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「聴きやすい作品ではない」けれども、これを恰好良いと思った若者もいた

2012-12-10 16:31:29 | 音盤ノート
Steve Reich "Early Works" Electra Nonesuch, 1987.

  ミニマル・ミュージック。それもコテコテの典型的なやつである。短い旋律パターンを反復させつつ徐々に変化させてゆくというのはミニマル音楽の定義通りだが、その同じパターンを二つ重ね合わせつつ片方をほんの少し遅らせて、異なる音像を浮かび上がらせるということをやっている。モアレ効果と呼ばれるものだ。和音や旋律による快とは別の、音の間から来る浮遊感あるいは陶酔感が面白い作品集である。

  収録されている‘It's Gonna Rain’(1965)と‘Come Out’(1966)は、それぞれ黒人牧師と怪我をした黒人少年の発言を録音して、それを二本のテープループにしたのもの。ヘッドフォンで聴くと、音の定位が頭の周囲を回っていって途中から重心が無くなり混沌に陥るという感覚が味わえる。‘Piano Phase’(1967)は同じ原理を使った二台のピアノ曲で、普通の音楽としても楽しめる。‘Clapping Music’(1972)は素手で拍子をとるだけの小品だが、こちらは輪唱のようにきっちりパターンをずらしている。(コンサートのアンコール用に書かれたものだということをどこかの記事で読んだ)。

  個人的には‘It's Gonna Rain’の後半部は、このジャンルに初めて出会った曲として感慨深い。学生時代、大学の教養の授業として受けていた「現代音楽」(石田一志先生)で紹介されたのである。この授業では無調のよくわからない曲が毎回紹介されていたので、けっこう辛かった──起きているのが。ところがその日だけは、スピーカーからの黒人牧師の怒声に眠っていた僕の目が覚めた。そして、その音の強度に圧倒されたのである。残念なことに、寝ていたために作曲者名と曲名を聴きもらしてしまっていた。ミニマルという語彙はわかっていたので、教科書にのっていた人名や曲名を頼りに、すぐにCDショップを漁りにいった。だが、間違えてTerry Rileyがシンセサイザーをバックに歌ってるドイツ盤を購入してしまった。そんな経験がある。まあ、何が言いたいかというと、大学というルートを経由して伝えられる文化もあるので、そういうルートも大切にしましょうということである。
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