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NHK「朝ドラ」のなかの戦争 4 おはなはん 官僚ってヤな仕事?

2021-04-22 21:25:21 | 日記
A.女性一代記のはじまり 
 映画は長くても1本せいぜい2時間ぐらいの長さだけれど、連続テレビドラマは週1回、CMなどが入ったにしても50分で1シリーズ14、5回続くとすると、時間にして700分もあって、劇映画の6本分くらい量がある。脚本家は映画シナリオの6倍ぐらいの長い物語を書く。かなり長丁場をもたせる力量が必要だが、映画では削ぎ落す部分を余裕で盛り込める。まして朝ドラは、毎日15分でも月曜から土曜まで週6回90分、第14作「鳩子の海」(1974~75)までは1年間、15作「水色の時」(1975)からは半年になったけれど、半年でも22週くらいだとすると130回で33時間もある。視聴者の関心を逸らさないよう工夫を重ねる脚本家も大変だけれど、製作スタッフと出演者はかなり長期的な気力体力が求められる。主役はほぼ半年間出ずっぱりになるので、途中で倒れないよう健康維持が必須になる。
 NHKが毎年作っているTVドラマ・シリーズとして「朝ドラ」と並ぶ、1年続く「大河ドラマ」の第1作は、朝ドラ開始の3年後、1963年4月に始まった「花の生涯」。これは船橋聖一の歴史小説をもとに北条誠が脚本を書いた幕末もので、主人公は大老井伊直弼で歌舞伎の尾上松緑が演じた。直弼のために働く長野主膳を佐多啓二、村山たかを淡島千景が演じて話題になった。当初は、毎年長編時代劇を作る予定ではなかったようだが、翌年の第2作「赤穂浪士」(大佛次郎原作、村上元三脚本、芥川也寸志音楽)が長谷川一夫の大石内蔵助で大ヒット、第3作「太閤記」は主役の秀吉を新国劇の若手俳優緒形拳が演じてこれも大人気というわけで、以後毎年一作、日本史に取材した本格歴史ドラマが大々的に宣伝されて続いている。今放映中の渋沢栄一が主人公の「青天を衝け」で第60作になる。
 この1962年の「大河ドラマ」第2作「太閤記」で信長を演じていたのが高橋幸治さん(1935年生)で、当時文学座の若手俳優だった。テレビで高橋の織田信長が注目され、本能寺の変が近づいてくると信長の最期をめぐって放送局に多数のファンから「信長を殺すな」という投書が殺到し、本能寺の変の放送を当初の予定より1か月程度延期させたというエピソードがあるという。彼はそのころ映画の南米ロケから帰国後、過労のために入院したことを告知するのが遅れ、出演予定だった舞台公演に穴を空けたとして文学座を除籍になる。
が、人気は衰えず、4年後の「朝ドラ」第6作、1966年の「おはなはん」に主人公の夫・陸軍軍人・速水謙太郎中尉役で出演(この時も物語半ばで死去する設定の役であったが、「太閤記」と同様に多くの助命嘆願が寄せられ、死去の時期が延びているという)。その後も「天と地と」「新・平家物語」「黄金の日日」と立て続けに出演。 
 大河ドラマでは、その後も戦国時代にはほぼ必ず信長が登場したから、信長を演じた俳優はそれぞれ実力派・大物というのが定着し、「剛腕決断の英雄・信長」のイメージが広く普及する。その最初の信長が高橋幸治という、劇画の主人公のようなほとんど笑わない尖った顔の役者で、ほとんどこれだけで人の印象に残ってしまった。「朝ドラ」が、それまでの小説のテレビドラマ化で、朝の家事に忙しい主婦向けに、あまり変化のあるドラマチックな物語ではなく、ナレーション解説で「ながら視聴」用に作られていたのを、一気に毎朝主婦の熱い視線を浴び、倍賞千恵子の歌った主題歌とともに大ブレイクしたのが「おはなはん」だった。平均視聴率45.8%、最高視聴率56.4%という数字が残っている。徳島市出身の女性林ハナさんの一生を綴った記録をもとに、小野田勇が女性の一代記に仕立てた「おはなはん」のヒットで、以後の朝ドラの基本路線が決まったともいえる。
