フッフッフの話

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「死」

2005-08-02 21:09:07 | 
 野上 弥生子著 加賀乙彦編 岩波文庫発行
「野上弥生子短編集」より、
三人の女友達が、各自の経験した死について語っている。
祖母の死が二編と子供の死一編が納められている。
10年近くも死と向き合っている86歳の祖母についての、
赤裸々な表現が、ずっしりと心に落ちた。その箇所は、
「血液は暗い、細い管の中に86年間の単調な運行に倦んで、
古沼の汚水のように涸れ濁っていました。
肉は遠く逃げていった若さと美を悲しみながら、
やがて還るべき元素を思わせるような弾力の無い、脆い、
褐色の固体となって、骨格の周囲にからびついていました。……
…………老いはその人の肉を削り血を涸らすと一緒に
胸の中の人間らしい性質をも一つ一つ滅ぼして
行ったのでありました。…………………」
著者29歳の時の作品である。
更に厳しい指摘が、各所に素直に書かれている。

写真は、Y氏提供。
コメント
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