脱原発は司法がとりで 大飯3号機再稼働(2018年3月15日中日新聞)

2018-03-15 08:26:25 | 桜ヶ丘9条の会
脱原発は司法がとりで 大飯3号機再稼働 

2018/3/15 中日新聞

 関西電力大飯原発3号機(福井県おおい町)が14日、4年半ぶりに再稼働した。司法から運転差し止めを命じられた状態での再稼働となるが、地元では間近に迫った町長選でも「原発依存」から脱却する議論が盛り上がる見込みはない。全国最多の原発が集中する福井県の立地自治体からは、再稼働に加えて新増設を求める声すら出始めており、原発反対派からは司法に歯止めを期待する声が上がる。

 大飯原発があるおおい町の大島半島。車の通行もまばらな海岸沿いの道路に今月、町長選の掲示板が設置された。二十日に告示される町長選には現職と新人の二人が出馬表明したが、再稼働を認めた現職だけでなく、新人も「もちろん稼働を進めていく」との立場だ。「共存共栄」を掲げ、選挙戦で原発の是非が争点になる可能性は、ほぼない。

 「古くなれば使えんくなる。それまでに対策を考えないかんと思うんやけどな」。大島で漁業を営む男性(67)は示されない町の未来像を不安視する。大飯原発では、関電が老朽化対策が困難として昨年十二月、1、2号機の廃炉を決めた。

 「昔は道もなかった」という大島で、息子たちとも一緒に暮らせるのは、原発によって道路や働き口ができたからだ。男性は「止まっていても危険。再稼働には反対しない」と言うが、「福島みたいになったらおしまいや」と迷う。

 かつて全部で十五基あった福井県の原発は、既に高速増殖原型炉もんじゅを含む七基の廃炉が決まった。「ポスト原発依存」のまちづくりが見えない中、敦賀市議会は十三日の委員会で、原発の新増設や建て替えの方針を明確化するよう国に求める意見書を可決した。関電高浜原発がある高浜町議会も、昨年十二月に同様の意見書を国に出した。経済産業省が今春予定するエネルギー基本計画の改定に向けた見直し作業で、改定に盛り込んでもらうのが狙いだ。

 おおい町議会は意見書を出していないが、大飯1、2号機の廃炉を受け、ある町議は「町財政に甚大な影響が出る。新たな財源を探す中で新増設も出てくるかもしれない」と語る。一方、大飯原発から海を隔てて四・五キロしか離れていない小浜市泊地区の住民からは「怖い」「はよ止めてほしい」と本音が漏れる。

 大飯3号機は司法上、二〇一四年五月の福井地裁判決で運転差し止めを命じられている。関電が控訴しているため即効性はないが、名古屋高裁金沢支部の控訴審が結審し、判決待ちだ。島田広弁護団長は「控訴審の判断が示されていないにもかかわらず、再稼働されるとは司法の軽視」と批判する。関電の原発の運転差し止めなどを求める訴訟は計九件に上る。

 原発訴訟では、高浜原発を止めた大津地裁の仮処分を大阪高裁が覆した一方、広島高裁が昨年十二月に四国電力伊方原発(愛媛県)の運転を差し止める仮処分を出すなど「一進一退」の攻防が続く。近く再稼働を予定する九州電力玄海原発(佐賀県)も、二十日に仮処分の可否決定を控える。脱原発派が司法にかける期待は大きい。

 十四日はくしくも、大飯原発の設置許可取り消しを求める行政訴訟が大阪地裁であった。冠木(かぶき)克彦弁護団長は本紙の取材にこう強調した。「行政と立法に原発の稼働を止める力がない中、住民の安全を守る最後のとりでが司法だ」

 (中崎裕、山谷柾裕、豊田直也)

◆3原発4基が稼働中 玄海3号機は23日にも

 原子力規制委員会がこれまでに新規制基準適合と判断したのは七原発十四基で、十四日に再稼働した関西電力大飯3号機(福井県)を含めて三原発四基が現在稼働中だ。九州電力玄海3号機(佐賀県)が二十三日にも再稼働するほか、大飯4号機と玄海4号機が、五月中の再稼働を予定する。

 新基準に適合した東京電力柏崎刈羽6、7号機(新潟県)は、県知事が慎重な姿勢で、再稼働に必要な地元同意の見通しがない。運転期間が四十年超の関電高浜1、2号機と、美浜3号機(いずれも福井県)は二十年の運転延長を認められたが、対策工事に時間がかかる。

 四国電力伊方3号機(愛媛県)は昨年十二月、広島高裁が九月末までの運転禁止を仮処分で決定。四電の異議で決定が覆らない限り、期限内の再稼働はない。

 規制委は、九原発十二基を審査中。運転期限が十一月末に迫る東海第二(茨城県)は四十年超の運転可否も審査しているが、保有する日本原子力発電の準備不足で遅れている。期限までに審査を通らなければ、廃炉となる。

 (内田淳二)

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