 「おはなはん」の映像は、ほとんど残っていないが、高校生になったばかりのぼくも、テレビで見ていて、樫山文枝と高橋幸治の顔だけは記憶にある。物語の概要は、以下のようなものだった。
 明治36年、「おはなはん」という愛称で呼ばれる浅尾はな(樫山文枝)は、明るくお茶目で人気者であった。彼女が松山県立女学校を卒業するとすぐに、父が、はなと速水中尉(高橋幸治)との縁談を決めた。お見合いを嫌がるはなは縁談を壊そうとするが、相手の速水中尉も予想されるロシアとの戦争を前にした時なので、縁談を断りに来たのだった。しかし、二人は妙に親近感を覚えて結婚することとなる。二人とはなの父母は、婚礼のために鹿児島へ向かう。男尊女卑が色濃い鹿児島で速水の祖父(花沢徳衛)はよそ者に冷たかったが、はなの明るさが気持ちをやわらげる。婚礼の後、二人は速水の転属先である東京で新婚生活を始めた。長男・謙一郎(成人後は津川雅彦)が生まれたときに、日露戦争が勃発し、速水は出征したが、やがて無事に帰って来る。速水の転属により、一家は弘前へ移ることになるが、長女が生まれたばかりであったおはなはんと二人の子は春まで出発を延ばして速水だけが赴任することになる。赴任先へ向かう途中の汽車で速水は自殺しようとしていた女を助ける。その女は弘前の芸者で、いつしか彼女は速水の自宅に通うようになった。長い冬が終わり弘前に着いたおはなはんはその事実を知り苦悩する。どうにか縁が切れて一安心していたところへ速水のドイツ大使館勤務が決定する。忙しく荷造りをしていたところ、夫の速水は演習中に急死してしまう。
 未亡人となったおはなはんは愛媛に戻るが実家の家業は傾きかけており、子供たちを残して医者を志して単身東京に行き東京女子医専で学ぶ。しかし母の急死や様々な理由で医者になることを諦め産婆として働き始める。
 軍人とお見合いで結婚し子供も授かったが夫は病で他界してしまう。女手一つで子供たちを育てながら、幾多の困難を乗り越えて成長していく明るくたくましい女性の一代記。 モデルは原作者(林謙一『随筆・おはなはん一代記』)の母・林ハナ(旧姓:深尾、1882(明治15)年4月13日 - 1981年6月12日)銀行頭取の次女。18歳で厳格な陸軍中尉林三郎と結婚。26歳で夫と死別,苦労を重ねながら、ふたりの子どもと明るく生き、99歳没という女性である。連続テレビ小説で実在人物を主人公のモデルとして描いたのはこれが初めてであり、明治時代以前を描いた作品としても同様である。
 林ハナが実際に生まれ育ったのは徳島市だったが、ドラマ化に際しては愛媛県大洲市に物語の舞台が変更された。この変更は、公式には「戦災で徳島の古い街並みがほとんど失われたため、古い街並みの残る大洲が選ばれた」からであるとされているが、一説には撮影に際して徳島市が、費用などの便宜に難色を示したからであるともいわれる。後日、徳島市は大変悔しがったという。ドラマの中にそのドラマ自体が登場する演出は、本作と2011年度下半期の『カーネーション』のみである。 なお、最初の構想では最終回でおはなはんが亡くなるという設定であったが、モデルとなった人物が当時存命であったため、上記の設定に変更になった。主人公はな役は当初、森光子に内定していたが、撮影開始直前の1965年11月に急病により降板し、急遽白羽の矢が立ったのが樫山文枝だった。(以上は主にWikipediaによる)
