フッフッフの話

日常の中に転がっている面白い話、楽しい話!

「本所しぐれ町物語」

2008-01-22 11:02:26 | 
 藤沢 周平著 新潮社 昭和62年3月発行
 本所しぐれ町で暮らす人々の日常を、
きめ細かく、12場面で描いている。
ある場面では主役になり、次の場面では脇役として登場する。

”約束”
 母が亡くなった後、幼い与吉とおけいの世話をしているのは、
10歳のおきちである。頼りにする父親の熊平は、
毎晩のように、酔いつぶれて帰る。
その日も帰らぬ父を待っていたが、
待ちきれなくなって、夜更けの町に出た。
熊平の行きつけの茶漬け屋”福助”にも姿が見えない。
ツケで飲ましていると、嫌味も言われる。

 枯れ草に覆われた岸から、
水面に向かって黒い物が斜めに倒れている。蛙に似た声もする。
近寄ると、父熊平が倒れて大いびきをかいている。
おきちがいくら揺すってもピクリとも動かない。助けを求めに走った。

 3日目になっても、熊平は起きない。医者を呼ぶにもお金が無い。
大工朝太がぬっと入ってきて、熊平の様子を伺いながら、
サイコロ遊びの金1両2分を貸していると言う。
祈祷師・おつなが内緒の金貸しをしている事を、
おきちは知っていた。そこに行き、
粘ってついに5百文借りる事ができ、すぐに医者を呼んだ。
しかし、なすすべもなく翌朝熊平は死んだ。

 幼い与吉とおけいの二人を預かってもらう所が決まる。
おきちはさらに2両の借金を,おつなに頼む。
大工朝太に1両2分と、残り2分は油屋と味噌屋の借金、
”福助”の酒代のツケ全て払うと言う。
おつなは2両貸すから、良い働き口を紹介しようと言って、
女郎屋に売る。

 おきちは、「親の借金は、子の借金ですから」と、
一人前の大人のように言ったが、言い終わると同時に、
泣きじゃくりながら女衒について行った。

 その後おきちは、料理茶屋菊本の主人に「菊本で働かないか」と
言われて引き取られている。
この事は、最後の場面「秋色しぐれ町」にでている。

 藤沢周平の作品は、ほとんどホッとするような場面でおわるので、
読後が気持ち良い。
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