ひたふる君を

夜くればものの理みな忘れひたふる君を恋うと告げまし  …九條 武子…
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題詠blog2009投稿歌百首

2009-06-29 15:09:04 | 短歌
01:笑   
足の先から女へと変わりゆくペディキュア塗りつつ「ふふん」と笑う
02:一日
ひそやかに薄紫のボディジェル乳房にぬりて終える一日
03:助
永遠に終わらぬ助走かもしれず跳ぶべきバーは陽炎の外
04:ひだまり
ひだまりに似たる優しさ持たざりき雪のをみなの凍れるかひな
05:調
胸冷ゆるほどに沁みをり明け方の夢の胡弓の哀しき調べ
06:水玉
涙ではないですこれは柄なのよデニムの膝にできた水玉
07:ランチ
ラザニアの熱さがなぜかうれしくてうふっと笑う一人のランチ
08:飾
胸の奥きらめくピアスうつごとくまひるまひとりめくる装飾樂句(かでんつぁ)
09:ふわふわ
風に乗りいけるとこまでいけばいいふわりふわふわたんぽぽわたげ
010:街
ハイヒール鳴らして走るオフィス街われを救える人などなくて
011:嫉妬
嫉妬とふ黒い悲しみひたとみる御息所の裔なるわれは
012:達
1パック他生の縁でひしめいてタイムセールのプチトマト達
013:カタカナ
言い出せぬ小さな嫌悪胸にある君はわが名をカタカナで呼ぶ
014:煮
とめどなく醜き灰汁を噴きこぼす煮えくりかえるわれのはらわた
015:型
おやこれはかぐやの姫の乗り捨てしたけのこ型のロケットならむ
016:Uターン
もう一度桜吹雪を浴びたくて四月の午後にUターンする
017:解
髪解(ほど)く指の間をさらさらと夜の底ひに落ちる悲しみ
018:格差
格差婚明暗分けるポイントはきっと二人の品格の格
019:ノート
ひと冬の恋の記憶を積み込みて遠ざかりゆくスノートレイン
020:貧
収入の多寡のみでない「貧」のありかなしからずや花なき部屋は
021:くちばし
もうだめだとまらないんだわたしいまとんでもないことくちばしってる
022:職
職業欄「その他」に丸を打ち終えて夜にとけゆく吟遊詩人
023:シャツ
ユーミンの歌なぞるようあぁ君のチェックのシャツが風に膨らむ
024:天ぷら
天ぷらで言えば海老的立場だしいわゆる高嶺の花かと思う
025:氷
たちまちに刃にかわる薄氷を渡りて居りぬ割れなばもろとも
026:コンビニ
コンビニのレジの隣の肉まんの湯気の向かふにあると思ふな
027:既
窓際の部長のデスクの上にある既決の箱にはいる夕暮れ
028:透明
川浪を見下ろすわれに透明な宇治の橋姫ひたと添ひくる
029:くしゃくしゃ
くしやくしやのシルクハツトの中で待つ鳩の孤独に惑ふマジシヤン
030:牛
本当は牛がいいけど諸々の事情で今宵しゃぶしゃぶは豚
031:てっぺん
天下人こぞりてこひし鳴き声はてっぺんかけたか特許許可局
032:世界
しとしとと涙ぐむ夜のあくるけふ月世界より使者のおとなふ
033:冠
月光の雫うるはしわが君の髪にゆうらり金の冠
034:序
右手(めで)に持つ扇子の先の真・善・美見ゆるかわれよひたと序の舞
035:ロンドン
君に告ぐロンドン橋は落ちにけりうちな帰りそわがもとおはせ
036:意図
深い意図なんてなかったチョコレート運命かえる引きがねとなる
037:藤
地にとどく長きしなひの藤の花娘心はときに重たし
038:→
「順路→」とふ貼り紙どおりに来たつもり最低三つは見落としたけど
039:広
人ごみの泉の広場すり抜ける愛されたいとはなんと不遜な
040:すみれ
髪色は紫にするアポロンを拒み通したすみれのやうな
041:越
さみしさのK点越えだ膝を抱き黒く小さなピリオドになる
042:クリック
クリックにクリック重ね午前二時仮想空間漂ふくらげ
043:係
知らぬとは美しきこと汝が腕に係留されつつ朽ちてゆく舟
044:わさび
体内をめぐりゆつくり流れ出づわさびの殺菌作用を思ふ
045:幕
君の背が遠のく幕はひかれゆくああ耳元で拍子木が鳴る
046:常識
常識の範囲内へと押されゆく間違ってるのはあなたの方だ
047:警
警戒心なんて捨てなよ毒りんご食べなきゃ王子は来ないんだから
048:逢
夢にのみ逢はむとおもふ葉桜の木の下やみの夢にのみ、ゆめ
049:ソムリエ
唇はソムリエナイフボルドーの罪のコルクをゆらゆらと抜く
050:災
雨降って地はかたまらず災ひは転じはしない別の船乗る
051:言い訳
どうせならもっとおもろい言い訳をしてよ愛想もつきるくらいの
052:縄
やすやすと笑みつつ友が飛び込める大縄の弧を呆然と見る
053:妊娠
妊娠はあきらめたけど赤ちゃんができたら…なんて今もなおふと
054:首
ねぇにゃーこ首輪をあげるわきらきらのここからどこにもいけないように
