デビッド・ボーデン, リン・ロビンソン『図書館情報学概論』田村俊作監訳, 塩崎亮訳, 勁草書房, 2019.
邦題タイトル通り。なのだが、原書はIntroduction to information science (Facet publishing, 2012.)で、目次にも「図書館」の語は出てこない。文章中では「ライブラリアン」の語が避けられて「情報専門職」と記される。「図書館から離れた、ネット時代の新しい図書館情報学なのだろう」と予想して手にとったが、読んでみたらオ―ソドックスな図書館情報学の教科書だった。僕が大学院生の頃(2000年前後)に目にした欧米の学者がたくさん言及されている。著者二人は英国の図書館情報学者(情報学者?)である。
とはいえ、大学院生または研究者向けの内容レベルである。その研究領域に含まれるトピックの広がりが確認でき、かつ整理されているというのがポイントだろう。言及される概念の説明は丁寧である。けれども、やや抽象的な説明に終始するきらいがあり、あらかじめその概念を見聞きしたことがないとわかりにくいと思う。具体的な事例を使って説明するのをできるだけ避けているようで(扱っている概念が多いからだろう)、学部生相手に司書養成課程の導入に使うという感じではない。
本書があまり図書館に言及しない理由は、訳者によれば著者らがドキュメンテーション(記録物の保管管理が話の中心)寄りで、米国の図書館学系統とは異なるからであるとのこと。推測だが、これに加えて、2010年前後から英国では公共図書館の閉鎖が相次いだことがあるかもしれない。独立した研究領域として、衰退する図書館とは距離を置きたい、と。ただまあ、論のベースとして図書館を代表とする組織的記録物管理システムがあることは確かである。
訳文はこなれていて、とてもスムーズに読むことができた。A5版400pの大冊だったが、僕の経験では土日を使って二日で読了できたぐらい。塩崎氏による訳者解説(あとがき)も非常に懇切丁寧である。というわけで今後、田村先生&塩崎氏のコンビで、本書で紹介されたDavis & Shaw, Luciano Floridiなどを翻訳してくれることを望みたい。塩崎氏には、翻訳者というアカデミズムでのポジション取りもいいんじゃないの、と、この場を借りて勧めておく(無責任な提案かもしれない)。
邦題タイトル通り。なのだが、原書はIntroduction to information science (Facet publishing, 2012.)で、目次にも「図書館」の語は出てこない。文章中では「ライブラリアン」の語が避けられて「情報専門職」と記される。「図書館から離れた、ネット時代の新しい図書館情報学なのだろう」と予想して手にとったが、読んでみたらオ―ソドックスな図書館情報学の教科書だった。僕が大学院生の頃(2000年前後)に目にした欧米の学者がたくさん言及されている。著者二人は英国の図書館情報学者(情報学者?)である。
とはいえ、大学院生または研究者向けの内容レベルである。その研究領域に含まれるトピックの広がりが確認でき、かつ整理されているというのがポイントだろう。言及される概念の説明は丁寧である。けれども、やや抽象的な説明に終始するきらいがあり、あらかじめその概念を見聞きしたことがないとわかりにくいと思う。具体的な事例を使って説明するのをできるだけ避けているようで(扱っている概念が多いからだろう)、学部生相手に司書養成課程の導入に使うという感じではない。
本書があまり図書館に言及しない理由は、訳者によれば著者らがドキュメンテーション(記録物の保管管理が話の中心)寄りで、米国の図書館学系統とは異なるからであるとのこと。推測だが、これに加えて、2010年前後から英国では公共図書館の閉鎖が相次いだことがあるかもしれない。独立した研究領域として、衰退する図書館とは距離を置きたい、と。ただまあ、論のベースとして図書館を代表とする組織的記録物管理システムがあることは確かである。
訳文はこなれていて、とてもスムーズに読むことができた。A5版400pの大冊だったが、僕の経験では土日を使って二日で読了できたぐらい。塩崎氏による訳者解説(あとがき)も非常に懇切丁寧である。というわけで今後、田村先生&塩崎氏のコンビで、本書で紹介されたDavis & Shaw, Luciano Floridiなどを翻訳してくれることを望みたい。塩崎氏には、翻訳者というアカデミズムでのポジション取りもいいんじゃないの、と、この場を借りて勧めておく(無責任な提案かもしれない)。