安全問題研究会~鉄道を中心に公共交通と安全を考える~(旧「人生チャレンジ20000km」)

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【金曜恒例】反原発北海道庁前行動(通算318回目)でのスピーチ/ASTRIDと英国原発輸出の頓挫

2018-12-07 22:44:44 | 原発問題/一般
 皆さんお疲れさまです。

 昨日の北海道新聞の朝刊を見て驚かれた方も多いと思います。北海道電力が、泊原発の非常発電機の不良に気付かず、9年間も端子の取付不良を放置していたということです。改めて、北電のずさんな管理体制に怒りが湧きますが、その話はおそらく、他の皆さんもされるでしょうから、私からは別の話をします。

 昨年末に廃炉の方針が決まった高速増殖炉「もんじゅ」に代わって、日本政府が核燃料サイクルを継続するための切り札としていたのがフランスの新型高速炉「ASTRID」ですが、そのASTRIDの開発計画の中止をフランス政府が日本政府に申し入れてきたとのことです。フランス政府は、2019年までに10億ユーロ(約1200億円)を投じ、2020年代半ばまでにその後も計画を続けるかどうかを判断する予定でしたが、2020年以降、このASTRIDの開発に予算は付けないと決めたのです。その背景には、建設コストの高騰があるといわれています。これは国内では11月29日付けの日本経済新聞だけが報じています。

 ASTRIDが計画中止に追い込まれた場合、今度こそ本当に日本の核燃料サイクル計画は頓挫することになります。日本には今、原爆が6000発生産できる47トンものプルトニウムがありますが、プルサーマル型原発だけでは1年間にせいぜい1トンのプルトニウムしか消化できないといわれています。日本が保有しているプルトニウムの処理には半世紀近くもかかってしまうことになります。これでは処理とは言えません。

 追い詰められた日本政府は、そのうち破れかぶれになって、余ったプルトニウムの「処理」のため核兵器を作ると言い出すかもしれません。そんなことが起きるはずがないと思う人もいるかもしれませんが、ここまで日本政府が原発にしがみつく理由は核武装が隠れた最終目標だと考えなければ理解できません。

 米国で最初に核の「平和利用」を言い出したのは1959年のアイゼンハワー大統領で、核兵器を作る目的で保有した核物質の扱いに困ったことがそもそもの始まりでした。米国ネバダ州にある世界最大の核実験場を管理しているのが国防総省ではなく、原発を所管するエネルギー省だという事実こそ、核のいわゆる「平和利用」の本質を表していると言えるでしょう。天然のウランから原発の燃料にするためのウラン235を抽出すると、核分裂しないウラン238が残ります。このウラン238が米国の劣化ウラン兵器に転用されイラク戦争で使われたという事実もあります。軍事用の核物質が、いわゆる「平和利用」のための原発に回り、そこから出た核物質の残りかすがまた劣化ウラン兵器として軍事用に戻っていく。軍事用と「民生」用の核物質は一体のものであり、その両者の間をぐるぐると回っているのです。この悪魔のサイクルこそ核燃料「サイクル」の本質といわなければなりません。

 六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場はすでに20回以上稼働開始が延期されており、開始の目処はありません。この上ASTRIDも破たんすることになれば、破たんがはっきりしていながら日本政府が覆い隠してきた使用済み核燃料再処理事業の頓挫は今度こそ誰の目にもはっきり明らかになるでしょう。日本中の原発が使用済み核燃料であふれ運転できなくなる事態がますます現実味を帯びてきました。全原発即時廃炉をめざす私たちにとっては朗報だと言えます。

 今日はもうひとつ朗報をお伝えしようと思います。「ダイヤモンド・オンライン」によれば、日立が進めている英国への原発輸出が頓挫していることを中西宏明会長がかなり率直に認めています。計画は日立の子会社、ホライズン・ニュークリア・パワーが行い、発電所の建設費などを売電収入で回収するビジネスモデルなのですが、原発の安全対策のため総事業費が膨らんだ上に、発電した電力の買取価格が低く抑えられる見込みとなり、建設費が回収できるか怪しくなってきたためです。事業に必要な3兆円のうち2兆円について英国政府から支援を取りつけたものの、出資金でまかなう予定だった残り1兆円分の出資者がこのために集まらない状況になっています。

 英国政府が電力の買取価格を低く抑える理由は、電力が余っているからとしか考えられません。島国である英国が、EU離脱でヨーロッパ大陸からの電力供給を受けられなくなる可能性があるにもかかわらず、電力を安く買い叩けるほど供給に余裕があるのです。私は市場万能主義の立場は採りませんが、市場原理がきちんと働く限り、危険性の高い電源ほどコストが高くつき、淘汰されていくという事実を英国のこの事例は示しています。政府が原発を手助けし、さまざまなコストを税金に転嫁して、原発の電力が一番安く見せかけるような数字の操作も日本国内ではともかく、海外でははっきり限界に来たということでしょう。こうした流れに日本だけが無縁ではいられません。電力に限らず、あらゆる領域で国際社会と逆行する政策ばかり続ける安倍政権も、いずれその矛盾が解決不能になった段階で崩壊するでしょう。カギは政治よりも経済だと思います。アベノミクスを初めとする経済政策に批判を加え、安倍政権が国際社会や外部環境の変化に対応して、日々変貌する経済情勢に適応する力を失いつつあることを示していくならば安倍政権の限界は早晩訪れるはずです。寒い冬が来ましたが、無理せず地道に道庁前行動を続けましょう。

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