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福岡にてシンポジウム「ギグエコノミーとライドシェアの正体~労働破壊の現実~」を、九州労働弁護団・日本労働弁護団・交通の安全と労働を考える市民会議の共催で開催!②

2018-05-15 | 書記長社労士 公共交通

 5月9日、シンポジウム「ギグエコノミーとライドシェアの正体~労働破壊の現実~」を、九州労働弁護団・日本労働弁護団 http://roudou-bengodan.org/ ・交通の安全と労働を考える市民会議 www.forumtsl.org の共催で、福岡の津久志会館にて開催。
戸崎教授の講演に続いて、浦田誠国際運輸労連(ITF)ロンドン本部内陸運輸部長が、以下の講演を行った。


 ウーバーは2010年にサンフランシスコで事業を開始しましたが、瞬く間に世界へ進出しました。
翌年にパリへ進出したのを皮切りに、トロント、シドニー(2012年)、ヨハネスブルグ、メキシコ・シティ(2013年)へ進出、この7年間、事業拡大はたいへん急速でした。
* 2013年末―21ヵ国・60都市
* 2015年末―67ヵ国・352都市
* 2017年9月―84ヵ国・632都市

 ライドシェアをめぐる昨年の主な出来事は、次のとおりです。
(1) セクハラ問題や一連の訴訟、ロンドンの免許失効、ハッキング問題などやまぬスキャンダルで、ウーバーの一強独走態勢に陰りが見えること。
(2) その代わりに世界各地で競合他社が大きく事業を躍進させ、ライドシェアは戦国時代に突入したこと。
(3) 欧州では、ウーバーPOPが公然と営業できなくなったこと。
(4) ライドシェアの進出で、タクシー産業では自殺者を出すまで働くものが困窮しているが、ウーバーなどで働く労働者も過当競争や一方的な手数料の引き上げなどに苦しみ、抗議行動が多発したこと。
なお、日本は世界で唯一、ライドシェアを水際で食い止めているという国だという点で、特筆に価します。


 「週刊金曜日 2018年2/2号」の記事に詳しく書きましたが、コペンハーゲンにウーバーが登場したのは3年前でした。
その違法性は一目瞭然でしたが、市民は「便利でクールだ」とも感じていました。
そこで当該組合は、既得権を主張する反対運動だけで良いのかと考え、有名コメディアンをウーバーマンに仕立て、「税金を納めないライドシェアが広まれば、福祉国家が壊れていく」と、面白おかしく訴えたのです。(https://player.vimeo.com/video/164924072?controls=0&hd=1&autohide=1
このメッセージは国民の琴線に触れ、世論を変えました。
こうしたキャンペーンによって、ウーバーは昨年4月、デンマークから完全撤退しました(ウーバーイーツを除く)。
ウーバーがこのように白旗を振るのは珍しいことです。
そこまで周知徹底したキャンペーンだったということでしょう。

 ロンドン交通局は昨年9月22日、アプリを使って配車するウーバー社の営業免許の更新申請を却下しました。
同社が「企業責任に欠け、公共の安全と安心を脅かしている」という判断です。
重大犯罪の報告や運転手の健康記録・犯罪歴に関する情報提供が不適切だったと述べました。
ロンドンでは10日に一度のペースでウーバー運転手による婦女暴行事件が起きており、警視庁も問題視していたのです。
規制当局の捜査を欺くソフト「グレイボール」を使っているという嫌疑も晴れませんでした。
なお、ウーバーはこの決定を不服として上訴しており、その期間は営業が認められています。

 「ライドシェア敵視は時代遅れ」のような意見が日本では未だ一部にありますが、むしろそうした主張こそが時代遅れではないでしょうか。
「素人が自家用車を使うウーバーポップは例外を除いて欧州では禁止されている。ドイツではライドシェアを使いたいと強く望んでいる国民は全体の14%」と11月10日付けのワシントンポスト紙は報じています。

 デンマークの世論は、「福祉国家を守ること」を優先しました。
ロンドンの世論調査結果も含め、欧州にはやはり米国とは違った生活・文化があるといえるでしょう。
米タクシー界の第一人者であるマシュー・ダウス氏は、「欧州には米国にない哲学がある。ライセンスのないサービスにはブレーキをかける。安全と労働者の権利を優先する」と評しています。

