労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと~

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全国ハイヤータクシー連合会 恥を知れ!

2020-03-13 | 書記長社労士 労働組合

 「最賃法の例外的運用求める」
タクシーの事業者団体の国交・厚労省要望。
「③タクシー需要の激減、売上の激減による待機時間の賃金支払いに対応するため、最低賃金法の規制の例外的・弾力的な適用・運用について配慮願いたい」
歩合制賃金で時間外手当・深夜手当もまともに払わない事業者が多いなか、今のこの状況の中、労働させておきながら、最低賃金法すら守らなくてよいようにしてくれという。
恥を知れ、タクシーの経営者たち。

 タクシーの事業者団体は、新型コロナウィルスで、人が出歩かない、経済が落ち込んでいる中、従業員がお客様を待っている時間については、生産性がないのだから(売り上げを揚げてこないのだから)、最低賃金を支払わなくてもよいようにしてくれ、ってことを訴えている。
例えば、お店にお客さんがおらず接客をしていない販売員や、営業マンが客先と客先の間を移動していて売り上げに繋がっていない時間や、販売員がお客さんに来て欲しくPOPを書いている時間や、営業マンがアポ取りをしている時間や提案書を書いている時間のように直接売り上げが上がっていない時間について、法律で定められた最低限の賃金を支払わなくていいようにしろってこと。
鉄道バスなどの交通事業で言えば、鉄道を回送運転している時間、最後のバス停やお客さん目的地から車庫へ帰る時間は、ただ働きやから、賃金払わんって言ってるのと同じ。
鉄道やバスが担いきれないドアツードアの公共交通輸送機関として、日夜頑張っているタクシードライバー(あなたたち経営者のところの従業員だ)をなんやと思ってるねん。
ばかか!

 タクシーはほとんどの会社で歩合制賃金が採用されている。
「稼げる」という賃金体系で、たしかに稼いでいる運転者はいる。
しかし、タクシーの売り上げのことを業界では「水揚げ」と呼ぶ、辞書などで調べてみると水揚げとは❶(漁業において)漁獲(量)、❷(水商売などで)売り上げ。稼ぎ高。とされていて、天候や景気などで稼ぎ高が左右されやすく、他動的な非常に水物(運に左右されて予想しにくいもの。あてにならないもの。)であることを示す言葉。
タクシーの経営者は、車を与えて(安全管理や整備管理や健康管理、事故や苦情など安全・安心に関する責任は負いながらも)ドライバーを街で走って売り上げ(水揚げ)を稼いでこいと、出庫させるが、賃金に関しては、歩合給で精算して(売り上げの4割から6割程度)、賃金面の経営リスクを負っていない。(すなわち、車に運転者を乗せて走らせておけば、6割から4割程度の売り上げは搾取出来る)
景気が良くても悪くても、運転者が努力しても努力しなくても、営業努力をしようとしなくても、売り上げの6割から4割程度は搾取出来る。(分母は別として)

 ただ、最低賃金法と言う法律があって、稼ぎが悪いドライバーには、働かせた、どんなに売り上げが少なくとも、働いた時間に応じた(時間外労働や深夜労働があったら割増賃金も含めて)都道府県別の地域最低賃金は支払わなくてはならない。
例)東京(1,013円)の場合、200時間働いて、法定内労働173時間、時間外労働27時間、深夜労働60時間とすれば、200×1013+27×0.25×1013+60×0.25×1013となって、224,632.75円
全国的に安い地域の790円の場合、200×790+27×0.25×790+60×0.25×790となって、175,182.5円
は、働かせた限り支払って貰わないと、法違反になる。
これがタクシー経営者にとっては、せっかく雇用リスクを賃金支払い面で負わない歩合給賃金制度で、勝手に走らせておけば売り上げの6割から4割程度は搾取出来るはずなのに、最賃法によって搾取出来ずに売り上げにかかわらず賃金を支払わなくてはならず、思惑が外れて、経営リスクになっていると思っているのだ。