055:式
ほうほうほうほうたる出でよこの闇夜和泉式部の歌のごとくに
056:アドレス
情けなさだけが残れりわたくしは愛されていたアドレスを消す
057:縁
背けども縁の糸の固結び色目ふりゆくおぼろくれなゐ
058:魔法
永遠にお茶の冷めない魔法瓶なんてないのは知っているけど
059:済
もう済んだことぢやないのと蓋をすることことことことお鍋は煮える
060:引退
引退の男の花道忘れまじ永遠の四番は男清原
061:ピンク
花びらにあはきピンクの斑(ふ)は浮きぬ君住む島の形はありや
062:坂
をのこには決してわからぬ上り坂長くかなしき女坂ゆく
063:ゆらり
午後十時帰る帰らぬ君を見るエレベーターはゆらりと揺らぐ
064:宮
橘の小島の契り千年経り匂宮よいづこにおはす
065:選挙
なぜなんだ安倍晋三があさつてを見てゐる選挙ポスターを見る
066:角
ほろほろと角のとけゆく角砂糖世界はこんな脆く儚い
067:フルート
私には生涯かかわることのなきものとしてある銀のフルート
068:秋刀魚
隠し事なんてないですご覧あれさんまのように開かれてみる
070:CD
吾を恋ふと言ふ人の嘘ひとつづつ撥ねつけながらまはるCD
071:痩
一年(ひととせ)を君なく住まふもの想ひしづむ織姫かひなや痩せぬ
072:瀬戸
いやまさになまめきたまふ姫君のあまたおはさふ瀬戸内源氏
073:マスク
おはりなきマスカレードのこの浮世マスクの下を見たがる男
074:肩
あまやかに私の肩に歯を立ててマーキングせり男はあはれ
075:おまけ
こぶだしとかつをだしとのあはせだしおまけにあなたひとのものだし
076:住
海は産み底ひ冷たきみづうみの藻の奥住まふ孕まぬ人魚
077:屑
行く川の流れに藻屑となり果てし千の文殻万の花殻
078:アンコール
アンコール待たず去りゆく生き方も或るひは一つの誠意と思ふ
079:恥
君にあふ時はなんだか恥づかしく少し怖くて膝の震へる
080:午後
約束のないみなづきの午後なればゆるゆるねむる睡蓮の花
081:早
早川の堰きも堰かれぬ激情に深まる夜の高速に乗る
082:源
きぬぎぬのメールひそかに待つわれは源氏の姫のいづれに似たる
083:憂鬱
憂鬱なため息ひとつまぎらはし所詮私は赤くは咲けぬ
084:河
ゆふぐれの河原町ゆくかりそめの恋と知りつつ手をとりてゆく
085:クリスマス
クリスマスイヴの宵ゆゑやはらかに白きケーキを購ふてみる
086:符
五線譜ゆ音符したたり落ちるやう四月の雨はやはらかく降る
087:気分
気分屋の君の機嫌でまへうしろ上下左右に揺らされてゐる
088:編
今朝がたの雨の雫を編みこみて銀に光れりささがにの巣は
089:テスト
ひとつづつ私のパーツをテストして記録してゆく君の唇
090:長
今し虹南の空に消ゆるらし長くかなしき夢はおはりぬ
091:冬
冬草の離(か)れゆくそなたに六つの花はかなはかなと舞ひてしやまむ
092:夕焼け
背の高き夕焼け似あふをのこあり骨ばる肩に落ちゆく夕日
093:鼻
冬なれば冷ゆる鼻先赤らみて末摘花になりにけるかも
094:彼方
玲々とシャンパン色の今日の月彼方の国の君も見るらむ
095:卓
卓見と思へど素直にうべなへず目をそらしつつ閉づる携帯
096:マイナス
見えねどもここに確かにあると思ふたとへばマイナスイオンのやうな
097:断
嗤ひつつ赤信号を駆け抜ける横断歩道柄の縞馬
098:電気
風神と雷神ならば雷神にくみすと言へる電気技術者
099:戻
君殺め人魚に戻らむ深海の化生となりて一生(ひとよ)過ごさむ
100:好
永遠に好きな男と思ひけり雪兎(ゆきさうさぎ)の南天の赤

2 コメント

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見沼田圃の畔から (鳥羽省三)
2010-01-11 22:30:03
 マイブログ「見沼田圃の畔から」に掲載していた「一首を切り裂く」の更新を、お題「001」から「100」まで、本日午後、完了致しました。
 その記事の中には、御作について論じさせて頂いたことも多々在ると存じます。
 ご多忙中、大変失礼とは存じますが、何卒、ご一読のうえ、ご感想などをお聞かせ頂ければ幸甚と存じます。
        正月十日余り一日  鳥羽省三
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鳥羽様 (ゆき)
2010-01-12 13:11:34
ご丁寧なごあいさつおそれいります。
拙歌を何首も取り上げていただき感謝いたします。
これを励みに、これからも精進いたします。
どうもありがとうございました。
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