皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

風吹けば桶屋儲かる

2018-10-04 21:15:11 | 物と人の流れ

 今年は台風が多い。先週の24号ではJRの計画運休が実施され、ここ北関東でも猛烈な風が吹いた。深夜未明の時間帯で近年にない強風であったため被害も大きかった。風の音で眠れないということはこれまでなかったと思う。関東平野の真ん中で治水も良く、自然災害とは無縁の地域と思い込んでいたが今回庭の松が強風で倒れてしまった。代々手入れをしてきた木でとても残念だったが、災害に対して認識を改める機会となった。

更には物置の屋根も一枚強風で剝がれてしまい、会社も休んで修復した。幸い自力で直すこともできた。

屋根を直すにあたりすぐに向かったのは最寄りのホームセンター。生活用品はもちろん農業用品、資材と何でもそろう。

台風一過の昼前に釘を買いに出ると、売り場は年配者を中心にかなり込み合っていた。業者と思われる人も多かった。住環境に関して修復は早く、また自分でできることは自分でやりたいと思う人が多いのだろう。もちろん自分もその一人だ。まさにDO IT YOUR SELF。ホームセンターのコンセプトそのままに。

諺に「風吹けば桶屋儲かる」とある。意外なところに影響が出る、或はあてにならない期待をすることのたとえとある。江戸時代にできたようで『東海道中膝栗毛』にも表現があるという。『世間学者気質』(明和五年)では「今日の大風で土埃が立ちて世間に目くらが大ぶんできる。そうすると猫の皮が大変といるようになって世の中猫が大分へる。そうなれば鼠があばれだすによって、おのずから箱の類をかじりおる。ここで箱屋をしたらば大分よかりそうなものじゃと思案は仕出しても、是も元手がなくては埒明かず」と記されている。

つまり大風で埃が立ち、埃が目に入り盲人が増える。盲人は三味線を買う。(当時の職による)三味線に使う猫の皮が要り、猫が減れば鼠が増える。鼠が桶をかじると桶屋の仕事が増えるという。

 盲人の三味線や猫皮など江戸期の文化、世相が反映された表現だ。

諺の意味合いとは異なるが、風が吹けば物を介して同じように人が動く。売り場の混雑を見ながらそんなことを感じていた。

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