 歩合制賃金を採用している理由は、事業者に言わすと、事業場外労働で勤怠を把握出来ないから、ってこと。
そして「目の前に歩合給というニンジンをぶら下げておけば、馬は一生懸命走る!」というロジック。
あほか、タクシーの賃金体系を良く理解している方が、10年以上前から、指摘しているように、

●事業場外労働は歩合給主体賃金⇒日本広しといえど、オール歩合制賃金システムはタクシーだけ。
●オール歩合累進制賃金(逆累進含む)でなければ乗務員は働かない⇒累進制が労働意欲を増大させるというのは幻想⇒需要が多様化し実態に合わない。
●タクシーは歩合給なので努力次第で稼ぎたい人には向いている職業⇒現在のタクシー産業に「荒稼ぎできる」というかつての職業イメージは消滅⇒若年層や助成にとって「ノルマ」「歩合」という言葉は「コワイ」というイメージ⇒産業に活力を与える求職者層からは決定的に忌避される賃金システム⇒産業衰退の危険性。
●減車と同一地域同一運賃が実現すれば労働問題は解決するか⇒本来経営が負うべき経営リスクがほぼすべてを労働者が引き受ける賃金形態は産業構造の歪みや不合理を生むだけ。


 「タクシー業界の常識は世間の非常識」なんだ。
タクシーは昔も今も事業上外労働ではあるが、無線、GPS、自動日報、ドライブレコーダーなどなど、労務管理・運行管理・勤怠は逐一リアルに把握出来るし。

 タクシー業界には、「事業に要する費用を運転者に負担させる」って悪しき慣習があって、国会からも、行政からも、事業者に対して是正しろと言われている。
例えば、クレジットカードやIC決済で、カード会社やスイカなどの事業者への決済手数料(3~5%)を給料から引く。(アルバイトの人がレジに立ってクレジットカードやったら決済手数料を時給から引くってな感じ)
無線やアプリでお客様を迎えに行けと指示命令されてご乗車してもらったら、配車手数料が引かれる。(ピザ屋さんの配達員が配達したら、受注手数料を給料から引かれる、またはぐるなびとかから予約を受けた飲食店でその電話対応した従業員がそんなぐるなびとかに支払う手数料を給料から引かれるってな)
運賃値上げの際に利用者サービス・社会貢献としての言い訳にした身体障害者などへの運賃割引10%を給料から引く。(鉄道で通学定期を取り扱った窓口の人の給料から通勤定期との差額分を天引きする、みたいな)
車通勤してきた社員がタクシーと入れ方場所に置いた駐車場代を徴収する会社もあるようだ。(早朝深夜の電車などがない時間の通勤を強いていたり、そもそも通勤費を支給していないにも関わらず)

 国土交通省の会議でも、厚生労働省の会議でも、そんなオフィシャルな場で、「タクシーは法律守っていたら経営出来ない」「監督署が入ったら違反を見つけられて当たり前」「だから法律をタクシー経営に合わせ!または見逃せ!」って公言してはばからないタクシー事業者。
で、今の新コロナウィルスで、他の健全な経営者のように、どうすれば雇用を守れるのか、どうすれば従業員の生活を守れるのか、ってなことに頭を悩ますのではなくて、「従業員のことなんてどうでもいいから、どうか経営者のためにお目こぼしを~」やねんからな…。

 ウーバーとかのライドシェア事業者よりはマシとはいえ、しかしな、全国ハイヤータクシー連合会 タクシーの経営者、ほんまに恥を知れ!
自分はこの業界の、労働組合の幹部の一人として、これまでそんな程度の低い経営者のせいで、あっちこっちで恥をかいてきて、情けなくなることが多かったが、しかしこの期に及んで、この「最賃法の例外的運用求める」については、心底怒りを覚えている。
【🏃Run3-13 4.82km 29:17 高輪】

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