 なにしろ話は1年間続くわけで、出演者も数多く、今考えると当時の名のある俳優オールスターともいえるメンバーである。大辻伺郎、野村昭子、真屋順子、沢村貞子、水谷八重子、花柳喜章、高田敏江、殿山泰司、加藤治子、高木均、岡田英次、露口茂、宮脇康之、江守徹、市原悦子、長山藍子、加藤嘉、夏川静枝、戸浦六宏、蜷川幸雄、久米明、二木てるみ、大滝秀治、井川比佐志、嵯峨善兵、桜むつ子、横森久、茅島成美、田島義文、長谷川哲夫、加藤武、原泉、菅井きん、中山昭二、寺田誠、鈴木弘子、井上昭文、冨田恵子、中澤敦子、小山源喜、落合義雄、小峰千代子、巖金四郎、荒木道子などなど。ナレーションは永井智雄さんだった。
 ちなみにテレビの大ヒットに便乗して、劇場用映画も同年、松竹で野村芳太郎監督、岩下志麻・栗塚旭主演で「第一部・第二部」にわけて作られた。こちらの方は、長い話にはできないので、おはなはんの結婚をめぐるあれこれを中心に、結婚生活と夫の急死で閉じるというものだった。
 今から振り返れば、「朝ドラ」でヒロインの恋人や夫が職業軍人であるという話は、「おはなはん」だけではないだろうか?夫や息子が徴兵されて戦死するというのはいくつかあったけれど、昭和の15年戦争をドラマに取りいれるのは、一種の悲劇の色彩が濃くなるわけで、その象徴は8月15日の玉音放送場面である。一般の兵士や銃後の女たちにとっては、敗けて滅びた軍人という存在は忌まわしい記憶につながる。朝ドラのような、国民大衆に愛され、朝から明るく元気な若者が泣いたり笑ったりするドラマであることを要請される存在、ヒロインの愛する相手に職業軍人はもってきにくい。ただ、「おはなはん」の夫の速水中尉は、日露戦争に従軍するけれど戦死はせず、知的で誠実な人間として描かれる。粗暴で威圧的な悪役とは正反対の優しい夫である。そして、彼は日露戦争後に急死してしまうので、日中戦争、太平洋戦争には無関係であり、もし生きていたにしても退役している年齢だろう。だから、彼は朝ドラヒロインの夫でありうる。
 そういえば、1945年8月の終戦時に、朝ドラのヒロインで実在のモデルになった人のうち、「おはなはん」の林ハナさんは63歳、「わろてんか」の吉本興業創業者の吉本せいさんが56歳、「花子とアン」の翻訳家村岡花子さんは52歳で御存命だった。架空のヒロイン、「おしん」の主人公は作者橋田壽賀子の作りだした女性だが、生年は昭和天皇と同じ1901(明治34)年生まれの終戦時44歳という設定である。おそらく、ここが年齢的には分水嶺で、今やっている「おちょやん」のモデル浪花千栄子さんは終戦時38歳、以下「芋たこなんきん」のモデルで作家田辺聖子さんの17歳までの10作品ほどが、ドラマの中で戦争を生き敗戦後も生き続ける。やはり戦争を20代30代で体験している人が、いわゆる戦中派として、過酷な時代を生き抜いた人たちだったと思う。それが「朝ドラ」で描かれたことは、ぼくたちの戦争へのイメージをある程度彩ってきただろうし、またある程度のバイアス、つまり被害者としての日本人ではあっても、加害者としての軍人が登場しないということの意味でもあると思う。


B.やりがいのある職業か?
