旅立ち

2010年01月21日 | Weblog
 私は普段緩和ケアという場所で仕事をしています。緩和ケアって聞いた事無い人も多いかもしれませんが、病気によって苦しんでいるその人の苦しみを取り除き最期の時間をよりよく生きる、生ききることを援助する仕事です。
人はいつか死にます。だから、今ある命を精一杯生きたいと思います。病院での出来事は個人情報の保護のためあまりお話できませんが、日々色んなドラマがあります。

 昨日一人の女性 Aさんが旅立ちました。
その方はまだ60歳の若さで、自分が衰える姿を孫達にみせたいといい一緒に寝泊まりをして、彼女の生きているありのままの姿をみせていました。お孫さん達はまだ、人が死ぬということがわからないかもしれない幼い子達でしたが、しっかりおばあちゃんを見つめ、手を握ったり、顔をおばあちゃんのおでこにつけたり、しっかりおばあちゃんを見つめていました。最期、家族が見守る中静かに息をひきとりました。A氏の娘さん(その子にとっては母親)が涙をこぼすその姿をみて、ジェスチャーで「何で泣いてるの?」「何でかなしいの?」と一生懸命母親の背中につかまっていました。
旅立ちの時間。
病院に寝泊まりして一度も涙をみせなかったお孫さんが、急に母親の胸に飛び込み、言葉にならない声で泣き始めました。
Aさんは旅立ちました。Aさんの生きた証はしっかりお孫さんの心にとどきました。そして、思い出の中で生き続けていきます。

そう、命はつながるんだな。