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AIの法的統制および国家による利用をめぐって

2019-11-09 09:32:07 | 読書ノート
山本龍彦編『AIと憲法』日本経済新聞, 2018.

  AIが浸透した社会での憲法の在り方を考察する論文集。序章を含めて全10章、5つのコラムを14人の若手法学者が執筆している。トピックとして「プライバシー」「自己決定権」「経済秩序」「人格」「教育」「民主主義」「選挙制度」「裁判」「刑事法」が扱われている。

  AIの主な機能は、個人に関する大量のデータを収集してプロファイリングする、ということになるだろう。このようなAIの機能を、国家は裁判や刑事事件の捜査のために利用する可能性がある。あるいは学校で個別指導のために使用される可能性がある。また、AIプロファイリングはすでに企業が用いているが、その場合どのような介入が求められるか、などについて検討している。また、、AIが判断ミスをした場合、帰責の対象は誰になるのか(AI自身というのはアリか)など、SF的に見える(でも切実な)検討がなされている。

  論点としては、プライバシー、統計的差別、意思決定に対する説明責任の三つがあるようだ。ただし、単純なAI警戒論とはなっておらず、AIを導入しなかった場合の社会的不幸への目配せもある。AIと法をめぐる問題提起の書として参考になると思う。
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