ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

Blue blazer with sterling silver buttons

2010-10-09 04:00:00 | 白井さん


 セパレート・スタイル・・・着こなしを楽しむこと、またコーディネートを学ぶ上で普段から積極的に取り入れたいジャケット&パンツ。なかでも主役として人目を惹く上半身を占有する“ジャケット”は、スーツと共にこの項でも毎回タイトルにその名を冠する華やかな存在。ですが、それに比べると下半身を支える“パンツ”は、全体の占有率ではジャケットに次ぐ大きな分量があるにもかかわらず、ついつい見過ごされがちな地味な存在。

 今日は白井さんのお話を受けての“パンツ考”です!

  

 『(ア・)カラチェニなんかはやっぱり履き心地が良いよね。股上が深くて、“くり”がいいんだよなぁ、ウェストの収まりも良いしね。やはりカットが一番大事!縫製なんかよりもね。ただパンツって難しいよね、上半身よりも下肢の動きの方が、立ったり座ったりしてはるかに多いからね。でも何故か疎かになってる。まず、値段が安い。シャツなんかもそうだね。ジャケットは何十万円もするのがあるのにパンツはせいぜい数万円でしょ?パンツ(既製品)のハンドメイドなんて殆ど無いしね。』

 白井さんは、感覚や感性といった部分を磨くのに最も大切な10代~20代の頃に、既製服以前の仕立て服の時代をご経験されています。当時の仕立て服はまさに“英国そのもの”といった感じで、本場の服作りを、良い意味で、そのままコピーするように“しっかりとしたものづくり”をしていたそうです。当然全てハンドメイド。

 白井さんは、既製品のパンツはそれらが世に出回り始めた当時から既に金額面で低く抑えられていて、それが現在も慣行として続いていることが、パンツが疎かにされている大きな要因の一つだと思われているようでした。やはり最初の価格設定が低く抑えられてしまっていては作る側のこだわりにも限界があるのでしょう。また、買う側にも最初から“たかがパンツ”という意識が濃厚にあるのかもしれません。

 売れないから作らないのか、作らないから売れないのか、“卵と鶏どちらが先か”という問題に似ていますが、やはり金額的な扱いには作る側・売る側・買う側の意識が正直に反映されているのでしょう。もちろん私だってパンツがそれほど大事なアイテムだとはつい最近まで全く知りませんでした。

 70年代初頭、白井さんが欧州へ仕入れに行かれるようになった当時のこととして、作りの良し悪しはまた別問題として、シャツやパンツの金額が日本に比べて高かったことはちょっとした驚きだったそうです。やはり日本と欧州ではシャツやパンツといった準主役級アイテムの扱いに違いがあるのでしょうか。ちょっと文化人類学的な難しいテーマになってしまいそうなので私には扱いかねますが、ここには洋服を着こなす上での重要な“鍵”が潜んでいそうです。

   

 白井さんは、

 『勿論、人それぞれ好みがあるし、体型だって違うし、時代によって多少の流行の違いもあるけれども・・・』

 と前置きをされつつ、

 『やはり全体のバランスが大事、極端なものは避けた方が良いだろうね。極端に細いだとか、極端に丈が短い、とかいうよりは、やはりある程度は裾幅や渡りはあったほうが良いだろうし、丈もワンブレイクくらいはあったほうが良いと思う。その方がエレガントなんじゃないかな。例えば膝下丈くらいの重たいコートを着た時なんか、その下に見えてるパンツが細くて短かったらちょっとバランスが良くないもんね。』

 と、仰っていました。

 リヴァース・ツープリーツ、やや幅広のダブルの裾、といった“白井流”の代名詞的な(といっても私が勝手に自分の中で代名詞にしているだけなのですが)ディティールについても伺ったところ、

 『別に“何が何でも”ってわけじゃないよ(笑)。ウェスタンスーツなら当然ノープリーツだし、例えばツイルっぽい素材、キャバルリーツイルだとかカヴァートクロスなら裾はシングルだっていいだろうしね。軽い綿のパンツなら裾幅、渡りなんかは多少細めにしたり、フランネルだったら裾の折り返しはある程度ボリュームをもたせたり、全て“素材によりけり”だね。あ、でもストレッチ素材?あれは嫌だね!膝が伸びちゃって気持ち悪いんだよ。』

 とのこと(笑)。