散華の如く～Brother、Brother～

信長は実母からの愛情を受けられず育っていた。
それを哀れに思ったのが、
池田「…母上」
池田 恒利の正妻 池田 桂子様で、
信輝の実母だった。
信長の乳母となり、我が子同様に可愛がり、信長も乳母を母の様に慕った。
信長と信輝は、一人の女性の乳で契りを交わした乳兄弟で二人でヤンチャする事も多かったそうだ。
帰蝶「池田の母上様…？」
向こうで、我らの様子を優しい眼差しで見つめる女性、それが 池田の母上様だった。
立つ姿は百合の花…
「美しい方…」
私は、池田の母上様に軽く会釈した。母上様も私に会釈と微笑みを返して下された。
まさに貞淑…この言葉は、池田の母上様のためにあるように思った。
多くの侍女たちを引き連れ下がられた。その姿を見送り、
「侍女…？」
ハッとした。腹心の正妻であっても、こんなに侍女は付かぬ。
信長「今は、親父の側室だ」
帰蝶「側室…？」
池田「そ。俺たち、Brother、Brother…」
“義兄弟”
信長「…あぁ」
彼は小さく二度、本当に小さく、震えるように頷いた。
それは、池田に、悪ぃ…と謝っているような仕草に見えた。
池田「ま、よくある話ですよ」
腹心が疑われる事なんて、日常茶飯事です。
だから、母上を差し出したんです。普通に…と、その端正な顔を崩さなかった。
帰蝶「そ、そんな…」
腹心の正妻が、主君 信秀(信長の父)の側室にされた？謀反の疑いを払拭するための、
「…政略…結婚…」