羊のプチ冒険

フランス語と英語の通訳案内士(未年生まれ)が考える、こんな事、あんな事・・・

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通訳案内士って、どんな資格?

2015-01-21 21:05:51 | 通訳案内士
最近、テレビのニュースやワイドショーで、よく外国人観光客の増加が取り上げられています。お気づきの方も多いかと思います。訪日外国人客が増え、その活発な消費活動が観光・流通業を中心に経済活動を活性化し、ひいては雇用等にも好影響を与える・・・ということで、訪日外客の増加は明るい話題として紹介されています。

しかも、その数が急増している・・・

「日本政府観光局は20日、2014年に日本を訪れた外国人が過去最多の1341万4千人だったと発表した。1036万4千人で初めて1千万人を超えた前年より29.4%増えた。円安の追い風に加え、アジア諸国のビザ緩和や免税品目の拡大、海外での観光PR強化など政府の取り組みも後押しした。訪日外国人が使ったお金の総額も前年比43.3%増の2兆305億円で過去最高だった。
 国・地域別では、1位の台湾が前年比28.0%増の282万9千人、次いで韓国が同12.2%増の275万5千人、中国が同83.3%増の240万9千人だった。」~1月20日:朝日新聞デジタル

「訪日旅行客の多い18か国・地域のうち、台湾、中国、タイ、マレーシア、米国、フランスなど16か国・地域がこれまでの最高を更新した。」~1月20日:読売電子版

急増する訪日外国人客のお世話をする職種の一つが通訳案内士。「通訳案内士」の文字検索で弊ブログにたどり着かれた方はすでにご存知だと思いますが、ご存知でない方もご訪問いただいているのではないかと思いますので、サブタイトルにある「通訳案内士」について、ちょっとまとめておきたいと思います。

通訳案内士は国家資格、それも語学系では唯一の国家資格なんですね。えっへん! と、自慢するほどではないのですが、合格者は「官報」に記載されます。よい記念にはなります。

どんな資格かというと・・・

「通訳案内士(英語 Licensed guide)とは、観光庁長官が実施する国家試験「通訳案内士試験」に合格して、通訳案内士として登録した者のみが従事でき、観光客に対して外国語通訳及び観光案内を行って報酬を得る職業。外国観光客相手のプロの観光ガイドのこと。」~ウィキペディア

「通訳案内士(通訳ガイド)を規定する法律は、平成18年4月に施行された通訳案内士法があります。この法律の目的は、「通訳案内士の制度を定め、その業務の適正な実施を確保することにより、外国人観光客に対する接遇の向上を図り、もって国際観光の振興に寄与すること」(第1条)となっています。つまり、外国人による訪日観光の重要性を認めた法律であり、そのためには通訳案内士の保護育成が重要であると定められたものです。
 通訳案内士の業務の内容については、「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすること)を行うことを業とする」(第2条)となっています。「報酬を得て」ということは、たとえアルバイトでもガイド料金をもらって案内すれば、ガイドの登録を受けていない限り、違反になります。外国人相手の仕事なので、「外国人に同行する」「外国語を使う」というのは当然ですね。また「旅行に関する案内」ということは、観光地、交通機関、レストラン、観光土産品店などを含む日本事情一般を示しています。
 この仕事をする資格については、「通訳案内士試験に合格した者は、通訳案内士となる資格を有する」(第3条)とあります。したがって「通訳案内士でない者は、報酬を得て、通訳案内を業として行ってはならない」(第36条)ことになり、違反すると50万円以下の罰金に処せられます。(第40条)」~日本観光通訳協会

ということで、要は、国家資格を有した後に、有償で外国人観光客に外国語で日本を案内するガイドの事ですね。通訳案内士法によって規定されている職業なのですが、その歴史は、明治初年に遡ります。

「我が国において、通訳案内士という職業が、その社会的な重要性から法令上、初めて正式に規定されたのは、実に1世紀以上も前の明治40年(西暦1907年)であり、その名称は「案内業者取締規則、明治40年7月内務省令第21号」というものでした。これは観光関係法令としては我が国、最古のものであり、これが幾多の変遷を経て、現行の「通訳案内士法、最終改正、平成25年5月10日法律第12号」となったものです。」~『通訳案内士の歴史』瀬口寿一郎氏:ハロー通訳アカデミーのブログに掲載