 中央省庁のキャリア行政官僚という職業は、日本でももっとも高い能力とやりがいを発揮できる仕事として、一流大学のトップクラスの学生が志望する、とみられてきた。民間上場企業に比べて給与や待遇はよくないけれど、国家社会のかじ取りの中心にいて、実績を積んでいけば名誉と責任のある地位に到達し、社会的な評価も得る人物になることも期待できると。しかし、近年、キャリア官僚の入口である国家公務員試験への志望者が減ってきているという。このままでは優秀な人材が、官僚にならないという憂うべき事態になると心配されているという記事。

 「キャリア官僚志望 増やす策は  減少幅最大14.5% 長時間労働深刻、求職者も多数 
 人事院が十六日に発表した2021年度の国家公務員採用試験の申し込み状況で、総合職(キャリア官僚)の志望者が前年度から14.5%(2420人)減った。五年連続マイナスとなり、減少幅は過去最大。国家公務員法は近年、過重な労働ぶりが問題視されている。優秀な人材が集まらなければ、国の政策立案や実行に影響は避けられない。志望者を増やす策はあるのか。(三浦雅和)
 「予想外だった」。人事院の田中正幸・試験課長補佐は、志望者の激減ぶりをこう受け止めた。景気が悪いと、安定している公務員は人気になる。特にキャリア官僚は、優秀な学生が目指す職業の一つとされてきた。ところが今回は、コロナ禍で採用を減らす企業が増えているにもかかわらず、志願者が増えなかった。
 総合職試験の申込者数は14,310人と、現在の試験区分に変わった12年度以降、最少。中でも法律や経済などを専門とする法文系が、前年度比14.6%減の10,724人に落ち込んだ。田中さんは、コロナ禍が都市部で顕著なことから「地方の学生の地元志向が高まったためではないか」とみる。
 国家公務員志望の学生が、将来の職場に希望を抱いていることをうかがわせるデータがある。国家公務員を目指す学生が運営するサイト「×KASUMI」が昨年11~12月に志望者と内定者計210人に行ったアンケートで、92.9%が「国民の生活をより豊かにする仕事」と答えた。
 キャリア官僚はかつて、今よりも魅力ある職場と捉えられていた。人事コンサルタント会社社長の田岡春幸さん(45)は、就職氷河期の01年に厚生労働省に入省した。「国会対応で明け方まで働き、時給に換算すれば最低賃金レベルだった」と過酷な仕事ぶりを振り返りつつ、「安定性があるのに加え、国に貢献できる。やりがいがあった」と話した。
 バブル期の1989年に通商産業省(現経済産業省」に入省した政策アナリストの石川和夫さん(55)も、大手企業より給料は安く、残業は大変でも懸命に働いた。「国を変えてやろう、よくしようという大志があったから官僚の仕事を選んだ」と説明する。
 一方で今、長時間労働が深刻になっている。コロナ対応を統括する内閣官房の対策推進室で一月、職員の平均超過勤務(残業)時間は122時間だった。過労死ラインとされる100時間(発症一か月前)をこえており、378時間に登った職員もいた。 
 人事院によると、2019年度に心の疾病で休職した国家公務員は、全職員の1.51%に当たる4,186人。18年の労働安全衛生調査で0.4%だった民間を大きく上回る。「×KASUMI」のアンケートでも、90.9%が長時間労働に不安を感じており「気づかぬ間に体を壊しそうで怖い」「自分に合う働き方ができないのではないか」との回答があった。
 そうした状況下でも、国会議員から委員会の質問通告を長時間待ち、問い合わせに対応するやり方は変わらない。予算に上限がある中で給料を上げるのも難しい。田岡さんは「せめて議員が質問通告時間を守るべきだ。対応をオンラインにしてもいい」と提言する。
 最近の学生は、大きな資本力をもって世界を動かせる民間企業に関心を寄せながら、石川さんは「官僚には、国を動かす醍醐味がある。年代が近い若手官僚が生き生きと働く姿を見せ、学生に仕事のおもしろさを熱く語るべきだ」と訴えた。」東京新聞2021年4月20日朝刊、20面こちら特報部。

 ここでは主に、労働時間の過重さと給与の安さが問題としているけれど、それ以外にもう一つ、国会中継などで登場しては追求され頭を下げる中央省庁のエリート官僚とみられる局長とか事務次官とかといった人々の、無残な姿、そして「桜を見る会」にせよ森友問題にせよ、政治家の失態の尻ぬぐいで、とかげのしっぽ切りで退職したり自殺したりさせられる官僚の姿。これを見てああなりたくないな、と学生が思うのは至極当然だろうと思う。国家社会のため、国民大衆のため、志をもち身を以て尽くすことに生きがいやりがいを見出す、などという精神のありようは、今の優秀な学生に期待できるだろうか?たとえそういう気概を持った学生がいるとしても、今の官僚たちの醜態は呆れてものも言えないだろう。
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