…、剣を仕舞って「なら、あの大うつけから、目を放すなよ」
義経さん。あなたは、今、源氏ですか?平家ですか?
「どっちでもない…」
血は源氏でも、心は平家。だから、御方様を守って下さった。
「の、つもりでいただけだ」
そのおつもりのまま、これからも、御方様の兄として…
「危なっかしい。その形見、仕舞え」
…。袷丸(こうまる)を鞘に仕舞って、
義経さん。俺たちと共に、平家の、(清盛)入道様のご意志を継いで下さい。
「悪いが…戦える“俺”は、もういない…分かってるだろ」