名称は幾度か変更になりましたが、100年以上の歴史を有する通訳案内士。その資格を得るためにはまず、通訳案内士試験に合格しなければならないわけです。現在、10カ国語が、対象になっています。

試験は年1回行われ、一次(筆記試験)・二次(口述試験)に分かれています。日本政府観光局のサイトには、次のように紹介されています。

<筆記試験>
外国語(出願者の選択する一カ国語)
英語・・・記述式とマークシート方式の併用
フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語・・・記述式
(ただし、今年度一つの外国語科目が免除となり、併せて他の外国語科目の受験を希望する場合、又は二つの外国語科目が免除となる場合は二カ国語の申請を可能とする。)
日本語による筆記試験 (マークシート方式)
(ア)日本地理 (イ)日本歴史 (ウ)産業、経済、政治及び文化に関する一般常識
<口述試験>
筆記試験で選択した外国語による通訳案内の現場で必要とされるコミュニケーションを図るための実践的な能力について判定

但し、一次の筆記を免除する制度もあり、例えば、英検1級、TOEIC840点以上、仏検1級などの資格を持っている場合はその外国語の、歴史能力検定や地理能力検定の1級あるいは2級に合格している場合はその科目の受験がそれぞれ免除されます。詳細は、日本政府観光局(JNTO)のサイトで紹介されています。

では、実際、どれくらいの人が受験し、合格しているのでしょうか。最終合格者は毎年2月上旬に発表になるため、平成25年度(昨年2月発表)が最新のデータになります。24年度、25年度を見てみましょう。

(24年度:25年度の順)~日本政府観光局
受験者数=5,000人:4,706人
最終合格者数=713人:1,201人
合格率=14.3%(英語は13.3%、他の言語は20%前後が多い):25.5%(英語は30.9%、他の言語は20%前後が多い)

ということで、昨年度、急に英語の合格者が増えました。オフィシャルには急増する外国人観光客に対応するためとも言われており、今年度は、英語の一次試験免除にTOEIC840点以上という条件が加えられたため、いっそう多くの受験者がありました。受験者数は8,038人(対前年度比41.9%増)、英語に限っては、5,929人(対前年度比77.1%増)。英語だけで、近年の受験者数を超えてしまいました。また、当然ですが、より多くの最終合格者が予想されています(今年度は2月5日発表の予定だそうです)。

しかし、試験に合格しただけでは通訳案内士の資格は得られません。居住する都道府県で登録をする必要があります。現在、どれくらいの通訳案内士が登録しているかというと・・・

平成26年4月1日現在=17,736人~観光庁
  英語=11,865人、中国語=2,202人、韓国語=964人、フランス語=811人、スペイン語=744人、
ドイツ語=538人、ロシア語=289人、イタリア語=190人、ポルトガル語=109人、タイ語=24人
(但し、一人で数カ国語登録している人もいますから、実際の人数は、17,736人より少ないのではないかと思います。)

合格者数と比べて、意外と少ないですね。通訳案内士試験受験者の中には、語学の資格の一つとしてチャレンジすることが目的という人も少なくないことが一因なのかもしれません。例えば、英検1級、国連英検特A級、TOEIC990点を取った、他に何か資格はないのか、ということから受験する方も多いのかもしれません。実際には、語学、特に英語の一次試験の敷居は低くなり、ここまでの英語力は求められていないようですが、いずれにせよ、試験に合格すればよく、就業するつもりはないので登録しない、という方も多いのでしょうね。

では、実際登録している通訳案内士のプロフィールは、というと・・・

年齢:50代=31%、60代=24%、40代=23%、70代以上=12%、30代=9%、20代=1%
*定年退職あるいはその直前の方、子育ての一段落した方が資格を取られるケースが多いのかもしれませんね。

