ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

元は一つの旗印

2011-04-06 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
斯波「落とし前?」
義経「そんな大それたもんじゃねぇよ」とそっぽ向いたら、ゴッ「テェッ!」頭を殴られた。
弁慶「あいつら、祝言挙げてねぇから、祝ってやりてぇんだって」
斯波「…で、なんで紅餅?」
弁慶「元は一つの旗印、挙げてやりてぇンだって、サッ」と義経の懐から二枚の布を取って、
義経「あ!」ハタハタァ~とはためく、紅旗と白旗を見て、
斯波「ふぅ…ん(ニッ)、そういう事か」と笑った。
義経「チッ」勘のいい奴…。
斯波「なら、いい奴紹介してやるよ」ニッと笑って「付いて来い」カモォ~ン、と合図した。
ぞろぞろ連れ立って船着場に出掛ける男連中に気付いた能子「先生…皆、どこへ?」と後を追い掛けようと玄関を出たら「池田…さん」がいた。
池田「少し、お時間、戴いてよろしいですか?」
能子「…」与一は、約束があると出て行ったし、この状況で誰にも告げずに出掛けていいのか一瞬迷ったが、池田さんと話がしたかった。だから「はい…」と答えて、付いていった。
そんな二人を向こうから見ていた二人組「俺はこっち。お前、ここで状況確認だ」と二手に分かれた。
池田は一言も発せず、酒田港まで歩いた。能子も黙って…池田に付いていった。
漁港から少し離れた防風林が立ち並ぶ海岸沿いで足を止め、ゆっくり振り返った池田に、
能子「お久しぶりです」と目を伏せ、深く頭を下げた。
池田「廊御方(ろうのおんかた)様、御無事だったのですね」
能子「兄に、救われました」と、ゆっくり頭を起した。
池田「捕虜だと聞きました」とにっこり笑った。
能子「あの…」と、言い掛けたと同時に、
池田「昨夜の舞い…とても美しい蝶が見られました。ありがとうございます」と頭を下げた。
能子「え…」
池田「義経さんに、お礼だったら自分で言え、と言われました」と、はにかんだ。
能子「ごめんなさい…」
池田「なぜ、あなたが、謝るんです?生きている事に…罪悪感でも?」
能子「そう…かも知れない。あの時、私が代わりにし…」と、能子の言葉を遮り、
池田「現に、あなたは生きている」と、キツイ口調でたしなめた。