中谷美紀
「嫌われ松子の一生」は、もう、ぶっ飛んでいる。 最高の映画だ。
「ムーラン・ルージュ」か、「シカゴ」か、
はたまた「親切なクムジャさん」
え!これが中谷・・!?
映画が始まって、まず びっくりした。
いままで中谷美紀が、コメディぽかったのは「ケイゾク」だが、
「嫌われ松子の一生」はもう、ぶっ飛んでいる。
「ホテルビーナス」のワイフ、「電車男」のエルメス、「力道山」の妻、
いままで、中谷は中谷のイメージのなかで、いろんな役を演じていた。
しかし、今回は“中谷”の枠を超え、自分の限界ぎりぎりまで、
松子を演じきっている。最高の演技だ。
しかし、それは結果であって、そこにいたるまでの、彼女の苦悩は深かった。
「あんたの感情なんかいらないんだよ!」と中島監督に暴言を吐かれ、
中谷は完全に切れて、こわれてしまう。
香川照之の連載エッセイ 日本魅録(79回)
「お帰り、松子」
を読んでいると、中島哲也監督は、鬼かと思う。
「嫌われ中島監督の演出」だ。
“松子を演じた子役の女の子に比べ、
「中谷さんは寄り目とか何か面白くないんだな。すごく駄目」
とか何とか言いながら、ある日の午前中、そのひょっとこ顔を
中谷美紀に延々百回以上本番させていた・・・・“ キネマ旬報6月上旬号
百回・・・。
一度、中谷美紀を壊して・・・クラシュ&ビルド・・建て替える。
“ひょっとこ顔 百回”は、中谷美紀のプライドやら、看板女優という意識を
ぶっ壊すセレモニーだったのだ。
「下妻物語」の深田恭子や土屋アンナにもこんなスパルタを施したのだろうか・。
「嫌われ松子の一生」も、「下妻物語」も日常からはるかに、ぶっ飛んでいる。
その“非日常”を役者に出させるためには、
普通の演出とかでは生ぬるい、とことん追い詰め、
狂気すれすれの世界に、役者を持っていく。
「松子は“不思議の国のアリス”のように、
たまたま不幸な世界に迷い込んでしまった・・・
そういうファンタジーに見せたい。」 中島監督談
「クランクインのときに、監督に、私の病気なんですか?って聞いたんです。
そういうのって大切でしょ。そしたら監督そんなんしらねよって。」
松子の妹役、市川実日子談
しかし作品が出来上がってみて、みんな納得した。
中谷美紀は、最初に自分のクレッジトが出たときには泣いていたという。
P.S.
中谷は映画がクランクアップしてからは、もう何もしたくなくなった。
転地療養を兼ねて、インドへと旅立つ。
あの過酷な映画現場を乗り越えられたのだから、
一人でインドに行くことなどなんでもない・・・。
中谷美紀の演技力にはびっくりです。
いろいろ大変だったみたいですが、頑張ったかいがあった作品ですね。
コメント ありがとうございます。
「嫌われ松子の一年」 中谷美紀著
が出ています。
原作「嫌われ松子の一生」は持っているので、
今度、あわせて、読むつもりです。