登録地:東京=30.3%、神奈川=13.1%、大阪=8.7%、千葉=6.7%、兵庫=5.7%、埼玉=5.5%、京都=3.9%
*これら1都2府4県でほぼ75%を占めてしまいます。同じ地域の人口の総人口に占める割合は約40%ですから、通訳案内士にはかなり地域的偏りがあるようです。外国人旅行者が多い地域のためなのか、外国居住経験者が多いせいないか。いずれにせよ「外国」が身近にあるところほど、通訳案内士に興味を持つ人が多いのでしょうね。

また、登録はしたものの、実際には稼働していないという人も多いようです。

資格活用状況~観光庁
未就業=75.7%、兼業=18.1%、専業=6.2%

ということで、試験に受かり、登録もしたが、その資格を活かしていない人が4人に3人。もともと就業するつもりはないが、試験に受かったので、一応登録だけはしておく、という人が多いのかもしれないですね。兼業の人は、語学教師、翻訳などとの兼業が多いのではないでしょうか。

専業が少ないせいか、就業日数も少なくなっています。

年間就業日数~観光庁
1~10日=32.8%、11~30日=17.5%、31~50日=8.1%、51~100日=14.7%、101~150日=5.2%など

従って、収入も少ない。

通訳案内行に関わる年収~観光庁
1~9万円=13.2%、10~99万円=30.1%、100~199万円=11.3%、200~299万円=7.2%など

「ニワトリが先か、卵が先か」ではないですが、定年後や子育て終了後の社会参加を目的とする人が多いから、就業機会・収入が少なくてもいいのか、収入が少ないから、専業でやろうという人が少ないのか・・・たぶん、後者がそもそもの背景で、そこに海外経験のある退職者や語学が好きな子育て終了者が社会参加の一手段として加わってきた、というところではないかと思うのですが、資格を取って2年、実際に稼働し始めて1年弱の新人通訳案内士には、自信を持ってこうなんだと言い切れないのが残念ではあります。

ただ、いずれにせよ、資格を取得するにはそれなりのハードルがありますが、それを活かすのは試験以上に難しい、まして専業で食べて行くとなると・・・

これだけでも残念なのですが、通訳案内士をめぐる環境には、さらなる難問が・・・春秋の観光シーズンに外国からの観光客も集中するせいでしょう、繁忙期に、それも主要観光地において通訳ガイドが足りないという状況が発生することがあるようで、特区案内士(都道府県が行う研修を経て、その地域のみで有償で通訳ガイド業を行える)やボランティアガイドを増やすという動きが進展しています。京都府では特区案内士の研修を来年度から始め、再来年度にはデビューさせるそうです。また、東京都は、学生や主婦を中心にボランティアガイドを大幅に増やすとか。

試験を受けずに研修だけでなれる特区案内士の場合、報酬は押さえられるでしょうし、ボランティアガイドはあくまでボランティア・・・ということは、通訳案内士の報酬(日当)も減額される、あるいは、稼働日数が減るということが十分に考えられます。「民間外交官」とも言われ、「語学力」にプラス「日本文化に関する知識」、「おもてなしの心」、「旅行スケジュールの管理・危機管理といった添乗業務」をあわせ持つ通訳案内士、その立場が危うい・・・

「従来からガイドとして就業するためには、語学関連では唯一の国家試験に合格し、あらゆる分野の国情を把握し、それなりの専門知識を具備することが要請され、殆どのガイドはそれに応えてきましたが、それにもかかわらず、その社会的、経済的な地位は漸次、低下するのみでした。この原因は客観的にもいろいろとあり、ガイド自身の努力だけではいかんともしがたい点があった事実は否定出来ませんが、一方ではガイド自身でとるべき可能で妥当適切な対策、手段をとることを怠り自らその墓穴を掘った感が無きにしも非ずであったことも、これまた否定できない事実です。」「今まさにその公正妥当な職業存続の正念場にあるガイド」~『通訳案内士の歴史』瀬口寿一郎氏:ハロー通訳アカデミーのブログに掲載

事ここに至って、通訳案内士の団体が結束し、通訳案内士の立場を守る運動を始めました。その尽力がぜひとも実ってほしいものです。
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