安全問題研究会~鉄道を中心に公共交通と安全を考える~(旧「人生チャレンジ20000km」)

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「日高線廃線を地元が容認」の北海道新聞の報道について

2016-10-26 18:36:48 | 鉄道・公共交通/交通政策
日高線の一部廃線容認へ 沿線7町、バス転換前提に

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 昨年1月の高波被害で鵡川―様似間(116キロ)の不通が続いているJR日高線について、沿線の日高管内7町の町長が、代替バスへの転換を前提に、一部廃線を容認することで合意したことが21日分かった。路線維持に伴う多額の費用負担は困難と判断した。11月に開かれるJRと道との沿線自治体協議会で表明し、今後はバスの運行形態やルート、地域振興策などをJRと協議したい考え。ただ、鵡川―日高門別間の路線維持を求める声もあり、廃線区間は調整が必要とみられる。

 日高管内の浦河、日高、平取、新冠、新ひだか、様似、えりもの7町長が17日、札幌市内で同管内選出の道議と非公式で協議した。

 その結果《1》運行再開を断念し、不通区間の復旧を議論する沿線自治体協議会は11月の次回で終了する《2》JR北海道からバス転換の正式提案を受け、条件面の協議に入る《3》バス転換に伴う地域課題などを話し合う新たな協議組織を設立する―ことを確認した。

 一部の町長からは鵡川―日高門別間については運行再開を求める声があった。「住民の利便性を損なうことがないようにするべきだ」「(JRや国、道から)さまざまな支援を引き出すことが重要だ」といった意見も出た。
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10月22日付の報道になるが、上記の通り、日高線沿線の7自治体の長が、バス転換を前提に廃止を容認することでまとまった、とする内容を北海道新聞が伝えた。しかし、結論から言うと、この報道は完全な誤報だ。

沿線7町村長が会合の場を持ったことは事実だが、この会合には道もJRも出席しておらず、廃線協議をする場ではない。沿線町村長による単なる懇談会程度の位置づけに過ぎない。また、沿線7町村長の意見もバラバラだ。廃止絶対反対から、やむなく容認まで大きな隔たりがあり、存続、廃止のいずれにもまとめられる状況にない。

当ブログがこのように断言できるのにはいくつかの根拠がある。まず、この報道に関し、沿線の自治体が正式に北海道新聞社へ抗議の申し入れをしたことを、別の地元紙「日高報知新聞」が報じている。



ちなみに、抗議文は以下の通りだ。



この問題については、2日後の10月24日、NHK北海道放送局も、ローカルニュース枠で伝えている(参考記事「日高線13億円負担せずで一致」)。

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運休が続くJR日高線をめぐり、地元の自治体は、会社側が負担を求めた13億円あまりの維持費について負担は難しいという認識で大筋で一致し、来月上旬にも開かれるJRなど関係者の会合で伝える一方、路線存続に向けて引き続き模索を続けることにしています。

去年1月の高波による被害以降、運休が続くJR日高線について、JR側は先月、運行再開のためには、赤字補てんや最小限の老朽対策費として13億4千万円を負担するよう沿線の7つの町に求めました。

これについて、7つの町の町長らがこのほど協議した結果、負担は難しいという認識で大筋で一致し、来月上旬にも開かれる関係者の会合でJR側に伝えることを決めました。

一方で、自治体側は、路線存続に向けて何らかの対応策がないか、引き続き模索を続けることにしています。

日高町村会長で新冠町の小竹國昭町長は24日、NHKの取材に対し、「13億円というのは非常に重い負担であり、町の財政的にも負担できるものではない」と述べました。

そのうえで、「日高線を存続したいという気持ちもあり、沿線の町でつくる協議会の中で利用促進策を提案するなど存続に向けた取り組みを一生懸命続けている。今後の協議でJR側が日高地域の公共交通をどのように考えているのかを確認したい」と述べて、日高線の存続を引き続き求めていきたいという考えを示しました。

また、浦河町の池田拓町長は、記者団に対し、「13億円あまりの地元負担は到底受け入れられない。浦河町としては交通弱者を含めた住民の復旧してほしいという思いを形にしていきたい。しかし、JRの厳しい経営状況も理解できるため、あくまでも復旧を柱にしながらさまざまな方法を模索していきたい」と述べました。
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いずれにしても、現時点で、日高線沿線町村が廃止に同意したという事実はない。

現在、日高線の復旧、存続を求める地元の市民団体が、北海道新聞に記事の削除と撤回、謝罪を要求しているが、北海道新聞は再三の要求にも頑として応じる気配がない。そうしている間にも、北海道新聞の記事に基づいて「廃止決定」という誤った情報が独り歩きしていることを危惧しており、安全問題研究会としても、北海道新聞社へ記事の撤回・謝罪要求を出すことを検討している。

北海道新聞社は、仮にも地元紙として、地元住民の足、交通権を守る立場からの報道を心がけるべきであると当ブログは考える。このような住民利益に反する大誤報事件を引き起こしながら、今後も記事の撤回・謝罪要求を拒み続けるなら、北海道新聞の地元における信用が失墜するとともに、それなりの末路が待っているということを、当ブログは警告しておく。
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