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ベテラン女性歌手による軽くて高品質なボサノバ、ジャズ要素もふんだん

2016-02-19 11:51:48 | 音盤ノート
Doris Monteiro "Agora" EMI/Odeon, 1976.

  MPB。ドリス・モンテイロは1934年生まれのリオ生まれ、1952年にデビューして1980年代前半まで活動していたという女性歌手である。声質はBebel Gilbertoに近く、低めで少々かすれた声で感情表現を抑えめに歌う。MPB音楽家のなかでは知名度が低いが、Renato CorreaとMilton Mirandaのプロデュースの1970年代の諸作はそれなりの質の高さがある。

  青のモノトーンによる伏し目の長髪女性の顔写真(本人)がジャケットで、Joni Mitchellの"Blue" (Reprise, 1976)を思い起こさせる。とはいえ音は似ていなくて、こちらはストリングスや管楽器が活躍するゴージャスでポップな作品である。ボサノバ~サンバ曲だけでなく、ジャジーでムーディな曲も数曲収録されている。冒頭の'Maita'という曲がまず面白い。ギターのカッティングを導入に使って、舞うようなフルートとギターによるアルペジオの中、早口で軽く歌うというボサノバ曲である。くるくるまわるようで、緩いけれどもちょっとしたスリルがあるという、可愛らしい曲となっている。この他Joao DonatoとGilberto Gil作の‘Lugar Comum’、Jobim / De Moraesの‘Lamento No Morro’なども収録しており、これらを筆頭に全体ではエレピが目立つ。1970年代のアダルトコンテンポラリーと言ってよい音だろう。
  
  洗練されていて高品質だが、聴き手の心の奥底に触れるてくるようなところがない。この点が、Elis ReginaやNara Leaoのような熱心なファンのいるMPB女性歌手に比べていま一つ人気がない原因だろう。その音楽性は高いと思うのだが、何が違うのだろうな、よくわからない。とはいえ高機能で優れた作品である。日本盤にはボーナストラックが4曲付いており、これらがなかなか悪くないので日本盤を聴くのを薦める。
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