 日本では、「岩盤規制」が批判の標的にもなりますが、欧州の人々は「欧州の砦」を胸を張って守っているようにも見えます。

 シカゴでは、約7000台のタクシー営業権を市が交付していますが、そこへライドシェアの認可が下りたのは2016年6月。
シカゴのタクシー組合が作成したレポートでは、①当初9万台だった違法運行のウーバーとリフトの車両がわずか1年で23万台に達した、②タクシーの水揚げは1台の月平均で39%減、③月平均の実車回数は52%減、④運転手の平均月収は2000ドル減、と報告されています。
シカゴ市議会は、ライドシェア容認の是非を巡って大議論を交わしました。
その過程で、指紋認証で運転手の身元を照会したり、身体障害者が車椅子でアクセスできることを義務化する妥協案が浮上。
しかし、土壇場になってシカゴ市長はこうした条項を削除した条例を押し通したのです。
タクシーとは別枠の条例なので、高価なメダリオンを取得する必要もありません。
市長の実弟はウーバーに投資する実業家で、後日同社に抜てきされた市の官僚もいました。
今年に入り、ウーバーの幹部が違法に市長に働き掛けていたと、シカゴ倫理委員会が9万ドルの罰金を命じています。
恥知らずの政治家がウーバーに買収され、勤労者が翻弄されている姿が浮かび上がっています。

 2月5日。ニューヨークで長年ハイタク運転手だったダグラス・シフターさんが拳銃自殺しました。
「もう続けられない。奴隷じゃない」という遺書の残しています。
この10年以上、ずっと毎週100~120時間働いていました。
仕事を始めた1981年の二倍に達していました。
「2013年には47,000台だったニューヨーク市内のタクシー・ハイヤー車両は、今では10万台以上となり、その約3分の2はウーバーなどのライドシェア車両」とNYタイムス紙(2月6日)は伝えています。 
日刊工業新聞の「NY『イエローキャブ』苦境 6万台のウーバーへ客流れる」と題する記事では、「2014年にローンを組み、ニューヨーク市が発行するタクシー営業許可証『メダリオン』を105万ドル(1億1900万円)で購入したが、当時と違い今は1日に200ドルも稼げない。借金を毎月返済しなければならないのに」というイエローキャブ運転手・シェイクさんの悲痛な叫びが載っています。 
経済的に困窮して自殺したハイタク運転手は、シフターさんを含めこの四ヵ月で四人もいるのです。
同市のタクシーリムジン委員会も「過剰供給」を認めています。
タクシー・ワーカーズ・アライアンスが、市庁舎前で開いたシフターさんの追悼式には、ブラジオ市長も列席しました。
しかし、ウーバーにとっては他人事なのか、この件ではずっと沈黙したままです。

 「ライドシェアは、現代の奴隷制。運転手は、一時間7豪ドル(約600円)も稼げない」と断言するのは、オーストラリアでタクシー専用の配車アプリ立ち上げた創業者です。
英下院ビジネス特別委員会では、全国最賃の7.5ポンド(約1100円)を下回る6ポンドが取り分だと、あるウーバー運転手が証言しました。
米国でも、ライドシェア運転手の平均時給は7ドル(770円)だという報告もあります。
運転手が儲かると感じるのは、自家用車の維持コストを考慮していないからです。
「高収入をうたって運転手を集めた後に手数料率を引き上げた。騙された」と怒ったのは、ハノイのウーバーや地場「グラブ」の運転手たち。
8時間で70万~80万ドン(3400~3900円)の収入となるが、手数料や個人所得税、その他費用を差し引くと手元に残るのは20万ドン(980円)。
ナイジェリアのウーバー運転手の場合、諸経費を差し引くと手元に残るのは一日10ドルくらい。
「交通の安全と労働を考える市民会議」の招きで昨年9月末に来日した、元ウーバー運転手のディオジェネス・カラスコ氏もこの点を強調しました。
「最初の1年は週に1500~2000ドル稼げたが、2年目からウーバー側の運賃値下げや手数料値上げ、ドライバーの増加によって収入が激減。昨年までの2年間で最終的に運賃は35%引き下げられた」。
アムステルダムでは、一方的に引き上げられる手数料を下げるよう求め、ウーバー運転手がストを打ちました。
エストニア生まれの「タクシファイ」の運転手は首都タリンの本社前で2月2日、新賃金システムに抗議。需要供給の変動で運賃を変える「サージ」の導入で、運転手の月収が2~4割減ったとエストニア労連は指摘しています。

