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理論より実証重視のマクロ経済学教科書

2019-03-25 13:08:10 | 読書ノート
ダロン・アセモグル, デヴィッド・レイブソン, ジョン・リスト『アセモグル/レイブソン/リスト マクロ経済学』岩本康志, 岩本千晴訳, 東洋経済新報社, 2019.

  マクロ経済学の教科書。著者は『国家はなぜ衰退するのか』のアセモグルと『その問題、経済学で解決できます。』のリストで、レイブソンについては邦訳がないようだ。Economics (Pearson, 2015)の1章と後半の章の翻訳で、ミクロ経済学部分の翻訳も進められており将来刊行予定であるとのこと。

  初歩の初歩というレベルの内容で、定番であるGDPの定義式を理解する必要があるものの、式の変形や展開については熱心ではない。IS-LM曲線は出てこないし、AD-ASモデルも登場しない。600頁を使って何をしているかというと、主に経済成長と国家間の経済格差に焦点を当てて説明を展開している。資本・労働・技術の三要素のうち最近の経済成長にもっとも貢献しているのは何か、地理・文化・制度のうち国家間の経済格差をもっともやく説明するものは何か、などについて詳しい。もちろん、金融システムや失業のメカニズムについてもかなりの記述があり、最近のベネズエラの固定通貨制度が何をもたらしているかなどについても説明がある。

  以上のように「読む」の教科書となっている。とはいえ、きちんとデータを踏まえた上での記述となっており、数式が少なめなのは理論よりは実証というスタンスで書かれているからだ。マクロ経済学の理論を詳しく知るにはまた別の教科書を手に取る必要はあるけれども、この分野で扱われている問題が何かを知る「つかみ」としては成功していると言えるだろう。
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