ここまで
教科書的なコンセンサスとして、
体細胞における遺伝情報の変化は生殖細胞系 germ line には伝わらない。
しかしながら、
脳に蓄積された情報は種の出口戦略である精巣を介して個体から他に伝播することができれば獲得形質も伝達され、遺伝できる可能性がある。
最近多く出てきていているエビデンスでは
体細胞における遺伝情報の変化ではないものの、
エピジェネティクス的には獲得した情報が
生殖系に入ることでやはり子孫に伝達されているのではないか、
という結果が多く報告されています。
平たく言うと、何と言うか、、、
「当たらずしも遠からず」
的なイメージ。
例えば、
後天的に脳に生じたDNA情報の変化の結果として脳腫瘍が発生してもそれが生殖系には伝達されないのでそれ以降に生まれた子孫が脳腫瘍になるということはない。
その一種のブロックシステムのおかげで遺伝情報の基礎的部分は常に守られながらそうした悪影響が伝達されることを防いでいる優れたシステムと言えるかもしれない。
しかし一方で、
獲得した「良い」遺伝情報はいかにして守られるべきなのか、という問題も長年認識されている。
こうした遺伝情報の、いわば効率的な伝達とはどういう仕組みで、どのようにしてそれが進化のプロセスに関与してきたのか、という側面も大切な問題と言えます。
では、その仮定のプロセスで必須になってくるのは体細胞から遺伝情報をどのように生殖細胞に、さらには子孫に渡すことができるかというメカニズムが必須であって、説明が求められます。
実はこれまでに、原生動物や植物から哺乳類に至るまで、さまざまな生物で強力な世代間遺伝が観察されています。
このような知見は 後天的な情報(experience-dependent informationと論文中にある)が体細胞組織から生殖細胞組織の間で伝達されるメカニズムが存在することを意味しています。
さらに、そうした複数の研究で精子を介してエピジェネティックな情報伝達システムの存在、およびそのメカニズムとして、その主役となるのはまたまたRNAであるということが示されています。
Direct evidence for transport of RNA from the mouse brain to the germline and offspring
BMC Biology volume 18, Article number: 45 (2020)
ここでは、
脳に注入した体細胞RNAが生殖細胞系列に輸送され、
さらには胚に受け継がれることを示しています。
・実験
オスのマウス線条体の片方の半球に、ヒトMIR941を発現するようにデザインされたアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子送達システム、AAV1 / 9ウイルスを注射した。
(MIR-941遺伝子は100万年前に最初に出現したヒトにのみ見られるmiRNAで、細胞分化と神経伝達物質シグナル伝達に関与する遺伝子を調節しています。一次転写産物は約72ntのステムループ前駆体miRNA(pre-miRNA)を生成し、さらに細胞質Dicerリボヌクレアーゼによって切断されて成熟miRNAとアンチセンスmiRNA(miRNA)を生成します。)
(AAV1ベクターは、ウサギβ-グロビン遺伝子の一本鎖DNAフラグメントも生成するように設計されており、同遺伝子によってウイルスの発現、残存をモニターできる。)
注射して6~8週後雄マウスは注射していない雌と交配し、
その胚(7.5日)からRNAを抽出し検索するとともに、
8週間後にしたのち全身の各臓器におけるウイルスとヒトMIR941を検索した。
・結果
1. 注射後2週間後、8週間後、16週間後のそれぞれ雄マウスから、脳、リンパ節 lymph node.および精管および精巣上体 vas deferens/epididymis (V/E) におけるウイルスとヒトMIR941の存在を検出した(Fig1)。
脳以外でウイルスが検出されることはなかった。
(ウサギβ-グロビン遺伝子はあちこちの臓器で発現していない)
2.3匹のオスのマウスでは生殖細胞系列(精巣など)、
およびその子孫の胚に
当初脳に移植したmiRNA(ヒトMIR941)が伝達されたことを示した(Fig 2)。
3. 調べた18個の胚のうち9個という頻度でMIR941を検出した。
4. リンパ節にもMIR941が持続的に存在することから、リンパ系と循環系の両方に輸送するシステムがある可能性があること、さらには、分解を防ぐには、MIR941は小胞に含まれていることがより効率化に有利ではないかと考えた。
そこで、全血の画分を分離し調べてみた結果、Male 3.3のただ一匹ではあるが、MIR941が観察された。
(Additional file 10, Fig. S9 Aのカラム、Male 3.3)
・考察
移植されたmiRNA
は脳という体細胞から生殖細胞系に移行し、その後胚に伝達した。
・その輸送ルートとしては、一例のみの結果ではあったが(検出限界を考えると)、小胞に包まれてリンパ液、血液を介する可能性が高いと考えられた。
・体細胞由来の後天的変化はmiRNAなどを介してエピジェネティックなメカニズムにより世代間で伝達する可能性が示唆された。
・セントラルドグマでいうDNAの次に来る情報伝達分子という位置付けだけでなく多彩な働きをするのがRNAであるという一つの知見。
カクテル⑧
パパギーナ Papagena
チョコレートカクテル。
大体のカクテルが夏向き、南国的なのに比してこれは冬にもいける。
使うリキュールはモーツァルト・チョコレートクリームリキュールでないといけないというルールがあるそうです。またこれがブランデーと生クリームと相性が抜群で、生チョコの風味でショコラを食べるような感じで夏でも冬でも月に一度くらい無性に飲みたくなる。言わばアルコール入り濃厚生チョコドリンク。
モーツァルトの魔笛に出てくる緑色のパパゲーノ(Papageno = male)のバージョン(ブランデーじゃなくて確かウオッカで割る)もありますが、ブランデーの入るパパギーナ(female)の方がはるかにお互いの相性が良いように思います。
・モーツァルト・チョコレートクリームリキュール 30ml
・ブランデー15ml
(甘くならないように辛口のものが良いと思う)
・生クリーム 15ml
シェイクしてサーブする。
Notes: とってもヨーロッパな気分。
第3楽章 (セレナーデ 変ロ長調より K.361)🎵