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瑣末な製品についての失敗と改良の歴史

2014-01-07 10:28:23 | 読書ノート
ヘンリー・ペトロスキー『フォークの歯はなぜ四本になったか:実用品の進化論』(平凡社ライブラリー)忠平美幸訳, 平凡社、2010.

  工業デザインの歴史。フォークやナイフから、クリップ、ファスナー、付箋紙、のこぎり、缶のふた、缶きり、マクドナルドにおけるハンバーガーの包み紙などの事例が集められている。原書は"The Evolution of Useful Things"(1992)で、最初の邦訳は1995年に出ている。著者には『本棚の歴史』(白水社、2001)ほか他の著作の邦訳も多い。

  一応「ものの形はその機能に従属する」という考えに対する反論として書かれている。そうした考えは今あるものを完成品とみなしてしまう。しかし、あらゆる製品は用途によっては機能が過剰だったり過少だったりするため、常に使い手の不満を喚起してまう。その意味でものはいつも未完成のままであり、それに対する不満から改良・進化が起こるのだという。

  以上のような理論的な装いはあるものの、著者の関心がディティールの変化にあることは明らかである。クリップやファスナーなどの変化の歴史が図版とともに嬉々として描かれており、またフォークや缶切りが登場する以前にどうやってステーキを食べたり缶を開けたりしていたのかについても記述されている。読者にとってもそうした話が興味深く、楽しめるところだろう。
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