 ライドシェアは今、公共交通の利用者に侵食し始めており、この傾向は今後も続くことでしょう。
ウーバーやリフトは、相乗りサービスを発展させ、バーチュアルなバス路線を作り上げようとしています。
かつて、アマゾンはネット上の本屋さんでしたが、それからCDやDVDも売り出し、今では、オンラインの総合デパートです。
同様に、ウーバーなどライドシェア各社がいつまでもタクシー業にとどまっているとは思えません。
英国のリバプール市で、バムーズ(Vamooz)という会社が事業を始めました。
ウーバーのようなアプリを開発し、オンデマンドでバスを配車するというもので、フランスの公共交通会社で多国籍企業のトランズデブ(Transdev)が出資しています。

 ウーバーのダラ・コスロシャヒCEO(最高経営責任者)は、2月19~20日に初来日しました。
来日時の彼の主な発言は
* 「日本のタクシー業界と協力していきたい」―安倍首相との面会で。
* 「当面はタクシー会社へのシステム提供に専念したい。日本各地のタクシー会社と提携し2020年をめどに配車サービスを全国展開したい」―マスコミ取材で。海外と同様に日本市場でもライドシェア(相乗り)事業の展開を模索してきた同社の経営姿勢の転換と報道された。
* 「日本のタクシーは質が高いが運転手の稼働率が低く長時間働きすぎている。我々のシステムを通じ生産性向上に貢献したい。運転手と乗客の需給を瞬時に価格で調整する価格決定の仕組み『ダイナミックプライス』を日本でも提供したい。当局とはこれから対話を始めていく」―日経とのインタビューで。
* 料理配達サービス「ウーバーイーツ」を年内に全国5都市に広げ、その後も順次拡大していく方針―共同とのインタビューで。毎日などが報道。
* 「私がウーバーのCEOになったときはソフトバンクの出資の話はすでにあった。まだ早すぎると再検討する選択肢と出資交渉を続ける選択肢があった。ソフトバンクは世界で次の交通革命を率いる企業に投資をしている。ビジョンのある会社の出資を歓迎している。ソフトバンクからは日本の市場について学ぶことができる。ソフトバンクとビジネスをするなら競争を伴うこともあると慣れないといけない。それは問題ない」―都内で開いた投資家向けフォーラムで元米駐日大使のジョン・ルース氏の質問に答えた。

 CEOが安倍首相に進言した「ダイナミックプライス」とは、需要と供給の変動で運賃をかえる便乗値上げのことで、その評判の悪さは各国で繰り返し伝えられています。
最近では、こんな例があります。
* 12月11日にニューヨークで起きた爆弾テロの際は、運賃を2.5倍引き上げ、市民の大ひんしゅくを買った。「10ブロック移動するのに80ドル(約9000円)。恐怖におののくニューヨーカーの足元を見透かしている」と、怒りの声がツイッターに溢れかえり、慌てて中断した。
* 翌日、大雪に見舞われた英バーミンガムでは運賃を4倍吊り上げ、再び市民の怒りを買った。16キロ走るのに149ポンド(約22,500円)かかると告げられた女性客は、地元の会社を代わりに使い、運賃30ポンドで済ませた。手術に向かう麻酔医だった。
地震や台風など自然災害の多い日本で、人が困っている時に足元を見透かすような便乗値上げの運賃システムは、果たして受け入れられるのでしょうか?

 「交通の安全と労働を考える市民会議」は、積極的にウーバーなどライドシェア問題について、ツイッターで情報発信しています。https://twitter.com/forumtsl
最新の海外動向など、情報が満載ですので、ぜひ一度のぞいて見て下さい。

 
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