3月30日、国際自動車残業代請求事件に関する3つの訴訟の最高裁判決の期日で、傍聴しに行った。
自分のブログでも過去に取り上げたことがあった裁判(歩合給の算定に当たり割増賃金相当額を控除する旨の規定の有効性 2016-03-23)、この自分のブログ記事では、一番最初の裁判の判決が労働側勝利で「そらそうだ!」という趣旨で書いた。
が、しかし、なぜか最高裁で差し戻しにされ、他の2つの同様の事件と共に、会社側が勝利し続け、「なんでやねん!」ってなっていたのだ。
傍聴券は18枚、新型コロナ感染対策で、傍聴席を一つおきに使うために席が少ない。
傍聴希望者は60名ほどなので、ほぼ3倍の確率だったが、なんとか当選を果たし、代理人の一人である菅俊治弁護士とガッツポーズ。
ということで、とにかくとても注目しており、どんな判決になるかと心配していたが、さすがに当たり前の判決が出て、労働者が全部の裁判で勝利した!
タクシー大手・国際自動車(kmタクシー)では、ドライバーに対し、基本給や残業代のほか、売上高に応じた歩合給が支払われていた。しかし、歩合給を計算するとき、残業代相当額などが差し引かれ、「実質残業代ゼロ」の状態になっていた。
この制度はドライバーの約95%が加入する最大組合が了承したうえで導入されていたが、別の少数組合のドライバーが違法だとして提訴していた。
高裁判決では、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由としたうえで、名目上は法定の金額を下回らない残業代が出ていることなどから、制度を合法としていた。
一方、今回の最高裁判決では、手当の名称や算定方法だけでなく、労働者に対する補償や使用者に残業抑止の動機付けをさせるという労基法37条の趣旨を踏まえ、賃金体系全体における位置付けなどにも留意すべきだとした。
そのうえで、歩合給から残業代相当額を引く仕組みは、元来は歩合給として支払うことが予定されている賃金を名目のみを残業代に置き換えて支払うものだと指摘している。
労基法37条では残業代計算のベースとなる「通常の労働時間の賃金」と「割増賃金(残業代)」を判別できることが求められているが、残業代の中に歩合給(通常の労働時間の賃金)が相当程度含まれていることになるため、判別ができないとして、残業代が払われたことにはならないと判断した。
今後は、歩合給からは残業代は引けないという前提で、高裁で未払いになっている金額を審理することになる。
歩合給中心の賃金体系(いわゆるオール歩合賃金やB型賃金)が多くなっているタクシー業界ながら、固定給を中心とした賃金体系(いわゆるA型賃金)を採用している事業者も多数あり、それらの割増賃金の計算や、賃金制度にも悪影響を与えかねないこれまでの下級審の判決だっただけに、この最高裁判決で、ほんと、胸をなで下ろした。